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【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~  作者: 犬型大
第一章

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39秘密交換3

「はぁ……獣人……」


 見ないでと言われたが、獣人はかなり珍しくして思わず全身をまじまじと見てしまう。


「……見ないでっ!」


「へっ? うっ!?」


 パシェの体から黒いオーラが溢れ出し、俺に飛びつくように迫ってくる。

 パシェの両手が伸びてきて、俺の目を覆って、そのまま後ろにあった木に押さえつけられる。


 壁ドンならぬ目ドンといったところだろうか。


「なるほどな……」


 見られたくないのなら相手の目を塞げばいい。

 パシェの意図は理解した。


 ただ眼球を押しつぶすほどの勢いで目を押さえつけるのはいささかどうだろうか。

 パシェの肉球の柔らかな感触と温かさは気持ちがいい。


「言われてみれば納得もできるな……」


 木に叩きつけられた背中の痛みも感じつつ、これまで抱いていたパシェへの疑問が解けていく。


「神の忌み子か」


 俺の言葉にパシェの手がびくりと震えた。

 悪魔がいて、魔力があって、この世界はファンタジーだ。


 人ではない人もいる。

 それが獣人と呼ばれる人たちだ。


 身体的な作りは人間に近いものの、全身を毛で覆われていてケモノの口元やミミ、尻尾などを持っている。

 かなりの希少種族で、俺も話に聞いたことはあっても実際に見たことはない。


「この呼び方は、俺あまり好きじゃないけどな」


 神の忌み子というのは獣人を指す古い言葉である。

 獣人は神聖力を持たない。


 そのために、神を信仰することもない異端だと見られてきた。

 かつて人間と衝突したものの、今は和解して敵対関係ではなくなっている。


 ただ、偏見や差別的な意識はいまだに根強く残っている。


「あなたは……私を見ても何も思わないの?」


 いつまで眼球押さえられていればいいんだ。

 そう思っていたらパシェが静かに口を開いた。


「……何を思えばいい?」


 考えたことはある。

 ただそれは偏見ではない。


 鎧の下、意外とパシェは薄着だった。

 胸元とか、お腹とか見てしまった。


 そして俺は思ったのだ。

 モフりたい。


 フワフワとした毛を見て、触ったら気持ち良さそうだなと咄嗟に考えていたのだった。

 しかしそれをそのまま言うのはセクハラだろうと、言葉を飲み込む。


「私のこと……気持ち悪いとか……」


「気持ち悪い? なぜそんな?」


「………………あなたは獣人に偏見がないの?」


「ないよ。そうだな……思ってたよりもフカフカしてるんだなとかそんなこと思ったぐらいかな」


 かつて戦い、神聖力を持たない獣人を嫌っている人も多くいる。

 だが俺は別にそんなこと気にしていない。


 歴史の勉強で少し聞いた程度のものでしかない。

 珍しいとは感じても忌避するような感情は出てこなかった。


「…………そう」


「チカチカするな」


 パシェが俺の目から手を離してくれた。

 光が目に入ってチカチカとする。


 うっすらと顔が見える。

 犬っぽいが人っぽさもある。


 不思議な感じ。

 顔立ちや毛の感じから犬種としてジャーマンシェパードだろうか、と俺はひっそり考えてみていた。


 パシェが俺に背を向けてヘルムを手に取って被る。

 鎧の方に向かっていって、身につけ始めた。


「尻尾はそうなってるのか……」


 今度は見るなと言われていないので、後ろ姿を凝視してしまう。

 パシェのお尻の上から尻尾が生えている。


 どうしているのかと思ったら、太もものところでベルトのようなものを巻いて尻尾を固定しているようだった。


「お尻見てる」


「あっ!? いや、そうじゃなくて! ……あっ、悪い」


 尻尾を見ると言うことはほぼお尻を見ているようなもの。

 パシェがサッと手でお尻を隠して、俺のことを睨みつける。


 確かにこれは流石に悪かったなと俺は反省する。


「……肉球の跡ついてるな」


 目の周りが熱いような感じがする。

 パシェから目を逸らしがてら川を覗き込んでみると、俺の目の周りに肉球の跡がクッキリと残っている。


 手の形は人と同じで指もあるのだけど、手のひらや指の腹に肉球があった。

 ほんのりとした穀物臭が俺の鼻に残っている。


 目が潰れるかと思ったけど、意外と悪くない体験だった。


「見ても大丈夫」


「少し落ち着いたか?」


 振り返るとパシェはいつもの鎧姿に戻っていた。


「魚……苦手なのか?」


 なんと声をかけたらいいのか分からなくて、俺とパシェは自然と並んでまた釣りを始めた。

 ただ気になることは多い。


 揺れる釣り糸を見つめながら軽く質問する。


「食べるのはいいけど、触るのは苦手」


 パシェも普通に答える。

 だからあんなに慌てて鎧を脱いだのか。


「まさか獣人だったとはな。でもあれだけのパワーがあるんだから納得だ」


 パシェはかなりパワフルだ。

 力が強くてすごいと思っていた。


 獣人は人間よりも身体能力的に優れた種族なので、パシェの力が強いことも納得できた。


「あなたは獣人を見ても怖いとか、変とか思わないの?」


「思わないよ。初めて見たから驚いたけど……むしろかわ……あぁ、いや、なんでもない」


 普通に可愛いと思った。

 いや、回帰前に飼っていた犬のことを思い出して懐かしさを覚えた。


 でも犬と比較するのも失礼かもしれない。

 女の子だし、可愛いと言うのもどうだろうか?


「鎧着てるのは姿隠すためか?」


「うん。でもそれだけじゃなくて、おじいさまが使ってたものだから」


「そうなのか」


「獣人が聖職者になるの……変だと思う?」


「俺は別に変だとは思わないよ」


 互いに一個ずつ質問して、静かに答える。

 こんな時ばかり、魚はかからない。

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