36魔物製作者4
「終わりにしよう」
大きく剣を振り上げた俺は、真っ直ぐに剣を下ろす。
裂け目から入ってくる光を照り返す銀のオーラは軌跡を残し、頭の顔も胸の顔も縦に切り裂く。
切り裂かれたところから五つの白い塊がふわりと飛んでいく。
悪魔によって魔物にされた人の魂。
遅れて、どす黒くなった血が流れる。
胸の子供の顔の目は驚きに見開かれたようになっていた。
子供の魂があったのだろうか。
「小さいものはあったような気がするけどな……」
悪魔に利用されたりすると魂が歪んで、顔なんかはよく分からなくなってしまう。
できるなら、安らかになってくれたことを願うのみだ。
「まだいるか」
感情に浸っている場合ではない。
ゲルディットとパシェの戦いはまだ続いている。
イノシシの魔物は半分の四体が倒されているけれど、まだ四体残っている。
俺も二人の加勢に加わって、イノシシの魔物と戦う。
二人で八体と戦って半分倒せるのだ。
三人で四体などあっという間であった。
「子供たちを村まで送り届けよう」
やるべきことは多くある。
長鼻の悪魔の追跡、裂け目の奥の調査、子供たちの保護、魔物の処理。
何を優先すべきかは難しい問題だが、ゲルディットはまず子供を優先した。
何にしても恐怖に怯える子供たちを放っておけはしない。
「警戒は怠るな。まだ近くに悪魔がいる可能性は十分にある。念のためにここに結界を張っておこう」
ゲルディットは懐から拳大ぐらいの大きなコインのようなものを取り出した。
教会のシンボルでもある、世界を創造したとされる神を抽象的に描いたイラストが彫られている。
足で土を軽く掘って、コインを土の中に置く。
「エリシオ、神聖力を込めてくれ」
「……分かりました」
それが何なのか分からないけど、とりあえず言われた通りにコインに手を当てて神聖力を込めてみる。
「おっ?」
コインから柔らかな光の膜が広がった。
光の膜は俺やゲルディットたちも通り過ぎて洞窟の外まで広がっていく。
「これは……」
「簡易的な結界だ。万能でもないが……弱い魔物や悪魔なら近づけなくなる」
「こんなの初めて見ますね」
「俺は神聖力が使えないから普段は持ってないんだ。お前に渡しておくつもりだったんだがな」
ゲルディットは軽く肩をすくめる。
これでしばらく洞窟を保護することができるらしい。
確かに教会の中にいるような温かな雰囲気を感じる。
「そう長くも持たない。早く動くぞ」
「分かりました」
感心しているような時間も惜しい。
俺たちは子供の状態を確認して、家に帰れると何とか鼓舞することで送り届けることができた。
「エリシオ!」
「よっ、何とか帰ってきたぞ」
「無事でよかったよ」
「ああ、俺たちはな」
村人も俺たちを迎えてくれた。
自分の子供を見つけて抱きしめる。
しかし明るい顔をした人もいれば、泣きそうな顔をしている人もいる。
自分たちの子供がいない。
そんな親もいた。
悲しみと喜び。
助けたが故に、自分の子供がもういないのだと突きつけられるのだ。
「やるせないね……」
「仕方ないさ……全部は助けられないこともある」
他の村の子供たちもいるが、今はとりあえず村で保護してもらうことにした。
子供を救うことができた。
しかしさらわれた子供達全員とはいかなかった。
それに長鼻の悪魔にも逃げられてしまった。
どこか不完全燃焼なところがある。
もっと俺が強ければ長鼻の悪魔も倒せたのではないかと、思ってしまう。
だがそれも飲み込んで、前に進まねばならない。




