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【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~  作者: 犬型大
第一章

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35魔物製作者3

「もうすぐ手に入るだろう、大司教の死体を使ったものほどではないが、なかなかの作品だ」


 オオカミの魔物が走り出した。

 狙いはパシェだ。


 パシェは迫り来るオオカミの魔物に剣を振り下ろす。

 一撃必殺の重たい威力を秘めた攻撃だったが、オオカミの魔物には当たらなかった。


「パシェ!」


 横に小さく跳んでかわし、人間の腕の方でパシェの頭を殴り飛ばす。

 硬いヘルムを素手で殴り飛ばしたものだから手がグシャリと潰れて、パシェは壁に叩きつけられる。


「この……!」


 助けに行こうとしたゲルディットのことを、二体のイノシシの魔物が邪魔をする。


「なぜペアで動く悪魔祓いが一人足りないのか知らないが……」


 オオカミの魔物はエリシオに顔を向けた。

 こっち向くな、と俺は舌打ちしそうになる。


「お前が聖なことは分かりきっている! お前を倒せば戦力は半減だ!」


 オオカミの魔物はパシェにトドメを刺さずにエリシオのことを狙った。


「半分正解だが……半分外れだぜ」


 俺は迫り来るオオカミの魔物に向かって剣を向ける。


「魔ならともかく、聖のお前にそいつが倒せるかな!」


 長鼻の悪魔はニタリと笑った。

 俺が何もできずにオオカミの魔物に殺される。


 そんな想像でもしているのだろう。


「確かに俺は聖だけど……同時に魔でもあるんだよ」


 オオカミの魔物が鋭い爪を持つ右腕を、俺に向かって振り下ろす。


「今、楽にしてやるからな」

 

 オオカミの魔物は背が高く、正面を見据えると胸にある子供の顔と目があった。

 うつろな目をしていて、子供にあるような未来への希望などそこにはなかった。


「なに!?」


 振り下ろされたオオカミの魔物の腕が斬り飛ばされた。

 そのまま勢いづいて子供たちの近くにぼとりと落ちて、子供たちが体を震わせた。


「銀のオーラ……? どういうことだ!」


 俺の体は銀のオーラに包まれている。

 鈍い輝き放つ銀のオーラが揺らめき、悪魔は目を見開く。


「お前が魔? いや……ならば誰が聖だ? 確かにアイツは……」


「考え事か? 一つ答えを教えてやろう。お前はここで死ぬ!」


「んん! ああああっ!」


 ゲルディットが長鼻の悪魔に斬りかかる。

 いつの間にかイノシシの悪魔はゲルディットのよって倒されていた。


「私の……私の自慢の鼻が!」


 振り上げられた剣を長鼻の悪魔はのけぞってかわそうとした。

 けれども長く突き出た鼻は剣をかわしきれずに、斬り飛ばされてしまった。


 鼻の切り口から焼けるような音がする。

 長鼻の悪魔は鼻を押さえて呻く。


「この……」


「ゲルディットさん、後ろ!」


「むっ!」


 オオカミの魔物が長鼻の悪魔を助けるように、ゲルディットの後ろから襲いかかる。

 パシェを殴り飛ばした時に変な方向に折れた指そのままに、ゲルディットを殴ろうとした。


 ゲルディットは俺の声に反応して素早く後ろを振り向き、剣の腹で拳を受け止めるも、威力を殺しきれずに大きく押し除けられてしまう。


「くそっ……本来ならもう大司教の死体で新しいオモチャを作っていたのに……あのグズは何してるんだ!」


 長鼻の悪魔の目が怒りでぶるぶると震えている。


「俺が作った魔物まで貸してやったのに! あんなやつじゃなくて俺こそが魔物製作者だと認められるべきで、その足がかりとなるはずだったのに!」


「パシェ、まだ動けるな!」


「はい!」


「エリシオ、パシェ、そいつは任せた!」


 長鼻の悪魔は一人で何かを喚いている。

 ダメージから立ち直ったパシェと俺はオオカミの魔物を攻撃する。


「そうだ……俺はこんなところで死なない。少し遊びすぎた。新しいオモチャを作るのに夢中になりすぎたのが悪かった」


 長鼻の悪魔は袖に手を突っ込み、両手の指に挟んで紫色の玉を取り出した。


「俺を守れ! 逃げる時間を稼げ! もったいないが……しょうがない!」


 長鼻の悪魔は紫色の玉を投げる。


「チッ……厄介な……」


 紫色の玉がみるみると大きくなり、イノシシの魔物になる。

 多くのイノシシの魔物が並ぶとよく分かるのだが、イノシシの魔物に貼り付けられた顔もそれぞれ異なっている。


 子供のような顔も混ざっている。


「俺は魔物製作者として名を馳せるのだ! ふふ、ふははっ!」


「待て! ……くそっ!」


 長鼻の悪魔はゲルディットに背を向けて逃げ出した。

 イノシシの魔物を無視して追いかけることもできただろう。


 だが俺とパシェだけでイノシシの魔物とオオカミの魔物を相手にして子供を守り抜けるかは、なかなか難しいところだ。


「……まずはお前らを救済してやる」


 ゲルディットは悪魔を追いかけることを諦めた。

 怯える子供たちを助けることの方が今は優先だった。


 そして魔物にされてしまった哀れな人たちを止めてやることもまた必要だ。


「パシェ、お前はゲルディットさんの方に」


「……分かった」


 流石に八体もの魔物を同時に相手にするのはゲルディットでも骨が折れるだろう。

 オオカミの魔物は俺が一人で相手にする。


 腕を一本無くした魔物ぐらい倒せなくて、悪魔なんか倒せるはずがない。

 喉の奥から絞り出すような声を上げながらオオカミの魔物が殴りかかってくる。


 先ほどゲルディットの件も殴りつけたので拳はもうぐちゃぐちゃだ。


「お前は……どこの誰だったんだろうな」


 俺が拳をかわすと、オオカミの魔物の体が大きく流れる。

 その隙を狙って腕を斬り落とす。


 貼り付けられた顔面しかもはや人として判別できる部位がない。

 むしろ顔だけでも残っているならありがたいかもしれない。


 人一人で魔物一体とは限らず、何人が犠牲になって一体の魔物を作っているのかは分からない。

 もはや誰が犠牲になったのか突き止めることも、不可能だろう。

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