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【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~  作者: 犬型大
第一章

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32見えないものから2

「さて、何が出るかな?」


 ゲルディットを先頭にして、小走りでデリンのところに向かう。


「デリン! 聖騎士様を呼んできたぞ!」


 ベッドの上のデリンは上半身を起こして、ぼんやりとした目をしていた。

 俺たちが部屋に入るとデリンは顔を上げて、目を見開いて俺のことを見る。


「助けて……」


 弱々しく呟いたデリンの目から涙が流れる。


「でっ……」


「お前がいけ」


「…………はい」


 ゲルディットに脇腹を軽く殴られた。

 デリンが俺のことを見て、助けてと言ったことを察したようだ。


 このメンバーで子供を相手にするのにふさわしそうな見た目してるのはクーデンドだろうが、デリンは多少幽体離脱の時の記憶もあるようだった。


「よう、体の調子はどうだ?」


 俺はベッドの横に膝をついてデリンと視線を合わせる。


「色々……痛い」


「そうか。つまりちゃんと生きてるってことだな」


 痛みを感じるのは生きているからだ。

 死んでいたら痛くもない。


「おじさんが助けてくれたんだよね?」


「……そうだが、まだおじさんって歳じゃない」


 未来夢見る若々しさはないだろう。

 だからといっておじさんと言われるほど老けてはいない。


「ああいうのがおじさんっていうんだ」


「おい」


 俺が親指で後ろに立つゲルディットのことを指差す。


「それで、何があったのか覚えてるか?」


「おじ……お兄さん、助けて。ファルやケーティス……みんな食べられちゃう!」


 デリンが俺の腕を掴む。

 手は震え、目には恐怖の色が浮かんでいる。


「助けてやるためには何があったのか知る必要がある。怖いかもしれないが……思い出して教えてくれ」


 俺はそっとデリンの肩に手を乗せる。

 そしてゆっくりと神聖力を流し込んでやる。


 神聖力が体を覆い、ほんのりとした温かさを感じるはずだ。

 多少気持ちも落ち着くだろう。


「まずは……君たちは誘拐されたのか?」


「……うん。あの日は、みんなで遊んでたんだ。村近くの森の中。大人もよく行くし、ちゃんと遊んで大丈夫な場所」


 俺の腕を掴んでいたデリンの手から力が抜けて、するりとベッドに落ちる。

 ポツリと話し始め、俺は神聖力を流しながら静かに耳を傾ける。


「遊んでたら……声が聞こえたんだ。変な声で……気味が悪くて、気づいたら頭がぼんやりして、みんな倒れちゃって、俺も……そのまま寝ちゃったんだ」


「それで?」


「起きたら……知らない場所だった。俺だけじゃなくて一緒に遊んでいたみんなや他の村の子もいたんだ」


「それから?」


「それから……」


「ここは大丈夫だから、話してくれ」


 デリンの目が少しうつろになる。

 何か相当怖いことがあったのだろう。


「……何があったのか分からないんだ。他の村の子が連れてかれて……悲鳴が……だから、食べられちゃったんだ……」


「わかった。そのことはもういい」


 デリンの体が震え出してしまう。

 俺は込める神聖力を強める。


「でも崖下に倒れていたよな? 逃げたのか?」


「うん。他の子が連れ出されそうになった時に、隙を見て。逃げて……追いつかれそうになって……それでも走って逃げたら、崖から落ちちゃったんだ」


 それで崖下に倒れていたのかと俺は納得する。


「アイツ……鼻が長くて肌が灰色で、変な見た目をしてた。きっと悪魔だよ……」


「悪魔……」


 デリンの言葉にゲルディットの顔が険しくなる。

 決定的なワードがようやく出てきた。


「みんなを助けようと思って……そしたらお兄さんが」


 友達を助けたい。

 そんな思いと瀕死の状態がデリンを幽体離脱させたのかもしれない。


「辛いこと思い出させたな。ありがとう。友達のことは……俺たちが探すよ」


「……助けられる?」


「それは分からない」


「助けるって……言わない、んだね」


 俺は寂しそうに笑うことしかできない。

 ヒーローなら絶対に助けるというのだろう。


 だけど、俺はヒーローじゃない。

 助けられないこともある。


 もう間に合わない可能性もある。

 俺はたとえ嘘でも助けるとこの子に誓うことはできない。


 助けには行く。

 けれども希望を持たせて、それが叶わなかった時にデリンの心は壊れてしまうかもしれない。


 悪魔にそそのかされる隙を作ってしまうかもしれない。

 残酷でも現実を受け止めるための答えを俺は選択したのだ。


「……お兄さん、優しいんだね」


「俺が?」


 子供にこんなことしか言えない俺のどこが優しいのか。

 口調もぶっきらぼうで、子供に対するような優しさなんてなかったはずだ。


「だって……お兄さん泣きそうな目をしてるもん」


 俺は俺の顔が見えない。

 そんな目をしていないとは思うのだけど、子供の純粋な感覚では何かが見えているのかもしれない。


 きっとそんなのは気のせいだろうと思うけど。


「泣きなんかしないさ。最後に……どれぐらい走ったかは分かるか?」


「そんなに……」


「なら崖からそんなに離れていないところに悪魔の拠点がありそうですね」


 俺はゲルディットに視線を向ける。

 今の俺の目はどう見えているだろうか。


 悲しそうか、それとも怒りに燃えているか。


「今から向かえば悪魔を倒しても日が暮れる前に帰って来られそうだな」


 時間がなさそうということはゲルディットも理解している。

 悪魔がいるならほっとけない。


「早速実戦か。やはりお前のすごく嫌な予感は当たるな」


「当たってほしくないんですけどね」


「クーデンド、お前は残れ」


「…………はい」


 ほんの一瞬クーデンドはためらいを見せて、飲み込んだ。

 悪魔と戦う上でクーデンドは役に立たない。


「明日になっても俺たちが戻らなければ、お前は村の大人を連れて元きた道を戻れ。そして教会に助けを求めろ」


「分かり、ました」


「そう心配するな」


「ダメそうなら逃げて帰ってくるからさ」


 俺はクーデンドの肩に手を乗せる。

 子供じゃないのだから、それで不安が解消されないことも分かっている。


 ただそれしか言いようもない。


「無事でね。神様に祈ってるよ」


「ああ、行ってくるよ」


 こうして、クーデンドを除いた俺たちは悪魔祓いに向かうことになったのだった。

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