27見習いから見習いに3
「何があった?」
「近くの村で魔物騒動があった。もうちょい向こうでも同じように騒ぎがあったらしくて、馬車はそっちに走ってないんだ」
髭面のおじさんが申し訳なさそうな顔をする。
そういえばそんなことがあったな。
墓地に魔物が出た時に、近くの村に魔物が出たから聖騎士がいないということを言われた。
そのことが今も尾を引いているようだ。
「他から行くには? 聖都に行きたい」
「聖都に? ああ、もうそんな時期か」
「回り込んでいけないか?」
「ああ……そうだな。おい! みんな来てくれ!」
髭面のおじさんが他の乗合馬車の御者を集める。
聖都に向かうのにどう行ったらいいのかと、ああでもやいこうでもないと話し合いを始めた。
乗合馬車は同じルートを行ったり来たりする。
だからあまり他のルートにも詳しくない。
何人か幽霊も集まってるのは少し面白い。
話の輪の中に混ざるようにしている。
単なる興味なのか、それとも本気で話に混ざろうとしているのか知らないが、時折周りと一緒に首を振ったり頷いたりしている。
どうやら混ざっているらしい。
「なんだか早くもって感じだね」
クーデンドがこそっと俺に耳打ちする。
「トラブルは何にでもつきものだ。良い経験になっただろ?」
「……確かにね」
クーデンドはゲルディットに視線を向ける。
興味なさそうに耳をほじっている姿は参考にしちゃいけないだろう。
ただ大切なことはゲルディットが焦っていないというだ。
「僕だったら今頃あわあわしてただろうね」
馬車がないと聞かされたのがクーデンドの一人旅だったら、途方に暮れてしまっていただろう。
しかしゲルディットは予想外のことがあっても、少しも動揺することがない。
堂々とした態度は見習うべきところがある。
人がどうしたらいいかと話し合っている時に興味なさそうな態度でいることは、絶対に見習わない方がいい。
「なかなか難しいな。真っ直ぐに聖都の方に行かないと大きく回り込むことになってしまう」
若干険悪な雰囲気になりそうになりながらも、オッサンたちの話し合いは一応の決着を迎えた。
どうやら地形が悪いらしい。
他の方向の道から向かうと、遠回りになってしまうようだ。
「ふぅ……魔物なんてのも出てきたら面白いか。よし、歩くぞ」
「単純明快な答えだな」
「うぇ……歩くんですか」
話を聞いたゲルディットはサクッと答えを出した。
魔物が出てきたら何も面白くないと思うのだけど、ゲルディットがどこまで本気で言葉を口にしてるのかは分からない。
「歩いて向かった早そうだ」
馬車で遠回りして行くより、歩いて次の町まで行ってそこから馬車に乗った方が日程的にも早いことが判明した。
普通の聖職者だけなら遠回りした方がリスクは低いのだけど、今ここには元悪魔祓いの聖騎士と見習い悪魔祓いの聖騎士、それに見習い聖騎士がいる。
ちょっとぐらいの魔物なら撃退することもできる戦力だ。
なんなら魔物が出てくれるなら、俺の経験にもなるとゲルディットは言い放つ。
「行こうか」
「…………」
「しょうがないか」
常に次への馬車があるわけじゃない。
時にはタイミングを逃して馬車がないことや、そもそも間に馬車を走らせている人もいないことだってある。
きっとどこかで歩いて移動しなければならない時は、どこかできてしまう。
それが今きただけなのだ。
俺は特に反対することもなく徒歩での移動を受け入れ、パシェは変わらず無言。
クーデンドも渋々受け入れた。
早速のトラブル。
まあ、順調でいいじゃないか。
どうせトラブルだらけの人生。
少しぐらいトラブルがないと逆に心配になってしまうというものだ。




