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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season5 ― 心が動く瞬間(とき)―  作者: 柊梟環
EVOLVE Season5 ― 心が動く瞬間(とき)―
1/17

―プロローグ― 環の母の日 ―

母の日――環がこれまで“避けてきた日”が、

ぽかぽか邸にやさしく訪れます。

柊、凪、そして灯が織りなす小さなあたたかさが、

これからの物語の“心が動く瞬間”へとつながっていきます。


しゅうたまきの寝室。


「ねぇ、柊。」

「ん? どうした?」

「今日、ははにうちに来てほしいんですけど。」

「いいよ。あかりさんには連絡したの?」

「まだ……なんですけど。」

「ん? 何か気になることあるのか?」

「今日、うちに来てって言ったことがなくて……言っても大丈夫かな〜って。」

「そうか。いつも環から“来て”って言ってないんだな。」

「はい……。」

「でも、たまには言ってみてもいいんじゃないか? 灯さん、喜ぶと思うぞ。今日がダメでも、連絡してみたら?」

「はい。連絡してみます。」


---


“はは

今日、私たちの家に遊びにきませんか?

予定はどうでしょうか”


“環

連絡ありがとう。うれしいわ、環が誘ってくれるなんて。

もちろん行くわよ!

環、ははに甘えたくなったのかしら?”


“はは、どうしてわかるの? 何も言ってないのに。”


“ふふ。わかるわよ。環のことは何でも。

そろそろ甘えたくなるころかな〜ってね。”


“はは、すごい!”


“ふふ。でしょ? 11時ごろ着くように行くわね。

待っててね。環のははより。”


“うん! 待ってるね! 気をつけてきてね。”


“は〜い! ありがとう、環。”


---


「柊、はは、来てくれるって〜!」

「そうか……よかったな。」



◇◇◇



― ピンポーン ―


「あ! はは〜!」

「は〜い! こんにちは〜、待ってました〜。あけま〜す!」

「どうした、環。まだエントランスホール……」

「あ! そうでした……!」

「……ったく、落ち着け〜。」

「ははは……環さん、子ども〜。」

「え〜だって〜。」


柊は、そう言う環の肩を引き寄せて落ち着かせる。



― ピンポーン ―


「は〜い!」

「ははー!」


「こんにちは。お招きありがとう。」

「はは〜!」


言うなり抱きつく環。


「あらあら、ちょっと靴くらい脱がせてよ、環。」

「は〜い。」

「ふふ。そんなに会いたかったの?」

「うん。今日は、ははに甘えたい日なんです。」

「そうなのね……柊くんがいれば、ははは用無しじゃないのかしら?」

「ふふ。柊にも甘えますよ! でも今日は、ははに甘えたいんです。母の日ですから。」


そう言ってまた灯にしがみつく環。


「そういえば母の日ね。母の日って母に感謝する日じゃなかったっけ? いいの? これ。」

そう言って柊を見る灯。


「ええ、たまには……ははに甘えたい日もあるみたいで。」


「環さんにとって母の日は“甘える日”みたいですね〜。」


「ふふ。ま、それもいいわね。甘えられてイヤなことなんてないから。

 ね、環。今日はいっぱい甘えなさい。はははうれしい。」


「ふふ。私もうれしい。」


「母の日か。じゃあ今日は、ちょっと贅沢なランチでも作るか! なぎ、手伝え。」

「は〜い! 何作ります?」


柊と凪はキッチンでランチの準備をはじめる。


「そういえば環、母の日ってキライって言ってなかった?」

「はい……前はキライでした。でも今は、やさしいははがいるので好きになりました。」

「そう……。それにしても環、くっつきすぎじゃない?」

「え〜、ダメですか?」

「ダメじゃないけど……環ってこんなに甘えん坊だったかしらね〜、ふふ。」

「これから母の日は、ははに甘える日にします!」


「ははは……なんだその宣言。」

「え〜、じゃあ僕も甘えたいです〜!」

「凪、おまえはこっち手伝ってならな。」

「は〜い!」


ぽかぽか邸は、明るい会話と笑い声に包まれていた。


「これから母の日は、“甘えられてうれしい日”になるわね。」

灯はうれしそうに微笑む。


「ありがとう、はは。」


灯の隣に座り、幸せそうに笑う環。

母娘の会話はつきない。


柊と凪は、二人の笑い声をBGMのように聞きながら、

静かにやさしく微笑んでいた。


― その日の“ぬくもり”が、

後に誰かの“心が動く瞬間”を生み出すことになるとは、

まだ誰も知らなかった。

環が初めて自分から「来てほしい」と願えた日。

それは、彼女の心の奥の氷がそっと溶けはじめた瞬間でした。

この“ぬくもり”が、後に誰かを変えていく光になります。


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