武家の異端児は魔石を得る
「デートですか?」
「そうよぉ、今度の週末、二人でピクニックに行きましょう!」
ぽんっとて言う姉さん。
そんな事でいいのか。
ピクニック一回で上質な魔石が手に入るのだから安いもんだ。
それに普段なかなか会えない身内を知れるいい機会にもなるしな。
「もちろんいいですよ。場所はやっぱり王都ですか?」
「ううん、場所はもう決まっているの。でも当日まで内緒にしておくわぁ」
姉さんくらいの年の女性なら、てっきり王都で買い物とかが普通だと思ってたけど、他に行きたいところがあるのか。
「分かりました。当日を楽しみにしてますね!」
それじゃあ、と俺は魔石を抱えて部屋を出ようと姉さんに背を向ける。
一歩踏み出したところで、俺はものすごい速さで抱き寄せられた。
高そうな香水の良い匂いが包み込んでくる。
実姉とは言え、こうも密着されると少しドキドキするな。
緊張してきた俺は、恐る恐る姉さんに声を掛けてみる。
「あの、姉さん?」
「ごめんねぇ、久しぶりに会えたから。ちょっと弟成分補充させて?」
姉さんはそう言うと、俺の首筋に顔を埋めて深呼吸を始めた。
首筋がゾワゾワして凄くくすぐったい。
しかし凄いパワーだ。
俺の身体はガッチリとホールドされ、身動き一つ取れない。
おまけに心なしか骨がミシミシ言っている気がする。
両側から柔らかいクッションに挟まれ、ゆっくり潰されて行くような感覚と表現するのが正しいだろうか。
「姉さん……、そろそろ限界……!」
「あらあらごめんねぇ」
体感にして5分程か、ようやく解放された。
姉さんはまだ物足りなそうにしているが……。
軽く身だしなみを整え、ゴーレムに魔石を持たせる。
姉さんもまた王都に戻るようだ。
そう言えば仕事抜け出して来てたんだっけこの人……。
家を出て別れ際、俺は姉さんに振り返る。
「それじゃあ姉さん、この魔石は大切に使わせてもらいますね!」
「ねぇアレス、魔法は好き?」
「うーん、未だ良く分かってないですね。色々便利なものだとは思いますけど」
率直な意見をそのまま姉さんに伝えた。
俺にとって魔法という存在は理想のゴーレム、もといロボットを作り上げる手段に過ぎない。
料理人が食材にこだわるが、農家や牧場を運営のまではしないように、俺もゴーレム開発から魔導士にはならないと思う。
今のところ俺と魔法の距離感はそのくらいの位置にいる。
姉さんはそれを聞いて、「そっか…」と呟くと、手を振って行ってしまった。
一体何を確認したかったのだろう。
ともかく、俺は無事に魔石を入手し、実験場もとい中庭に戻ってきた。
さっそくゴーレムの研究を再開したいところだが、もうすぐ午後の座学の時間だ。
正直ボイコットしたいが、如何せん上級貴族な分、こういう怠慢は後々の面倒事に繋がるので今日はこの辺にしておこう。
パリスも既にいない。
彼女が座っていた椅子の上には読みかけの魔導書が開いたまま置かれていた。
「精霊の飼育方法について……ね」
ここで俺の脳内には、あるアイデアが浮かんだのだった。




