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武家の異端児は姉に遭遇する

さて、無事に姉さんの部屋に侵入できたわけだが、目当ての物は一つだ。

それは魔石。

ヘレン姉さんと言えば、王家直属魔道部隊の隊長を務める凄腕の魔法使い。

そんな姉さんなら、質の良い魔石の一つや二つ持っているに違いない。

そう踏んで、ここをターゲットに定めたのだ。


「これかな」


棚の一角に、大きめの透明なケースに入った何かの原石が飾られている。

手に取ってみると、ずっしりとした重みを感じた。

それをそーっと近くのテーブルに置き、ケースから取り出す。

確証はないが、もしこれが魔石なら魔力を当てると光るはずだ。

俺は石に手をかざし魔力を注ぐ。

すると、原石は淡い紫色の光を放ち始めた。


「ビンゴ!」


後はこの魔石をどう持ち帰るかだ。

さっき持ってみた感じかなり重さだった。

とてもじゃないが、12歳児にこれを持ち運ぶのは難しい。

よし、この魔石はゴーレムに運んでもらおう。

こういう時のために木製のゴーレムを同行させておて正解だったな。


あと部屋を出る前に確認しておきたい事がある。

姉さんの事だ、何か仕掛けを施してあってもおかしくない。

そう思って部屋を見回していた時、ガシャァン!とものすごい音がした。

見ると魔石を運んでいたはずのゴーレムが派手に転んでいた。


「あれ?お前でもこの魔石は重かったか?」


俺はゴーレムを起こそうと近寄った次の瞬間、床とキスしていた。

あれ?おかしいな、普通に歩いていたはずだ。

疑問に思いつつもその場から立ち上がろうとするが、上手く起き上がれない。

立てたと思った次の瞬間には床に倒れている。

それはゴーレムも同じようで、生まれたての小鹿のようになっていた。


「なんだこれ、くそ」


しかもこれ、動けば動くほど気分が悪くなってくるぞ。

まるで乗り物酔いした時みたいな気持ち悪さだ。

こうなったら一度止まって考えよう。

まず間違いなくこれは姉さんが部屋に仕掛けた罠。

恐らくは平衡感覚を狂わせる魔法だろう。


「それにもう一つ……。」


俺は試しにほふく前進で出口へ進む。

しかし一向に辿り着かないどころか、どんどん出口が遠ざかっていく。

平衡感覚を狂わせられて気づかなかったが、冷静に俯瞰すると俺はこの場から一歩も動けていない。

この謎の魔法のせいで俺は完全に身動きが取れなくなっているのだ。

そんな時だった。

上から姉さんの声が聞こえていたのは。


「あらぁ、随分と可愛らしい泥棒さんだこと」


俺は声のする方向を見て驚愕した。

天井一面に姉さんの顔が、プロジェクションマッピングのように映し出されていたからだ。

姉さんは水槽の魚を愛でるような顔でこちらを見下ろしている。


「ヘレン姉さんお久しぶりです。まずはこの魔法解いてくれませんか?」


「もう解いてるわよぉ」


本当だ。

先程まであった酔いも取れて、自由に動けるようになっている。

俺は立ち上がって、改めて姉さんを見上げた。

こうなったら直談判で魔石を譲ってもらうしかない。


姉さんは俺をとても可愛がってくれているが、率直に言ってこの人は少し苦手だ。

なぜなら超が付くレベルのブラコンで、何かにつけて俺を可愛がろうとしてくる。

後が怖いが背に腹は代えられない、理想のゴーレムを造るためだ!

俺は両手を祈るように組んだりなんかして、努めて可愛らしくお願いしてみる。


「姉さん、まずは無断で忍び込んでごめんなさい。それでお願いがあるんですけど聞いてくれますか?」


「あらあら、どうしたのかしらぁ。可愛い弟の頼みならお姉ちゃん何でも聞いちゃうわぁ~」


どうやら効果覿面の様子。

ヘレンは顔を赤らめ、息遣いが荒くなっている。

というか目がヤバい!怖い!

ええいままよ!俺は腹を括って話を続ける。


「実は今ゴーレムを造っているのですが、長時間稼働させるために質の良い魔石が必要で、姉さんの部屋にならそれがあるかもって」


「魔石?そこのゴーレムが持ってるやつね、勿論いいわよぉ」


「わぁ、ありがとうございます!じゃあ僕はこれで!」


姉さんがそう言い終わる前に、俺は足早にその場を去ろうとする。

しかし一歩踏み出した瞬間、またしても床に転がされていた。

しかし今回は魔法ではない。

何か大きくて柔らかいものにぶつかった反発で転んだのだ。

俺は恐る恐る衝突した物の正体を確認する。


「まだ話は終わってないわよぉ?」


そこにはいつの間にか戻ってきたヘレン姉さん本人が、ニコニコした表情で立っていた。


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