武家の異端児はゴーレム開発に着手する
『全ての魔法には、1から10までランク分けされる。
再現性の難易度、威力、規模を考慮しランク付けされ、このランクを階梯と呼ぶ。
階梯付与には、魔法を管理運営する組織”魔法協会”への申請が必要であり、未階梯の魔法を使用すると厳罰に処される可能性がある。
以下が各階梯魔法の指標である。
第一階梯・・・誰でも使える簡単な魔法。いわゆる初球魔法。
第二階梯・・・第一階梯に少し手間が加わった魔法。
第三階梯・・・中級魔法。駆け出し冒険者、一般魔導士によく使用される。
発動前に一節の詠唱が入る。
第四階梯・・・中級魔法に少し毛が生えた程度。一節または二節の詠唱が入る。
第五階梯・・・上級魔法に分類される。二節以上の詠唱が入り、発動難易度が高まっている。
魔法学校教職、上級魔導士の認定はこの階梯を3つ習得している必要がある。
第六階梯・・・上級魔法。第五階梯に比べて、遥かに習得難易度が高い。
習得しているだけで宮廷魔導士に採用され、その他方面でも多彩な活躍が見込める。
第七階梯・・・魔導士が習得できる魔法の最高地点。
威力、効果、規模のどれもが規格外だが、その分難易度も鬼。
これを習得できた者は魔法の天才と評して然るべきだろう。
第八階梯・・・通称、”未開の魔法”
第七階梯を遥かに凌ぐ、原理不明にして対処不能の超級魔法。
これを人の身で扱えるのは世界にほんの一握りしか確認されていない。
第九階梯・・・第八階梯を超える魔人の魔法。
神に背き、世の理に反した成り損ないの魔法。
決して挑むべからず。
第十階梯・・・魔神の魔法。
我々人類が彼らの魔法を知るには、まだまだ時が必要だ
』
以下、アルベール・リヒトの魔導書より抜粋。
とりあえず第五階梯より上の魔法は追々覚えるとして、ゴーレムに関する魔法だな。
ページをめくりそれについて記されている第3階梯の項を開く。
そこにはゴーレムに関する知識と、操り方が細かに記載されていた。
俺はその中から、召喚について記されている部分に目を流す。
ゴーレム召喚には触媒となる素材の他に、術者の血液が一滴必要である。
術者の血はゴーレムと術者を繋ぐ鎖の役割を持ち、これによってゴーレムには術者に絶対服従となる。
と書かれている。
「ふーん、血は後から使うのか。召喚したゴーレムに付けると」
という事は、まず召喚しなければ始まらないという事だ。
よくよく読んでみると、ゴーレムとはとても奥深い。
例えば、土のような定まった形がない素材だと、流す魔力量によって自由に大きさを変えられるとある。
「どれから行こうかな」
用意したのは土、木、岩の三種類。
まずは一番簡単な土にしよう。
ゴーレムは生成時のイメージが重要になり、土を素材とする場合それが顕著に表れると書いてある。
想像は得意分野だ。
俺は魔法陣に手の平を掲げ、意識を集中する。
ゆっくりと法陣に魔力を流すイメージ。
そして詠唱。
ゴーレムは素材によって詠唱が若干異なる。
土はこれ。
「大いなる大地の化身よ、我が前に姿を現せ!」
呼びかけに答える様に周りの土が法陣の中心に集まってゆく。
寄せ合い、重なり、混ざり合って次第に人の形を形成していく。
それからすぐに、記念すべきゴーレム第一号が完成した。
「ふー。結構魔力持ってかれた気がするな。クオリティによって消費魔力も変化してくるのか?」
でも初の魔法、初のゴーレム生成でこれは上出来だろう。
俺の目の前にはゴスロリのメイドが立っている。
服の装飾や髪もイメージ通りで、長いツインテールの先のカールまで完璧だ。
「へぇー。本当にイメージ次第で何でもできるんだなぁ」
感動してまじまじとゴーレムを見つめる俺に、パリスが言った。
「坊っちゃんー。早く印刻まないとゴーレム崩れちゃうっスよー」
「え?」
その瞬間、ぐしゃりと音を立て、我が子が土に帰る。
どういうことかと慌てる俺に、パリスが魔導書を向けてある箇所を指した。
そこには追記の文字と共に、小さな字でこう書かれていた。
『ゴーレムには召喚してから30秒以内に印を刻まなければ、元の素材に戻ってしまうため注意されたし』…と。




