武家の異端児はギャルに驚く
コボルト達の前に立ちはだかったパリスは、束に手を掛け、静かにそれを引き抜いた。
鞘から抜き放たれた剣は、その刀身を陽光で鈍く輝かせている。
その一方で、コバルト達もまた臨戦体制に入っていた。スリーマンセルの群れ、その先頭に立っていたリーダー格の狼型のコボルトが灰色の体毛を逆立たせ、眼前に立つ獲物に向かって牙を見せつける。それに呼応するように後ろに控えていた二匹もまた、牙を剥いてパリスを睨んだ。
これはコボルトが取る最大級の威嚇行為である。
パリスは3匹を冷たく一瞥すると、おもむろに刀身に手を滑らせる。直接触れず、しかしギリギリの距離を保って行われるその仕草は、遠くから見守るアレスに何か透明な物で包んでいるように見せた。
瞬間、パリスの剣はバチバチと弾ける青白いオーラを纏いはじめる。
「電気?いや、雷か。剣に雷を纏わせたんだ」
アレスの推論は正しい。
この世界の戦闘技術の一つに、エンチャントというものがある。
魔法を武器に付与して攻撃力を上げる技術で、古くは剣士が対魔導師との戦闘で編み出した、敵が使う魔力障壁の属性と同質の魔力を武器に付与することによって、障壁を中和し攻撃を通す戦法が流行した事により始まった技術である。
現在では、純粋に武器の威力を底上げする技術として定着している一方で、付与する魔法の威力と付与先の武器の耐久力を均一にしなければ、その場で武器を自壊させてしまうというデメリットを孕んだ、使い手に高い魔力制御能力が要求される高等技術として認知されている。
パリスはそれを何なく成功させて見せた。
彼女が纏わせたのは、己が最も得意としている雷属性魔法"ライディン"。
空を走る雷撃を手から放ち、一時的に相手を麻痺させることができる第二回階梯魔法である。
(武器の耐久値を考慮して、エンチャントの持続時間は持って30秒ってとこかな。それ以上は剣が形を保てなくなっちゃうから、できるだけ早くコイツらを倒さないと......ッ!?)
先に動いたのはコボルトだった。狼型コボルトが力任せに剣を振り下ろす。パリスの脳内演算を遮るように放たれた一閃は、ギリギリの所で避けられた。
しかし、攻撃はまだ終わらない。後方から弓矢による追い討ち、その軌道に合わせるように狼とハイエナが距離を詰める。
「へぇー。連携はバッチリって感じ?でもっ!」
パリスは剣で一矢を弾き、そのまま前方は跳躍。向かって来るコバルト2匹を足場に、さらに跳躍した。
そして弓兵めがけて刺突の構えを取る。
自分が狙われていると気づいた弓兵コボルトは慌てて二射目を構えようとする。しかしそれは叶わなかった。
「ギャッ!?」
「遅い!レーヴェン一刀流"|雷蜂突き"!!《らいほうづき》」
弓を構えるより早く、パリスの突きが弓兵コボルトの脳天を貫いた。
コボルトの頭部は剣に付与された雷撃により、容易く弾け飛んだ。




