武家の異端児は野生の魔物に遭遇する
ロンディーネ王国、東の都アルトハイム。
その都市部及び一部森林地帯がレーヴェン家の領地である。
どうして森林地帯まで領地を持っているかというと、
レーヴェン家現当主”へレク・レーヴェン”つまり俺の父が、森林から発生する魔物を都市部へ侵入させないための、砦としての役割を買って出た事で、現在の場所に収まる事となった。
本来はアルトハイムの中心に屋敷を構える予定だったため、空いた敷地には大きな冒険者ギルドが建てられている。
「まもなく哨戒区域を通過します」
馬車を引く使用人から領地を抜けることを告げると同時に、わずかに馬車の速度が上がる。哨戒区域から先はレーヴァンの守備範囲外になるため、いつどこで魔物に襲われてもおかしくない。
逆に言うと哨戒区域内で魔物に襲われても、すぐに在中している騎士団が駆けつけてくれるようになっている。
そして、今回俺の護衛は実力不明のパリス1人だけ。
仮に彼女が凄腕の剣士だったとしても、魔物の群れを1人で相手取るとなると骨が折れるだろう。
だからこそ、万が一を考慮して素早く森を抜ける必要がある。
俺は横目で隣に座るパリスを確認する。
護衛として、形だけでも警戒はしてくれているといいのだが......。
「.........。」
え?寝てる?
パリスは腕を組んで目を閉じていた。
頭は下を向き、馬車の揺れに合わせてサイドテールが揺れている。
彼女の姿は、どこからどう見ても寝ているようにしか見えなかった。
うっそだろこいつ!
護衛対象ほっぽかして爆睡こいてるのか!?
そしてタイミング悪く馬車が停止し、運転席から淡々とした声が聞こえてきた。
「目視で前方に魔物の群れを確認。おそらくコボルトかと」
コボルトは二足歩行で武器を持ち、スリーマンセルの群れで行動するという特徴を持つ獣型の魔物だ。
行商人や冒険者を好んで襲い、武器や食糧なんかを奪って生活している。
そのため、コボルトの強さは拾った武器に依存するとされ、持っている武器が相当な業物でもない限り、この世界でも比較的弱い魔物として知られている。
生で見るのは初めてだ。どれどれ
俺は小窓から頭だけ出して前方の様子を窺ってみる。
距離にして100メートルくらいだろうか、確かに成人男性ほどの大きさの影が見える。
影は徐々に大きくなっていき、それに伴って全貌がハッキリとしていく。
ソレは、剣を持ち、薄い鉄の胸板、腰には革製の履き物を装備した、いわゆるゲームの初期装備のような格好をした狼だった。さらにその隣には盗賊風の身なりをしたハイエナ?が一匹。
さらにその後ろに弓を携えた狐のようなコボルトもいる。
三匹は既にこちらの存在に気づいているようで、じわじわと距離を縮めてきている。
まずい、弱い魔物とはいえ身体能力は常人の数倍はある。おまけに相手は武器を持っているし、取り付かれたら厄介だ。
俺はいまだに眠っているだろうパリスを起こすべく、顔を引っ込める。
「おいパリス。起きてくれ!魔物が...ってあれ?」
俺の隣にいたはずのパリスの姿が消えていた。




