表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

昆虫日記

夜行蝶々

作者: シリウス

冬の終わりを思わせる、わずかに暖かい空気。


風に乗った落ち葉かと思ったそれは、不意にブンと音を立て、まっすぐ私の顔めがけて飛んできた。

反射的に身をかがめる。

一瞬だけ見えたシルエットは何かの蝶々だったと思う。

羽の先から真ん中にかけて黒い、もしかしたら蛾だったのかもしれない。

振り返るのも面倒で、あと4メモリ残った信号をじっと待つ。

それでも、過ぎていったあの蝶々はまだ近くにいるのだろうか。そんな好奇心がふと勝る。


ビルの電光掲示板はオレンジ色の「6:25」の数字を光らせている。

空がちょうど藍色に変わっていく。うっすらと星が見える。

そうかもう春分を過ぎたのか。


大通りでは、仕事を終えた人々がいそいそと家路を急ぐ。

それとも金曜の夜、どこか別の場所へ向かっているのだろうか。

まだ冬物のコートを着ているせいか、暗がりのなかで皆黒い塊となってうごめいて見える。


一本裏の道に入る。

賑わう町中華の横で、タバコをふかすサラリーマン。

ギラギラと光るラーメン屋の前に並ぶ学生たち。

カフェから出てくるカップル。


冷え込んでいく街を歩く。

肩にかけた荷物が重い。

買い忘れたものを思い出し、スーパーに寄る。

今夜は、温かいスープでも作ろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ