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時は来た






大学のキャンパスで、高所から落ちたと思ったら、ここは・・・・・・?






周りを見渡すと、明らかに今までみたことないような質の景色が一面に広がっている。

え?なんだ・・・?




地面に生い茂る草原が、オレンジ色で・・・踏んでいる足の感触も、今までにないような・・・なんかモニョモニョしてる・・・としか言いようがない・・・。生えてる木みたいなのも薄っすらオレンジで・・・。


なんだ、これ。夢・・・?

夢だとして、明らかに普通ではない。それはわかる。ただまあ、今まで高いところから落ちたこととかないし、そういう時ってこうなるもんなのかな・・・・・・。


まあそれはそれとして、なんなんだここ。

夢なら、今までの俺の記憶を元に造られてるはずだが・・・こんなの知らんぞ・・・?

何?何星だここ?

よく見ると、木の何本かには、変な実が成ってる。食べられるのかな・・・。こんなときでも人の好奇心は止められないのか・・・。


・・・ところで、なんなんだ今の状況・・・・・・・・・・・?




「見つけましたよ」


女の子の声が聞こえる。今まで聞いたことないような、異質な声。怖・・・、何・・・?


「仕事ですからね。悪く思わないでください」


振り返ると、そこには自分と同い年位の女の子がいた。

よく見たら、杖を持ってる。てかなんだこの・・・絵本に出てくる魔女みたいな服装・・・。この時点でやっぱりおかしい。杖の先が変な星型だし・・・。

ただまあ、金髪に水色の目をした女の子で、その容姿も珍しいし、大学では女の子に話しかけられることもなかったので(しかも金髪て)、ぼんやりと珍しいこともあるもんだなーと思いつつ、杖に集まってくる赤い「炎に見えるもの」を眺めていた。




・・・ん?なんか熱い。あれ?これってもしかして、死ぬんじゃ・・・。本能が察知する。




「まっ・・・待ってください!ちょっと!」


声を上げる俺。少し邪悪な笑みを浮かべていた女の子の表情がすぐに変わる。真顔だ。


「なんでですか?」


「いや、だからあのっ、なんかの勘違いだと思うんですけどっ・・・」


「勘違い?・・・その服についてるマーク、なんなのか言ってみてくださいよ」


マーク?なんのこと・・・。


! これは・・・!

確認するとそこには、中学生の時に買ったこの服に書かれていた、主張しすぎない程の、薄っすらと、小さく存在する竜の絵があった・・・。本当にうっすらと・・・。

大学生にもなってこの服を着るのはさすがにね・・・?と、あまり大学には着ていかなかったんだが・・・。よりによって、今日・・・。


まさか、この竜の服(ドラゴンズ・クローズ)のせいで、命を落とすのか・・・?

・・・・・・・・・うそだろ・・・終わりなのか・・・?この服のせいで・・・?ええ・・・?

・・・この竜を恨むような死に方は・・・・・・あの時、買ってきてくれた母を恨みたくは・・・!!

ちょ、待って待って待って、こんなはずじゃ、こんなはずじゃ・・・・・・・・・!!待て、熱いっ!!!







ぎゅるるる・・・。

聞こえたのは、竜の悲鳴ではなかった。たぶん、その女の子の腹鳴りだった・・・。




「・・・・・・まあ、話はとりあえず、酒場で聞きます。・・・・・・ついてきなさい。さっさと」


女の子の顔を見ると、汗がものすごく流れていた。




酒場に行くため?女の子にとりあえずついていく。なんで酒場なんだ・・・?


一歩一歩地面を踏みしめるが、やはり、なんか感じたことのない変な感覚だ。てか体全体の感覚がこう、なんかおかしい。体がちょっと重い。

周りをよく見ると、民家のような建物もある。

うーん、まあ・・・とりあえず日本とは文化が違いそうだな。見慣れない感じの造りだ。教科書に載ってそうな造りの、なんて言ったっけな・・・。

そして、見たことのない、鳥と犬を合体させたような生物も・・・・・・・。

ちょっと待て、なんなんだこの世界は。


うろたえているうちに、着いたようだ。

ガラッ。女の子が、酒場の扉を開ける。


「すみません、2名なんですけど」


「・・・・・・・・ん、君達、無祝者(むしゅくもの)かな?」


「! ・・・まあ、そうですけど・・・」


「じゃあ、この店では、一人30カル貰うことになってるから。二人で60カルね」


「うげ・・・・・・。・・・あの、持ってます?」


うわっ・・・話しかけてきた・・・!


「・・・いや、持ってないです」


「・・・・・・はあ、仕方ないですね・・・。はい、きっちり60カル」


「確かに頂戴した。ちょうどそこの席が空いてるから」


なんか、よくわからんけど、料金をこの人に払ってもらったみたいだ・・・。なんか、ますます逃げられない雰囲気じゃない?これ・・・。


ドンッ!


うわっ!びっくりした。

席につくやいなや、机叩いて、なんだこの人。


「・・・さて、逃げられないですよ・・・・・」

舌なめずりをする女。・・・なんかさっきと雰囲気変わった・・・?顔がヤバい。


「・・・ぎゅるるるるるる・・・」

と思ったら、周りが騒がしい中、はっきりと女のお腹の音が聞こえた。どんな反応したらいいのかわからない。


「・・・・・・・・・虫か・・・?」

ボソッと聞こえた。・・・ここにも虫とかいるのか・・・。この場所の虫の生態とか知らないし、今のが虫の鳴き声という可能性も捨てきれないかもしれない。



「・・・・・・」

俺にもわかるくらいの滝のような汗をかきながら、メニューを見る女。


「あの、すみませ~ん」

店員を呼び出す女。


「このフレフレットミートを頼みたいんですけど~・・・あ、二つ」


「値段は890カルね。来るのは遅くなるよ」


「・・・4倍ですか?」


「うん。君達は無祝者だから。納得してもらうしかない」


「・・・」


不機嫌そうな顔をする女。


・・・さっきから言ってる、むしゅくものってなんだ?まあ良さそうなものではないけど・・・。


店内は騒々しい。俺と目の前のこの人の空間が際立って静かに感じられる。


静かなまま流れる時間。



「・・・・・・・ぇ~っと・・・あの・・・む・・・むしゅくものってなんですかね?」


静寂を止めたのは、俺だった。




・・・・・・・・あれ?なんか、さらに時が止まった・・・。


「・・・・・・そういえば、なんであなたは無祝者なんですか・・・・・・・・」


え?


「いや、というかなんとなく違うってのはわかってたんですけどね?いやホントですよ?いやだって本当にあなたがアルクレールの配下だとしたら酒場で話し合いなんかしないじゃないですか。もしかして私の私用のためにここ選んだと思ってました?たかが夕食のために?一応言っとくと私はこの辺では結構知られた魔法使いで、多分その辺の人に聞いたら私の活躍とか全部分かりますよ。知られたくてやってるわけじゃないんですけどね。だって」


喋り続ける女。アルクレール?魔法使い?・・・どういうことだ・・・?


そのファンタジー感満載の単語群を前にして、俺は悟った。


直感だが・・・夢じゃない・・・・これは・・・・・。



「・・・アルクレール・・・・・・・ってなん・・・でしたっけ・・・・?」


「・・・え」


「・・・あ!いや最近なんかあの、ど忘れがあの・・・結構あって・・・」


「・・・その辺の幼児に聞いたらどうですか?教えてくれますよ!

この世でもっとも力を持つ支配者!それが閉塞王アルクレールじゃないですか!」


「閉塞・・・王・・・?」


「ええ。アルクレールが現れてから、ご存じのようにこの世界は彼に支配されました。

人が誕祝者とか無祝者とかに分けられたりして・・・。この世界に自由なんてありません。

だから私たち『リベロ・ソレイユ』がいるんです!


・・・・・・・あ!!!!!!!」


「(なんだいきなり・・・)『リベロ・ソレイユ』・・・??」


「まあ、忘れてください」


急に真顔になった。そしてこの人、いつも焦ってるな。


明らかになんか隠してるな・・・。まあ今はそれはもういいんだけど、さっき『二人分』とか言ってたから、俺の分もなんか頼んでくれたんだよね?この人。腹減りすぎて・・・。

・・・・・・料理が来るのが遅い。明らかに。他の人には来てるのに。


よく見たら、他の人の服装を見ても、こう、絵本・・・というよりは、RPGぽいというか、やっぱ昔の人の服のイメージで・・・。冒険者っぽいのもいる。とりあえず、楽しそうに酒や料理を貪っている。


「おまちどう、フルフレットミートふたつ~」


ドンッ!店員が料理を運んできた。


来た!日本料理とは違うが、結構まともに肉だぞ!・・・お、ナイフとフォークもあって・・・じゃない、なんか形が違うけど、これで食べるのか・・・?


ちらっと彼女の方を見る。すると・・・明らかに険しい顔つきに変わっている。一体・・・。


なんと彼女は、なぜか机にかけてあった自前の杖を手に持ち始めた。なんで!?



『アイス・アハトゥング』

何かを唱え始めた・・・。

なんか、周りの空気が冷たくなっていく・・・。杖に何か集まっていく・・・!?何をする気なんだ!?



『フリーズ』

カチーン・・・。

こ、凍った!!?待ちに待った自分の料理を凍らせた!!?イカれてるぞこの女!!!

・・・・・幸い、「寒かった」規模が小さかったから、周りの人は気付いていないようだが・・・。



「あなたのことはまだ完全に信頼してないんです・・・。それに・・・

『アイス・アハトゥング』」


は!???まさか!!!


『フリーズ』

カチーン・・・。


・・・・あ・・・・・・あ・・・・・。

終わった。マジで終わった。俺が何をしたっていうんだ?俺はただ、純粋に飯が食べたかっただけ・・・。

今なら泣ける。本気で泣ける。もういいかな?泣いても・・・。


俺の肉が・・・。この女、マジで・・・・・・・。


「さあ、食べましょう!!!」


「は!???」


つい、声に出てしまった。仕方ないよね・・・。


「『隠しミッション』ですよ」


「隠しミッション・・・・・!?」


「期せずして私が『リベロ・ソレイユ』だという秘密を知られてしまった。それに、さっきも言ったように、私はまだあなたを怪しんでいます。


通常のミッションというのは、あなたも知っているように、冒険者たちが正規のクエストを受注することで請け負うことができるものを指します。

隠しミッションというのは、正規の方法では請け負うことができない、一部の者しか知らないものなのです。

この隠しミッションに成功すれば、あなたの『リベロ・ソレイユ』への入団を許可します!

逆に失敗すれば・・・・・・・ね・・・・・?」


「えっ・・・・・・・」


「命が惜しければ、ミッションを成功させてください!

我々以外の人間は、この世界に隠しミッションなるものが存在することすら知りません!

もちろんその報酬もです!

隠しミッションを制覇し、我々とともに世界をも制覇したくはないですか!?」



「・・・・・・!」


怪しい。怪しい・・・・・・けど・・・・・・。もしかしたら、だ。

よくわからないが・・・・・・・・・もしかしたら・・・・・・・俺が求めていたものは・・・・・・・。


「魔法『心の眼(マインズ・アイ)』で見てみたら、この肉の中、明らかに虫が入ってます!我々無祝者への嫌がらせのつもりでしょう。

・・・が、食べられないほどのものではありません!

調理済みの肉を使って我々を侮辱した彼らを、凍らせた肉を食べることで逆に侮辱してやりましょう!さあ!

今回の隠しミッションは、『この場の空気を支配すること』です!」




「・・・・・・・・・・・」




よくわからんけど、とりあえず食いたくね~~~~~~!!!!!!





























































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