第8話 ムラムラする旅路の夜
この日、俺たちはエメラルド東大町から旅に出た。
また、落下から耐える空の旅になるかと思いきや、飛行は妖精霊族しか使えない独立能力であり、妖精霊族でも司っている地域でしか飛行は出来ないということだ。
つまり、ここからはエメルの範囲外での旅となるので、飛行は使えない。(たまに使えることはあるようだが、一生に一度あるか、ないかレベルに稀なケースらしい)
つまりは、ここからは地上を歩く過酷な旅となる。
地上には、それはもう凶暴な魔物だっているし、色んな事件があるのだ。
そんな命からがらな旅が待っていると……思っていた。
「龍弥様!無属性竜です!」
「スペシウム光線!!」
無属性竜は一瞬のうちに灰となった。
そうだ、最近の俺のへっぽこさでつい、忘れていたが、俺、最強だったのだ。
「ずいぶん、特殊能力の扱いにも慣れてきたな」
今や、剣に火炎魔法を走らせて、炎の剣を作ることだって容易に可能だ。とくにそれに実用性はないが。
「まだ、他にも色々な能力があるので、どんどん使いこなしていきましょう!」
「お、おう……」
なんか、ゲームのチュートリアルみたいだな。
彼女の発言にそんな風に思いながら、俺は魔物の素材を収納魔法にしまった。
魔物の素材は買い取り屋に持っていくと買ってくれるので、こうやって回収していたほうがいい。エメルの持ち金がいくらあったとしても、やはり念には念を、だ。
「ところで、エメラルド東大町を出たことだが、次はどの町に向かうんだ?」
「次はオザスピス村に行きましょうか。エメラルド国の隣国であるニアバギミア王国の端に位置する村。村という割には結構大きいです。ニアバギミア王国は自由に立ち入り可能な良い国です」
「なるほど……」
「ちなみに、ここはもうニアバギミア王国ですよ」
もう着いとったんかい。
「ところで、オザスピス村はどんな村なんだ?」
「多種多様な種族が入り混じって、共に暮らしている村です。人間、妖精霊、魔族(良)、等、様々な種族がいます」
なるほど、まるでアメリカのような村だ。
*****
そして、夜。俺たちは当然、焚火を焚いて、野宿をしていた。しかし、今日は妙に眠れない。何故だろう。
理由は自分の身体に訊けば、すぐにわかった。俺は今、ムラムラしていたのだ。
この身体、何かと面倒で、セックスは出来ないのにも関わらず、性欲は溜まるのである。まずい、明日の為にも何とか寝ないといけないのに、下半身が暴走して、落ち着かない!!
「どうかしたのですか?」
寝ていたエメルが俺に声をかけた。
「い、いや……何でもない!!」
「そうですか?その割には、ずいぶん落ち着きがない様子で……」
「本当に……大丈夫だからぁ……」
くそっ!いっそ殺してくれ!いや、やっぱり死ぬのはいやだな。
本当にそう思っているのであれば、俺はこのまま無言でエメルを襲い、安らかに死ぬことだろう。
しかし、今は理性が何とか抑えてくれている。何とか、ギリギリだ。
でも、これ、明日には爆発しそうだな……。今日のうちに何とか解消しておかなければ。
「もしかして、龍弥様、溜まってるんですか?」
エメルはムクっと起きあがって、そう言った。
───まずい、気づかれた。
「そんなときは……」
「私を使ってください♡」とでもいうのだろうか。しかし、それは困る。ここで彼女に脱がれたら、リアルに襲いかねない。
「これを使ったらどうです?」
エメルが取り出したのは、「エロマンガ」であった。しかも、何故か百合の。
「エメル、なんでこんなもの持ってるんだ?」
「エメラルド東大町で一応買ってたんですよ。龍弥様、この世界に来てから。一回も出してないから、次の旅の途中で限界を迎えるかなって」
それで、その予想は見事に的中したということか。
「とりあえず、助かる……あと、一つ、見るなよ!」
「良いじゃないですか。街の宿屋でみたこと見たことありますし。
ああ、あの宿屋で女に襲われたときのことか、やめろ、思い出させるな、あれは結構トラウマなんだよ……。
そんな感じで、俺は百合のエロマンガを持って、茂みに隠れて、致した。
*****
それは、もう、快晴と言わんばかりの青空の朝であった!!!!!
太陽が照らす平原を俺たちはトボトボと歩いていた。そんなとき、ゴブリンたちが何かを囲って盛り上がっているのが目に見えた。
「何だあれは」
「何か、獲物でも見つけたのでしょう。どうしますか?」
「分からんが、素材は欲しいな」
しかし、あそこまで移動するのも面倒くさい。俺たちは面倒なことは大の苦手だ。
そんな時に使えるのが……。笛だ。
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
俺は息を思い切り吸って、笛を通じて、大音量を奏でた。
ゴブリン一同が俺たちの方を向く、俺はそいつらに、堂々と挑発をした。
数分後
俺たちのまわりにはゴブリンの死体の山が築かれていた。俺たちはその死体から、必要な素材をはぎ取り、他は腐って、見るに堪えない姿になるもの気が引けるので、焼却しておく、別に焼却してもいいし、放置しても微生物が分解してくれるらしいのだが。
「それにしても、アイツらは何を囲んでいたんだ?」
「おや、どうやら、小さな女の子のようですよ」
そこには、涙を浮かべうずくまっている、青髪の少女がそこにいた。