第13話 スライムの噂する泉
皆さんは「僕は悪いスライムじゃないよ!」をご存じだろうか。
某有名RPGにて使われた有名なフレーズで他ファンタジー作品でも広く使われている。
例をあげるので挙げるのであれば、あの有名な転生スライム系なろう小説でも使われたということは周知の事実であろう。
ふと、考えてみれば、悪いスライムとはどのようなものかと思ったことがある。
彼らが言っている「悪いスライム」というのはまさに「人間に危害を加えるスライム」のことだ。
しかし、それは人間から見たら「悪いスライム」であるが、スライムからみたら見たらそこまで悪いスライムではないのではと俺は思う。
スライムから見たら人間は「悪い人間」だ。
何故なら、スライムは「経験値稼ぎ」という人間の自己欲のせいで仲間が狩られ続けているのであるから。
そして今、俺たちの目の前にいるこのぶよぶよとした触感が愛らしいこの生物はまさにそれであった。
「ぼくはわるいスライムじゃないよ!」
『翻訳魔法』をかけられたスライムは突然そんなことを言った。
「いきなりなんだ……?」
「いや、有名なフレーズだと思って、言ってみようかなと」
勿論、それは某RPGの有名なフレーズだから知ってることには知ってはいるが……。
何故、この世界のスライムがそれを知っているんだ?(特に深い意味はない)
「ところでいきなり出てきてどうしたのですか?冒険者の前にこんな堂々と出てきたら、狩られても何の文句も言えませんよ?」
エメルがなかなかえぐいことをスライムに言う。
まぁ、正直こいつが出てきたときに一瞬臨戦態勢にはなったが。
「えっと、実はお疲れの旅人さんにオススメのスポットを紹介しようと、勇気を出して、ここに立った所存なのです!」
これは怪しいのだろうか……。
「で、そのオススメスポットってなに?」
ルミアが興味津々にそのスライムに訊ねた。
どうやら結構興味があるようだ。
「それは……妖精霊族必見!常温魔力癒泉ですよ!」
「「いきましょう!!」」
俺の仲間にいる妖精霊族が趙ノリ気だ。
「え……」
俺はそれにちょっと困惑してしまった。
「ハイ、二対一ですね。じゃあ、案内します!」
そう言うと、スライムはその柔らかいほぼ液体状の体を自由自在に変形させて、立派な馬車……違う、車をその身体で作り上げた。
「しかしなぜにデロリアン……」
俺はその古い車を見ながら、ただ疑問を持った。
*****
「この車は私スライム自身が運転しますので、どうぞ寛いでいてください!」
狭いデロリアンの中に入ると、どこからともなくスライムの声が聞こえた。
「一体これは……」
「この能力は自由変形能力っていう魔族スライム種の一部が使える独立能力ですね。能力の内容はこの通りです」
エメルは粛々と解説しながらこのデロリアンを「この通り」の素材として示した。
まぁ、彼女が言っていることが意味することはこの自由変形能力は独立能力であるから特殊能力の能力形成には組み込まれていないということだ。
「ところで二人が行くって即決していた常温魔力癒泉ってなんなの?」
「では解説してあげましょうか……」
そう告げたのは妖精霊でも何でもないデロリアン型をして、現在自らの巨体を動かしているスライムであった。
「まぁ、簡単に言えば、常温魔力癒泉は妖精霊に超適応している温泉ですね」
「つまり妖精霊にとっては温泉よりもこの常温魔力癒泉のほうが気持ちいいと?」
「その通り」
なかなかに分かりやすかった。
つまり妖精霊用の温泉ということか。
「というわけで、そろそろ着きますよ!」
そこはもう山奥である。
空は結構薄暗い。
そして、そこには木造建築の建物があった。
「ここがそれ?」
「ハイ、『ルビウス火山近辺魔力泉旅館・蛇精』です」




