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Oh mein Gott!  作者: クマ太郎
3/3

プロローグ~いなくなったはずの親友から電話がかかってきた③








……あれから里桜の助言に従い、私はこの世界でお世話になっているらしい施設へ無事に帰宅した。

スマホに登録してあった児童養護施設は、見たことも聞いたこともない名前の施設で、番号も違っていた。


先生も、知らない先生しかいなくて……結婚して、翌日ドイツへ旅発つ予定だったオリビア先生はどこにもいなかった。






(そっか……もうオリビア先生には会えないのか……)



(先生のつくってくれたチキンスープ……美味しかったなぁ…)





「………てことは、私も行方不明者…ってことになってるのかな………」












そう考えると、オリビア先生に申し訳ない気持ちで一杯になる…

里桜だけでなく、おそらく私も突然姿を消してしまったことになるのだろう……


何故、今日だったのだろうか……明日であれば彼女は何も知らずに笑顔へ旅立てただろうに……


きっと、彼女を泣かせてしまっただろう…


たくさん心配をかけて、たくさん自分のことを気にかけてくれた大好きな友達……


最後の日は笑顔で『ありがとう』と言ってお別れしたかった………












「最後くらい、笑顔で別れたかったのに…………ごめんね、先生……」



























翌日、里桜から電話がかかってきた。






「希結ちゃん、荷造りしといて。今からそっちに迎えに行く」と………









そっちに迎えに行く……?


………え、つまり私…神奈川県に行くってこと…?








「いやいやいや、里桜!何考えてるの!旦那さんは?息子さんいるんでしょ?私をそっちに連れて行ってどうするつもり!?」



「大丈夫。昨日、龍次さんを説得した!生き別れになった妹同然の親友の子供がみつかったから、引き取って面倒みたいって…」




旦那さんは龍次さんというらしい。


そして里桜よ……誰が妹だ。どちらかと言えば妹ポジションは里桜の方だろう……





「………て、いや!無理あるでしょう!」



「大丈夫、信じてくれた!ごりっごりに話盛っといたから、泣きながら連れて帰ってこいって!!」



「どんな話したら泣きながら連れて帰ってこいになるの!?何て説明したの里桜!」



「恭介も、ついでに北海道土産買って来てって快く送り出してくれたよ!」





そして私の1つ下の息子は恭介くんというらしい。

彼の方は、割とどうでも良さそうだな………て、そうじゃない!





「いや、快くっていうかそれ………とにかく、駄目でしょ!絶対駄目なやつでしょ!!私嫌だよ、里桜の幸せな新婚生活の邪魔なんて!!」



「どこが新婚生活!話聞いてた!?希結ちゃんくらいの息子いるんだよ!全然新婚じゃないから!!

それに、邪魔なわけないでしょ!ずうっっっと会いたかった親友が、今は手を伸ばせば目と鼻の先にいるんだよ!私何言われても絶対そっち行くからね!」



「何でそこまで…」



「ずっとずっと、希結ちゃんに会いたかったんだから!今度は絶対に何があっても離れないからっ!!」



「里桜………」






そうだ。今は家族が出来たとはいえ、ずっと彼女は独りぼっちだったんだ。

それも30年も……気が遠くなる年月だ。私の比じゃない………

不安がないわけがない。知らない人間しかいない中、やっと私と再開できる状況になったんだ。






(私、恥ずかしい…自分が寂しいばかりで…里桜の気持ちまでちゃんと考えてなかった)



(里桜だって寂しかったんだ。私に会いたいと思ってくれていたんだ……)



(それに、私だって………里桜に…会いたい……)




「ごめん、里桜…私も…」



「てことで、もう飛行機乗り込む時間だから。また後でね」



「……えっ!?ちょっと里桜……」










ぷつ… つー… つー…











(電話、切られた………)



(ええと……旦那さんが龍次さんとやらで、息子が恭介くんってことか………)



(龍次さんも、恭介くんも、気の毒に………)



(高校受験だって終わったのに……今更どうするつもりなんだか………)









………思い出してきた。里桜は、思いついたら猪突猛進…槍が降ろうと意見を絶対に曲げない頑固者だ。

彼女は普段気が弱いくせに、時折私でも驚くほど強くなる時がある。



それをやると決めた後の彼女は、周りがどんなに無理だと言おうが…何があっても確実にやりとげてきた…

昔から賢く、大人でも舌を巻くほど弁の立った彼女は…おそらく恐ろしい手練れに成長していることだろう……


きっと彼女によって、この後施設関係者全員…話術によって説き伏せられるだろう。

受験も終わったのに、今更高校はどうするんだとか…そういう話もきっと、里桜には何か考えがある……


そして…鋼の意思を持つ彼女に、私はほぼ確実に、強制的に神奈川県へ連れて行かれる……









(…人生、あきらめて流れに身を任せることも大切だよね……)




残った時間で私は、持って行く荷物をまとめた。


そして……里桜が納得の出来る形で、これから何とか里桜の家族に迷惑がかからないための最善の策を練ることにした。



「えー……神奈川県って、どんなところかなぁ……今後、独り立ちってなるといくらかかるのか……バイトでも始めるかなぁ………ネットで調べておこうかな…」








まだまだ頑張るぞー!おー!

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