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 八年前の一月某日。

 その日の朝もセフィロートのニュースから始まった。


「六ッ菱重工によって建設されたとされる軌道塔『セフィロート』による制宙権独占問題について、国連議会に召還された六ッ菱グループ総帥・六ッ菱真理子氏と首脳部は『どの企業でも使う事のできる二号塔を六ッ菱が無償で建設する』事で合意しました。二号塔の建設予定地について国連は『今後の協議によって決定する』としていますが、各機関の専門家によりますと『建設地によって各国にもたらされる利潤に大きな差が出る為、話は当分まとまりそうにない』と、二号棟建設はまだまだ先の事になりそうです。

 続いてもセフィロート関連のニュースです。軌道塔『セフィロート』による空域、及び日照権の問題についてモルディブ政府観光局は──」


 その年の始め、世界は騒然となった。

 赤道直下のとある島に、突如として塔が建ったのだ。塔と言ってもそんじょそこらの塔とはワケが違う。

 静止軌道点──地球の重力と遠心力とが釣り合う点──のおおよそ二倍、全高約七万二千キロメートルという、文字通り地上と宇宙を繋ぐ塔だ。報道では「軌道塔」と呼ばれているが、軌道エレベーターと言ったりもするらしい。

 六ッ菱という巨大企業が建てた「セフィロート」という名のそれは、中の真空トンネルを自走式のが昇降するというから、エレベーターというよりはチューブに近い。トンネルは登りと下りで二通路があり、それとは別に外壁に備えられたリニアレールを客車が走るのだという。

 とにかく、そんなバカでかい塔がたった一夜にして建った。

 けれど、それをどうやって建てたのか。その方法は「企業秘密」だとして、六ッ菱は未だ明らかにしていない。

 そのお陰で、今でも建設方法については憶測が飛び交っている。やれ魔法だの、やれ宇宙人との契約で得たテクノロジーだのと。

 けれどその、軌道塔の存在がオカルトや夢幻の類でない事だけは確かなのだ。

 現にその体躯はその日から十年以上を経た今でもインド洋のど真ん中に悠然と聳え立ち、宇宙へ物資を送り続けているのだから。


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キネノベ大賞8
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