字が読めるということに感謝
自分が作った朝食のせいで、体力の大部分を削られてしまった。私のライフは残ってないわ!しかし、いつまでもこんな所でダラダラしていてはいけない。なぜなら私は、今日中にツケを払うというミッションがあるからです。朝食後の片付けは自宅警備員に任せることにして、さっそく働きに出かける。
「大六、後片付けは頼んだ。じゃあ、私は働きに行ってくるね」
「おう」
「たまには大六も、外に出かけてお日様の下を歩くこと。わかった?」
「気が向いたらな」
「あと、外行くついでに就活をして、金を稼いで、私に楽な生活をさせてください」
「気が向いたらな」
気が向かなくても働いて、といつもなら言うけど、一刻も早く働かなければならないのでサクッと家を出た。
――――――
この村は、あまり治安がいいところではない。それは誰の目から見ても明らかだと思う。まず、浮浪者や行き倒れている人の数が多い。またスリやかっぱらいによく出くわすから、財布はひもをつけて帯にくくりつけておかなければならない。また取った物を店頭に並べるからか、店に不釣り合いな商品が陳列されている、と思えば怪しげな薬や食べ物を裏で売買している。そうすると、うさん臭い商人や、人相の悪い人たちも集まってくる。そして何かもめ事があった時には、話し合いではなく、手っ取り早く暴力で解決しちゃおうって場所だ。
正直、こんなガリガリの小娘が働ける場所はないと言っていい。臓器を売るか、春を売るかしか金銭を得る方法はない。しかし私はとんでもなく幸運なことに字が読るのだ。あと、ちょっと教養もある。ここではほとんどの人は字が読めないので、それなりに私のスキルを必要とされる場面がある。定職には就けていないが、「なんでも屋」として必要とされる時に仕事をもらい、日々食いつないでいるのだ。
実のところ今日は、週に一度入れていただいている、金払いがいいバイトの日のだった。そのおかげで、朝食で削られた体力が全回復した。