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春の味覚汁だよ

 なんとか簀巻きから解放していただいた。私は、体中が砂まみれで悲しみにくれていたが、大六からの


「朝メシは?」


 と、無職かつ遅起きの人間とは思えぬふてぶてしい発言に、再び怒り心頭に発す。ギロッ、と睨んだが大六はどこ吹く風で、「この家の持ち主は誰だったかな」とサラリと痛いところをつく。確かに雨風が防げる家に住まわせてもらっているので、強く出られない。三年前に、裸ではないというただそれでけで、無一文でぶっ倒れていたのである。大六は、己一人でも狭い家に素性も分からない女をおいていて、自分は、タダで寝起きさせてもらっていて。改めて立場の弱さに泣きたくなった。泣かないけど。


「ぐぬぬ。あの男に呪いあれ呪いあれ呪いあれ~」


 ボソッと呪詛を呟いて、気分を晴らす。やっていることが陰湿だと思った奴は許さん。

 それでは気を取り直して、愛する旦那様のために朝ご飯を作るとしましょうか。鍋に半分くらい水を入れる。そこに外で摘んできたタンポポとノビルを投入し、塩をひとつまみ。最後に塩を入れるのが美味しくなるヒ・ケ・ツ。鍋を火にくべて水が沸騰したら、かーんーせーい。できた鍋は、部屋の真ん中に囲炉裏があり、そこへ運ぶ。家には一部屋しかない。そのため、必然的に囲炉裏を二人で囲んでご飯を食べることとなるのだ。私たちは、家では二人そろってからご飯を食べる。謎ルールだが、私が家で料理を作ると、自宅警備員の大六が寄ってくるので、自然とそうなってしまう。


「五月の味覚汁です!」


 作っているうちにだんだん楽しくなってしまった。朝ご飯はこれだけだが、今日もよくできている。お椀によそって、勢いよく大六に渡す。大六は無言で受け取る。


「「いただきます」」

「……グエッ」

「……おえぇ」 


 食べてみて気がついた。とんでもなく不味い。雑草がきちんと洗えていなかったのか、土の味がする。全部残したいが、今食べておかないと次はいつ食べ物にありつけるかわからないので、無理矢理にでも胃に入れる。大六は、「グエッ」と最初に言ったきり、表情も崩さず淡々と食べている。ヤダ、ソンケイシチャウ。

 自分で言うのもなんだが、私は料理が苦手だ。まあ自分で食べる分にはいい。しかし、大六は毎回被害を被っている。大六は他のものを食べるか、自分で作るかしたらいいのだが、外へ行くのは面倒くさいし、自分で料理は作れないとのこと。凄まじい無能。でも、文句も言わず食べてくれるから、それは少しうれしいと思う。

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