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Atlantis World Online -定年から始めるVRMMO-  作者: 双葉鳴
五章 お爺ちゃんと聖魔大戦
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クランメンバーズ8

 ジキンさんがもたついてる間に、マリンやユーノ君までもがベルト持ちになった。

 これは妻達は案外簡単にクリアしてしまったに違いない。



「お爺ちゃん、どうしよう?」


「大丈夫だよ、お爺ちゃんやお婆ちゃんだってクリア出来たんだ。確かに幻影や神格達の見た目は受け入れ難いかもしれない。けどね、スズキさんの親戚だと思えばどうだろう?」


「スズキ先生?」


「|◉〻<)キャピ⌒☆」



 そんなマリンにスズキさんは中腰でウインクしながら可愛こぶりっ子する。

 ルリーエの姿でなく、サハギンの姿のままでだ。



「先生、何やってるんですか?」


「|◉〻◉)何ってマリンさんの緊張の糸を解いているんだけど」



 ジト目で見つめるユーノ君へ、至極真っ当に返事をした。

 これで平常運転なのだから諦めなさい。付き合うだけ損だよ?



「そうだ、マリン。君たちの周りで他にベルトを持った子に心当たりはない?」


「他に? あ、そういえばサクラ君が手に入れたって自慢してたよ」


「はて、サクラ君?」


「一度ご一緒してますよ。ほら、空歩の称号を手に入れた時の」


「ああ、マリンの事が気に入ってる彼か!」


「別に私達そういう関係じゃないよ?」


「わかっているとも。サクラ君には悪いけど、わたしはマリンの味方だよ?」


「うん!」



 私達の語らいを終えるまでたっぷり待ってからユーノ君が切り出す。

 それが断片を集めるよりも先にやっておくべきことがあるかの確認だった。



「そうだねぇ、君達古代獣討伐はどこまで進んだ?」


「まだ4を終えたところです。飛行タイプのリンドブルム」


「ユーノと一緒にアトランティスのテイマーになったんだよ! 私は手数を。ユーノはデバフメインでね! 空の称号とかもとって、あれから戦略の幅が凄く上がったんだ!」


「へぇ、それは凄いな。お爺ちゃんが見ない間に随分強くなったんじゃない?」


「最先端にいるアキカゼさんに較べたら全然ですよ。ね、マリンちゃん?」


「うん! 早くお爺ちゃんに追いつけるように頑張ってるよ!」



 活発な笑顔の孫にほっこりしながら。

 じゃあもし向こうに行くに至ってどのようなことができるようになるかのおさらいをする事にした。


 妻達は戦闘もできるがどちらかと言えば職人系だ。

 アイドル活動はマリンもしてるけど、人前で歌うのまでは恥ずかしくなるのかいつものマリンらしさは発揮できなかった。

 やはりAWOでのアイドル活動といえば、ダンジョンアタックの方が得意分野。


 ならば、と私も4の街の古代獣にタイムアタックを仕掛けるべく参戦する。

 一応事前確認して配信の準備も仕込んで、ジキンさんもどうかと誘う。

 アイドル活動を頑張ってもなかなか開花しないカーシャ君に何かきっかけが生まれたら幸いだ。



「どうせなら孫のケンタを誘おう」


「ケンタ君?」


「あれから強くなってそうだね!」


「うんうん。マリン君に触発されてね、うちの息子……金狼から直接指示を受けて修行をしたらしいよ。今連絡を取ったら予定は空いてるらしい。呼んでも大丈夫かな?」


「こちらは全然」


「あの時は全然足手纏いだったけど……」



 ユーノ君がマリンへと目くばせする。

 それを受け取ってマリンは大きく頷いた。



「うん、今ならあの時以上に活躍できるから。お爺ちゃんも期待しててね?」


「それは楽しみだ」



 少しすると、待ち合わせした場所にケンタ君が現れた。

 種族進化したのか、あの時ヤンチャだった相手と同一人物とは思えないくらいに落ち着いていた。

 男子三日会わざるば刮目して見よとはこの事か。



「じぃじ、おまたせ」


「やや、ケンタ!? その腰に巻かれた立派なベルトは?」


「多分じぃじが思ってる奴。親父にも言われたんだ。それを力とするかどうかはお前次第だって。だから俺は……これを糧にするべく精進してるよ!」



 サッパリとした笑顔。ますますイケメン度合いが上がってるね。金狼君の子らしい。ジキンさんと本当に血が繋がってるか疑わしいくらいだ。



「見事に全員が魔導書陣営とは……」


「まさかじぃじにまでついてるとは予想外」


「|◉〻◉)犬のじぃじ、予想外だってwww」


「よしなさい、ケンタ君は古代獣の方はいくつかクリアしてる?」


「パーティ組んでなら何回か。親父がムーだから俺もムーだけど平気?」



 それは巨大化して戦うことを意味していた。



「心強いよ! ね、ユーノ?」


「うん、よろしくね、ケンタさん」


「今まで通り呼び捨てでいいって。これから一緒に戦うんだしな?」


「はい……」



 おや、ユーノ君の様子が?

 おやおや、これはこれは。



「何気持ち悪い笑みを浮かべてるんです?」


「この人は察しが悪いですね。鈍いんですか?」


「誰かと違ってデリカシーを気にするんです」



 ニコニコとしつつも、視線を切り結んだ。

 相変わらず口論が止まらない。誰かツッコミを求む!


 そんな私に、スズキさんがカンペに『巻きで』と書いて私たちに見える位置で掲げた。

 どうやら悪ノリがすぎたらしい。



 やってきましたフォークロア。

 相変わらずレムリア陣営に秒殺されてる可哀想な古代獣が居座る大地。しかしながらそれ以外の陣営には順調に勝ち星を拾っているらしい。



「所詮、空を飛ぶだけの鳥。僕のメカで叩き落としてあげますよ!」


「あ、ジキンさんはメカ禁止で」


「なんでですか!?」


「だってこのままいくと一生神格召喚に辿り着かないじゃないですか。ダメですよ? もう少し信じてあげないと。こればっかりはカーシャ君より、あなたが原因の気もします」


「お爺ちゃんもテイマー封印?」


「それもいいけど、レムリアの器も封印しようかな」


「それ、必殺の武器なんじゃ?」


「みんなが使ってないのに私だけ使うわけにいかないでしょ? あくまでメインはマリン達だ。私達は死なないように逃げつつ、サポートするよ」


「じぃじもできるのか?」



 ケンタ君からの期待に満ちた瞳を向けられ、ジキンさんは当たり前だとも、と安請け合いする。

 本当、孫の前でいい顔をしたい年寄りが多すぎる。

 私も人のことを言えないけどね?



 さて、そんなわけでカメラを回す。



「こんにちは、アキカゼ・ハヤテです」


「|◉〻◉)助手のスズキです」


「マリンだよー!」


「ユーノです」


「ケンタだぜ?」


「そして私がジキンだ。マスターとご一緒するのは古代獣ヤマタノオロチ以来でしたかね?」


「多分、そんな感じ」


【乙ー】

【わこつ!】

【ずっと待ってたよー】

【みんな早いな】

【今回は何を配信?】

【メンツでお察し】

【仲間内での攻略かな?】


「今回は孫と一緒に古代獣のリンドブルムを倒していくよ」


【今更ですか?】

【弱いものいじめやめてもろて】

【それよりドリームランドの情報を!】


「そっちは向こうに渡ったプレイヤーに頑張ってもらうとして……わたしはやりたい事を優先するよ。と、言っても最終的には向こうに行くんだけどね」


【どういう事?】

【あ!】

【どうした?】

【みんなベルト巻いてるやん】

【は? そんな偶然だよ】

【第三世代で巻いてる子いたっけ?】

【朗報! 銀姫ちゃん選ばれる】

【うぉおおおお!】

【面白くなってきたー!】



 荒れ狂うコメント欄。

 そして何故かサングラスをかけたスズキさんがまたしても私やカメラに向けてカンペを掲げた。



【リリーちゃんwww】

【普段はお前がボケ役だろう?】

【そうか、誰もツッコミがいないからあえてツッコミ役に?】

【秒で飽きる定期】

【一つ不安なのが、全員魔導書陣営っぽい事】

【はぁ? それがどうし……あっ(察し)】

【SAN値チェック警察だ! ここでSAN値チェックが行われると聞いてやってきた!】


「SAN値チェック?」



 マリンが不思議そうに首を傾げた。

 記載されてるステータスに乗せられてるのは正気度の方だ。

 急にSAN値だなんて言われてもわからないものね。



「ちょっとびっくりしたり、ドキドキした時に失うものらしいよ、マリンちゃん」


「へぇ、ユーノ物知りだね!」


「俺は知ってたぜ」


「ケンタ、だったら真っ先に教えてあげなさい」



 一人満足げに呟くケンタ君へジキンさんが嗜める。



「いや、俺が役割取るわけにもいかんだろ? 二人には二人のペースがあるからな」



 マリンとユーノ君のコンビネーションを見越しての配慮だった。マウントをとっていたのは他ならぬジキンさんの方で、羞恥心に塗れた犬獣人が出来上がる。

 奥さんにも罵られ、孫にも言い負かされ。

 いよいよ背中に哀愁が漂ってきたぞ。



「はい、話が進まないのでこれでお話はおしまい。取り敢えず攻略は孫達がメインで、私達はスキルのみを用いて回避に専念するよ」


【えっっ!?】

【縛りプレイっすか?】

【ジョブどころか神格まで縛るとか舐めプどころじゃないでしょ】

【レムリアが秒殺してると言っても、あれはレムリアの器ありきの話ですよ?】


「だって簡単に終わったらつまらないでしょ? 私はいつも通りカメラマンに準じていますよ」


【巻き添えをくらったサブマスター、死ぬんじゃ?】

【メカニックにメカ禁止は死ねって言ってるようなもん】

【アキカゼさんだって同じルールでやるんだぞ?】

【標準装備にショートワープ持ってる人と比べられても……】

【あ、霊装?】


「流石にそれを縛るのは可哀想だし、ありで」


【普通に陣営戦始まる前の状況で討伐か】

【これ、スキルのみだと1000人規模のレイドに匹敵する難易度なんだが?】

【それでもアキカゼさんなら! アキカゼさんならやってくれる】

【期待】


「|◉〻◉)僕も頑張りますよ」



 いつになくやる気でシュッシュと槍を突く動作でやる気を示すスズキさん。

 そして私達の前に現れたリンドブルムは、上空からこちらを見下ろすなり急降下してくる。

 このまま居座ったらペシャンコだ!


 そんな時、すぐ横から声が聞こえた。



「やれやれ、最初からこの切り札を切る羽目になるとは。ダブルスキル〝金剛〟+〝金剛〟、霊装〝鋼の巨神〟」


「じぃじ!」


「行くぞ、ケンタ!」


「おう!」



 ケンタ君が巨大化する。そしてリンドブルムに祖父と孫のダブルラリアットが炸裂した!

お読みいただきありがとうございます。

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