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プロローグ:邂逅-madness visitor

 ―――何が起きたか分からなかった。

 壊れた電灯がチカチカと明滅し、とあるアパートの一室を照らしている。

 そこはこの世の地獄だった。


 腹を裂かれて中身をぶちまけた女性。男性とおぼしき死体は首から上を無くし、紅い液体を延々垂れ流し続けている。

 その中心に少年と少女がいた。


 黒地に紅いラインが幾つも入ったゴスロリ服。肩よりも長い灰色の髪と異様に白い肌、闇を称えて光る深紅の双眸。

 ただでさえ異様な容姿の少女は2人の人間を惨殺し返り血を浴びて笑っており、ますます怪異な雰囲気を醸し出していた。

 対する少年は両親を殺されたショックから顔も上げられず、俯き震えるばかりである。


 開け放たれた窓から月明かりが部屋に降り注いでいる。緩やかな春風が抜け、血と腐臭を沸き上がらせた。

 異質な、けれども幻想的な美しさが漂う光景。生の季節に吹く死の風に華奢な身体を任せる少女もまた、妖花のような美を誇っていた。

 少女は感極まったように泣きそうな声で言った。

「ずっとずっと会いたかったよ。あきちゃん」

 死人同然の顔で少年は少女を見上げる。目が離せない。ほとんど思考はできないが、この少女に何か見覚えがあった。

「ゆっくりしていきたいけど、私には時間がないの。また会いに来るから。待っててね」

 そう言って少女は名残惜しそうに姿を消した。

 静寂が辺りを包む。

 少年は呪縛から解放され再び頭を垂れた。


 少年の視界が歪んでノイズが混じる。部屋の色々なモノが消えていく。

 様々な家具、撒き散らされた両親の欠片、床だけに留まらず壁さえも塗装している2人分の血液。

 それは混乱の極みが引き起こした現象か。はたまたこの悪夢の続きなのか。

 考える暇もなく少年の意識は黒に閉ざされた。



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