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新星のアイオーン  作者: ネツアッハ=ソフ
学園編
7/52

閑話、初恋は嵐の如く

 俺の名は四条アマツ。ごく平凡(へいぼん)な家庭で生まれ、ごく平凡な家庭で育った普通の少年だった。


 そう、普通の少年だった筈だ。しかし、世界が覚醒(かくせい)の時代を迎えた事で俺の人生は狂った。人類が固有宇宙という名の特殊能力に目覚めた事で、俺の家庭は容易く瓦解(がかい)した。


 俺の父親は固有宇宙の研究にのめり込み、家庭を顧みなくなった。元々病弱だった母親は、能力の負荷に耐え切れずにそのまま亡くなった。俺の人生は、固有宇宙によって滅茶苦茶になった。


 最後まで、母親は何も(うら)み言を言わなかった。父親も、結局帰っては来なかった。


 ・・・俺の家庭は、固有宇宙のせいで崩壊(ほうかい)した。


 最初は、固有宇宙や覚醒の時代を恨んだ。世界を恨んだ。こんな世界など、(ほろ)びて消えてしまえとさえ思う事すらもあった程だ・・・しかし、ある日俺の後見人になったネメア先輩は言った。


「人は何で固有宇宙に目覚(めざ)めたんだろうな?」


「知らねえよ、そんなの。俺に解る訳がねえだろう・・・」


 当時、やさぐれていた俺はそう投げやりに答える。本当に、当時の俺は全てがどうでも良かった。


 灰色(はいいろ)の人生。そういう比喩(ひゆ)もあるが、俺の人生は本当に灰色に映っていた。本当に色あせていた。


 そんな俺に、それでもネメア先輩は愉快そうに笑いながら言った。心底愉しそうに。愉快そうに。


「それはな、きっと意味(いみ)があるからこそ覚醒したんだと思う。きっと、お前の家族が。お前自身が能力に目覚めたのも意味がある事だと思うぞ?」


「意味が・・・ね?じゃあ、その意味ってなんだろうな・・・」


 いらだたしげに、俺はそう呟いた。当時は、本当にいらだっていた。何もかもが、(わずら)わしかった。


 いっそこの男を此処で殺してやろうかとすら思った程に。(あや)うかった。


 しかし、それに気付いていただろうに。ネメア先輩は楽しそうに笑っていた。


「さあな、こればかりはこの俺にも解らない。けど、それでもお前は覚醒するべくして能力に覚醒したんだとそう思うな、俺は・・・」


 そう言って、ネメア先輩は笑った。当時の俺は決して笑わなかった。けど・・・


 ある日、俺は出会(であ)った。その人と・・・


「・・・えっと、貴女(あなた)は一体?」


「ソラ・・・。ソラ=エルピス」


 俺の中に、(あらし)が駆け巡った。初めての感情に、俺の心は戸惑(とまど)いを覚える。しかし、不思議とその感情に不快感は覚えなかった。何だか心地良い感覚だ。


 一瞬でチンピラを叩きのめした少女は、俺に手を差し伸べた。俺は、自然とその手を(にぎ)る。


 呆然としている俺に、少女は何かを言っていたがよく覚えていない。一生の不覚(ふかく)だった。


 しかし、それでも俺は思う。俺の人生は、きっとこの少女と出会う為にあったんだと。


 俺は、この日初めて(こい)をした・・・人生で、初の恋心だった。

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