表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新星のアイオーン  作者: ネツアッハ=ソフ
世界終末編
45/52

3、永久不変の宇宙

 それは、簡単に言えば永久不変と呼べるだろう領域。無限の時を()ても変わらない。それ故秒を跨がずに急変していく物理法則の(あらし)の中、一切苦もなく立っていられる。


 簡単に説明をすると、だ。次々と変質をしていく法則の嵐に逐一(ちくいち)適応をするのではなく、ただその嵐の中でそれでも()を貫き通すという事。


 即ち、事象の嵐の中でたった一つの特異点(とくいてん)と化すという事だ。


 この僕、シリウス=エルピスが到達したのはその領域である。つまり、固有宇宙樹という究極の多様性宇宙を宿した上でその全てを以って不変(ふへん)としたのである。


 秒を(またが)がず次々と物理法則が変質していく事象の嵐、その中でそれでも僕は僕だと叫ぶ。


 それこそが、僕という人間が到達した極致(きょくち)である。


 言うのは簡単だが、当然それ程簡単な話ではない。文字通り、(いのち)すら砕くような大嵐の中でそれでも屈する事なく(ぼく)が己であると言い切る精神が必要だろう。


 それは、当然並の精神ではない。尋常外(じんじょうがい)の精神力を必要とする。


「しかし、()ずはお前から先だな………」


 そう言って、僕は悪魔Ωを見る。彼は既に、口から泡を()き狂気じみた笑みを浮かべて哄笑するのみの存在と化していた。明らかに、危険領域。


 しかし、それでもあの翼卵の(しゅ)はエネルギーの供給を止めない。それでも、彼に期待しその力を送り続けているのである。何故、其処まで期待するのか?一体何に期待しているのか?


 そんな事、最初から()まりきっている。


 それは、無論悪魔Ωの更なる覚醒をだ。僕が更なる覚醒を()たした、それ故きっと彼も必ず期待に応えて覚醒を果たす筈だ。いや、果たすに(ちが)いない。


 そう思い、期待を()せている。しかし、そうはならないだろうと僕は見ている。


 何故なら、彼は既に限界だからだ。もう、既に自我(じが)などほとんどありはしないだろう。


 それなのに、だ。


 それでもきっと、あの存在は期待する事を()めないだろう。それでもきっと愛する事を絶対に止めたりしないだろうから。だからこそ………


 だからこそ、もう楽にしてやるべきだ。そう思い、僕は一振りの剣を顕現(けんげん)させる。


 星魔剣(せいまけん)ΑΩ———


《っ、それは———⁉》


 僅かに驚いたような素振りを見せる翼卵の主。その反応は、まるでこの剣の存在を既に理解しているかのようである。まるで、僕がそれを所持(しょじ)しているのを見て驚いているような。


 一体何故か?しかしそれを考えている暇など今はない。


 悪魔Ωは星魔剣を構えた僕を見て野獣のように跳躍(ちょうやく)し襲い掛かった。しかし、その瞬間にはもう既に決着が着いている。それは即ち………


「さようなら、もうお前は(ねむ)れ」


「ぎゃ………がっ…………ぁ」


 真っ二つに両断された悪魔Ω。しかし、息絶えるその間際。確かに僕は見た。


 悪魔Ωの表情が、何処か安らかに笑みを浮かべるその姿を。ようやく安らかに眠れる事に心底から安堵しているかのように。穏やかな笑みを浮かべていた。


 或いは、


「………或いは、この悪魔(アクマ)もただ一人の人間として普通に眠りたかったのかもな」


 ぽつりと、僕はそう(つぶや)いた。


 ただ、普通の人間として。普通に死にたかったのかもしれない。それなのに、自分の本当の目的も願いも何もかもを見失ってしまった。


 そっと、傍に寄り添うように近寄るリーナの肩を(いだ)く。僕達の表情は、優れない。


 それはきっと、悲劇(ひげき)なのだろう。


 これ以上のない悲劇なのだろう。だからこそ………


「なあ、本当にこれで満足か?其処(そこ)のオマエ」


《………やはり、彼も駄目(だめ)でしたか。彼の件は私も残念に思います。しかし、それでも貴方は私の期待に無事応えて覚醒を果たしました。それだけは(よろこ)ぶべきでしょう》


「な、にが………」


《まだまだ貴方のような人物(ヒト)が居ることだけでも()れて本当に良かった。なら、きっと他の人も大丈夫だと安心出来ます。それだけで、まだまだ私も続ける価値(かち)がある。なら彼の犠牲もきっと無駄でも無価値でも無い筈ですから》


 その言葉に、僕はようやく察した。理解した。やはり、こいつは駄目(ダメ)だと。


 これは既に()わっている。もう、こいつは行き着くところまで行きついている。故にこれはもう此処で倒してしまわねばならないと。そう理解して、


()て」


 そう言い、僕に声を掛けてきた人物が居た。それは、僕も知っている人物だった。


 シークレット・チーフだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ