プロローグ
~さあ、終わる世界を始めよう~
世界の終焉。その言葉に相応しい光景だった。徐々に世界が喰われてゆく。徐々に世界が呑み込まれ消滅してゆくのが解る。俺達の前に、世界の終わりがあった。
暴食の固有宇宙。さしずめ、そう名付けるべき能力だろう。奴の固有宇宙は無制限にあらゆるものを喰らい呑み込んでゆく。あらゆるものを自身の糧へと変えてゆく。
ソラ=エルピスの”クトゥグア”も効かない。世界を滅ぼす業火は空間ごと喰われ消えた。
四条大地の禁忌の固有宇宙も効かない。命令を伝える音ごと喰われて消えた。
文字通り、奴の固有宇宙は全てを喰らい尽くす。文字通り、世界そのものすら喰らう。宇宙の全てを喰らおうと止まない食欲。それが、奴の固有宇宙の本質なのだろう。
そうしている間にも、世界が呑み込まれてゆく。世界が喰われてゆく。全てが、終わる。
それは、宇宙を無限に食らい尽くす悪魔。そう、奴は既に人間ではない。
もはや、奴は人間の範疇には居ない。カミラという人間は、暴食に目覚めた頃から———
———既に悪魔だった。
・・・・・・・・・
原初世界———とある座標にそれはあった。
それは、一言で言えば巨大な卵だった。幾重にも折り重なった翼で出来た巨大な卵。其処から尋常ではない強大な力が流れ出ていた。それを、シリウスとリーナは感じていた。
流れ出る強大な力は、それだけで周囲に意思の波を伝え世界法則を書き換える。感情の波がこの周囲の法則を狂わせ決して安定させないのだ。
それは、それだけで周囲に他者を寄せ付けない絶対防護領域となる。
常に物理法則が書き換わる空間は、其処に居る生命に適応を許さない。特定の法則に適応した瞬間には既に別の法則へと書き換わる。既に、リーナは体調に異常をきたしている。
シリウスですら、若干の不調を感じている。それなのに、だ。
そんな状況の中、悪魔Ωだけが悠然とその場に立っている。まるで、当然のようにだ。
それは、異常な光景だった。まるで、常に書き換わる法則そのものに適応したかのよう。
ありえない。それは、本当にあり得ない光景だった。それは、即ちこの悪魔が常に書き換わり続ける法則そのものに適応し続けるだけの力を示したという事。それだけの力を得た事の証拠。
恐らく、この戦いは一筋縄ではいかないだろう。そう、シリウス=エルピスは理解した。
そして、この戦いを終えてもまだ終わらないという事実も。




