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新星のアイオーン  作者: ネツアッハ=ソフ
対話編
40/52

6、夢幻世界

「ああ、あああ、あああああ、あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ‼」


 ラス=アルグルが、名状(めいじょう)しがたい絶叫を()げる。すると、彼女の精神波が世界を覆う。


 全てを、覆い尽くす。


 世界が変質していく。アルグルの絶叫と共に、世界が変質(へんしつ)していく。彼女の精神波が、世界を浸食して物質界を地獄(じごく)へと書き()えてゆく。今在る世界を、地獄へと変えてゆく。


 それは、まさしく固有宇宙の第二解放。ラス=アルグルの覚醒(かくせい)に他ならないだろう。変質してゆく世界法則に皆は苦悶(くもん)の声を上げる。世界法則が、地獄の(ほう)へと書き換わってゆく。それに、皆が耐え切れず苦悶の声を上げている。此処に居るだけで、生命を蝕む地獄へと変質していく。


 しかし、そんな中でも俺は平然と立っていた。俺は今、何かを(つか)みかけている。


 いや、(ちが)う。そうじゃない。そう、これは………


 それは何か?俺自身にも解らない。解らないが、それでも恐らくは俺の本質(ほんしつ)そのものが。


 そうだ、これは。いや、それも(ちが)う。それは、そうだ………


 もうすぐで、それが摑める気がした。あと、もう(すこ)しで。何かが(つか)める。


「あああ、ああああ、あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ‼‼‼」


 ラス=アルグルの(こわ)れた絶叫と共に、俺に地獄の法が襲い掛かる。それは、俺には彼女の悲鳴にも涙にも見えていた。そして、それは恐らくは(ただ)しい。


 この地獄は、彼女の悲鳴だ。彼女は、きっと子供のまま停滞(ていたい)しているのだろう。


 俺には彼女が泣きながら駄々(だだ)をこねる子供と同じに見えていた。


 いや、彼女の場合は実際に子供のまま成長(せいちょう)しなかったのだろう。


 だからこそ、全てはもう決定している。大人になっても、駄々をこねる彼女に説教をする。


 説教し、彼女を地獄から()き上げる。彼女を(なぐ)ってでも止める。


「お前も、もう泣き(わめ)くのを止めろ‼」


「ああ、うああ、あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ‼‼‼」


 俺の(はな)った一発の銃弾が、地獄を引き()く。続いて放たれる銃弾、何発もの銃弾が地獄を次々と引き裂き無力化していく。これが、俺の持つ固有宇宙の特性(とくせい)


 あらゆる固有宇宙の持つ世界観や宇宙観を貫通(かんつう)し無力化する。対世界特性。


 世界にはびこる理不尽を、地獄を引き裂く魔弾。次元貫通の魔弾の本質(ほんしつ)なのだろう。


 呆然と立ち尽くすアルグルを真っ直ぐ(にら)み、俺はそのまま次弾を()つ。


 これで、もう()わりにする。


「もう、お前も地獄で全てを(かた)るのを止めろ」


 そして、俺の放った魔弾がアルグルの頭部に命中し。致命的な何かを貫通して破壊(はかい)した。


 それは、アルグルの中にある地獄(せかい)の崩壊に他ならなかった。


 俺の魔弾が、彼女の世界を破壊した瞬間だった。


          ・・・・・・・・・


 倒れたアルグルを、俺は静かに見下ろしている。彼女は死んではいない。まだ()きている。


 俺が魔弾で貫通したのは、彼女(アルグル)の中の地獄。云わば彼女の世界そのものだ。


 つまり、簡単に説明すれば彼女の固有宇宙の根幹(こんかん)を成す世界そのものを破壊した。即ち彼女は自身の世界そのものを破壊されて昏倒(こんとう)しているに()ぎないだろう。


 ………そう、彼女は今昏倒しているに過ぎない。死んだ訳ではない。


 此処(ここ)で、余計な横やりさえ入らなければの話だが。


「っ、な………‼?」


「え………?」


 俺とソラの、呆然(ぼうぜん)とした声が上がった。


 ラス=アルグルは、その瞬間周囲の空間ごと渦を巻いて何かに()み込まれていった。それはまるで目に見えない怪物に()われてしまったかのような。そんな光景だった。


 そして、恐らくはその認識は正しい。そう、彼女は今食われたのだ。周囲の空間(くうかん)ごと。


 目に見えない力により周囲の空間ごと()われて消えたのだ。


「ラス=アルグル。俺の中で安らかに(ねむ)れ………」


 其処には、無表情(むひょうじょう)()つカミラの姿があった。

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