閑話、アマツの過去
それは、かつての俺の記憶。過去の残影———
まだ、固有宇宙が俺に発現して間もない頃。世界各地でいきなり発言した特異能力に混乱した人達が暴動を起こしたりしていた頃。俺は母さんと二人で暮らしていた。
というより、固有宇宙が発言してすぐに母さんは病に伏してしまった。医者は聞きなれない病名を告げていたけれど、俺はその原因を固有宇宙だと思っていた。
何故なら、母さんの固有宇宙は本人ですら把握出来ないものだったから。どんな特異能力を保有しているのかもそれがどんな力があるのかも、まるで把握出来ていなかった。
だからこそ、俺は母さんの病気の原因が固有宇宙にあると判断していた。
けど、母さんは首を左右に振ってそれを否定した。
「アマツ、人が固有宇宙に目覚めたのはね………きっと何か意味があるんだと思うの。だからアマツも自分の能力を否定するのは止めなさい。きっと、その力にも意味がある筈だから………」
そう言って、母さんは息を引き取った。最後まで、父さんは家に帰って来なかった。
きっと、母さんは最後まで自分に宿った能力を嫌わなかったのだろう。
嫌う事をしなかったのだろう。けれど、
「………解らない。解らないよ、母さん」
俺にはもう、何も解らなかった。何も理解出来なかった。
けれど、それでも母さんはきっと………
かなり短い………




