4、悪魔の生まれた日
それは、彼と彼女がまだ幼かった頃の話———地獄を切り開いて生まれた二人の悪魔の話。
彼らが生まれたのは、紛争地帯の中にあるとある集落だった。其処は、一言で例えればまさしくこの世の地獄だった。そうとしか言えなかった。
そんな中、彼と彼女は生まれた。この世の地獄に生まれた二人は、まるで引き寄せ合うかのようにすぐに出会う事となる。それは、まさに運命的であっただろう。或いは、因果の業か。
彼と彼女は、生きる為に何でもした。窃盗や殺人など、彼らにとっては日常の一部だった。
生きる為なら、彼と彼女にとって他者を害するなど苦にもならない。そもそも、彼らからすればこの地獄で生きるという事はそういう事だった。それしか、生きる方法が無かったのだ。
生きる為に他者を蹴落とす毎日。そんな日々に、変化が訪れたのは何時の日だったか。
そんな中、彼らの日常にある日一つの石が投げ入れられる事となる。悪魔が微笑んだのだ。
その者は、自身を悪魔と名乗った。純血の悪魔と。そして彼らはその者を悪魔だと信じた。
あっさりと、すぐに信じる事になった。
いや、信じざるを得なかったと言っても良いだろう。何故なら、その悪魔一人に手により永く続いた紛争は終結したからだ。全滅だった。壊滅だった。皆殺しだった。
この世の地獄は、更なる地獄により終結する事となった。
彼と彼女は悪魔に魅せられる事となる。そして、意図も容易く契約の書に判を押した。悪魔が差し伸べた手をそれぞれの想いを以って取ったのだ。
それが、彼らの原初の記憶。彼と彼女が悪魔となった日だった。
短い………




