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新星のアイオーン  作者: ネツアッハ=ソフ
対話編
34/52

1、輝く星空本部

 その後、俺達はフォーマルハウトとアルデバランの二人から輝く星空の本部所在地を聞いた。最初は二人も教える事を渋っていたが、やはりボスの身を(あん)じているのか最後には教えてくれた。


 俺とソラは、二人に礼を言いその場を後にする。二人は、一緒(いっしょ)に付いていく事を提案したが。


「いや、()いよ別に。これは家族(かぞく)の問題だから・・・」


「そうか、ならせめて気を付けてな・・・以前は本当に()まなかったな」


「良いよ、別に・・・」


 苦笑しながら俺はそれを(ことわ)った。これは、あくまでも俺と父さんの事だ。


 ソラはともかく、父さんとは家族(かぞく)として話をしたいと思っている。だから。俺とソラは二人で組織の本部へと向かう事にした。それが、俺なりの覚悟(かくご)のカタチだから。


 そう思い、屋敷(やしき)を出てゆく・・・


 ・・・ ・・・ ・・・そして。


 輝く星空の本部ビル。その所在地は意外な事に(わり)と近くにあった。都市部の中央近くに大きく聳え立つ天を()する巨大オフィスビル。実質(じっしつ)、そのビル丸ごと一つがその組織の本部だ。


 実質、というのはそのビルは表面上複数の企業(きぎょう)や会社が各フロアに存在しているからだ。そしてその企業や会社とは即ち、輝く星空の(うら)の名前でもある。つまり、偽名だ。


 そして、その本部は最上階に存在している。


 普段は偽装(ぎそう)の為に大手セキュリティ会社を(よそお)っているらしい。実際、セキュリティの為のシステムを組んでいるのはこの会社だという。それも、世界(すべて)を裏から操作する為の工作の一つだが。


 要は、世界のセキュリティシステムを(おさ)える事で全世界に監視網を構築しているのだと。


 他にも、世間を欺く為の偽装及び裏工作は数多くあるらしい。その数、約千通り。


 文字通り、世界規模で監視網が(きず)かれているという訳だ。なるほど、確かに驚異的だろう。その精密で緻密なシステムは、とても強固で堅牢だ。しかし・・・


 しかし、裏を返せば精密で誤差の無い堅固なシステムそのものが致命的な(すき)となる。何故なら裏を返せばその精密性そのものが、一部の狂いすら(ゆる)されないという事実だから。


 もし、その精密なシステムにほんの僅かな誤差(ミス)や致命的なバグでも発生しようものなら、恐らくそれだけで全てに狂いが生じる事になる。それこそ、ドミノを(くず)すように。バラバラと。


 次々と連鎖するようにしてシステムに狂いが生じる物だろう。


 だからこそ、精密なシステムを組む時は決して集中力を切らすべきではないのだ。一時も。


 今回の件で言えば、その誤差(ごさ)とは即ちアルデバランとフォーマルハウト。この二人の裏切りこそが致命的な誤差と言えるだろう。或いは、この二人の忠誠心の(たか)さ故に・・・


 いや、それは流石に過言か。恐らく、そんなモノでは計れない物があるのだろう。


 そう、俺は本部ビルに()かう道中思った。


「・・・・・・行こう、ソラさん」


「うん」


 ソラは、俺の言葉に力強く返事を(かえ)してくれた。それが、とても心強かった。


          ・・・・・・・・・


 さて、その頃シリウスとリーナはと言うと・・・


「・・・・・・リーナ、本当に良いのか?君は此処(ここ)で待っていても」


 そう問い掛けるシリウスに、リーナは微笑みながら首を左右に()った。そして、そっとシリウスの傍に寄り添うように()き付いた。それは、まるで最後まで(そば)に居たいと意思を示すよう。


 その姿に、シリウスは僅かに目を見開く。そして、僅かに安堵(あんど)したように笑みを浮かべた。


 それはきっと、二人だからこそ(わか)る。深く通じ合った二人だからこそ解る事なのだろう。故にこれは本来聞かなくても解る事だ。二人には、聞かずとも理解(りかい)出来る事・・・


「当たり前の事を聞かないで。私は、もう無銘(あなた)の傍から離れない。そう()めたから・・・」


「そうか。そうだったな・・・ありがとう」


 そして、背後に(ひか)える者に一つ命令を下す。


「そういう事だ、ステラ。俺達はこれから原初世界に向かう。お前はソラとアマツ君を頼む」


「・・・はい、了解(りょうかい)しました」


 ・・・直後、シリウス=エルピスとリーナ=エルピスの二人は忽然(こつぜん)と姿を消した。


 まるで、最初から居なかったかのように。その姿を消失した。


          ・・・・・・・・・


 そして、輝く星空本部ビル———社長室。其処(そこ)に、社長たる彼は居た。


 輝く星空の総帥(そうすい)である青き星のガイアこと四条大地は、まるで頭痛でも堪えるように額を押さえて脂汗を流していた。しかし、その口元は確かに()みを浮かべている。


「・・・・・・そう、か。息子(あいつ)が・・・来る、か。ぐぅっ・・・・・・っ」


 そして、やがて大地は暗く冷徹(れいてつ)な表情になる。まるで、先程までの苦しみの顔が嘘のよう。


 しかし、その額にはまだ脂汗が(にじ)んでいた。それは、まるで何かに必死に抗うかのよう。そしてそれは決して錯覚ではない。彼は今、必死に抗っているのだ。抗い、()り払おうとしている。


 精神支配から、必死に(のが)れようとしているのだ。しかし、現状それはとても難しい。何故なら彼に施された精神支配は緻密にして強固。精密にして頑強な支配力(しはいりょく)だ。


 そもそも、もはやもう自分自身で抗える領域(レベル)にはない。もう、全てが手遅れに近い。


 何故なら、彼の場合は何年も前から少しづつ支配(しはい)を受けていたのだから。少しづつ、まるで蜘蛛の糸で絡め取るかのように。少し、少しと本人ですら気付(きづ)かれないように。少しづつ・・・


 故に、気付いた時には(すで)に遅かった。精神の奥底にまで侵食(しんしょく)を受けていた。支配されていた。


 其処まで浸食を許せば、もう彼の固有宇宙でも解除する事は至難(しなん)だ。しかし、彼は抗う。


 他でもない、自身の息子(たいせつ)の為に。もう、家族を失わない為にも。それだけは、断じて許容出来ないからこそ魂を(けず)るように必死に抗い続けるのだ。しかし、それを嘲笑う者達が・・・


「何だ、まだ抗っているのか?傀儡(かいらい)の総帥如きが・・・」


「もはや、私の精神支配は完全に()まっているのにねえ?くすくす・・・」


 そう、他でもない総帥(ボス)に精神支配を掛けた二人・・・世界の全てを(てき)に回す者達。


 カミラとラス=アルグルだ。


「だ・・・まれ・・・・・・っ。貴様・・・ら、なんぞに・・・・・・っ」


「ああ、もうそういうのは()いから」


「ごっ‼?」


 激しい音が、室内に(ひび)き渡る。


 カミラは、あろう事か総帥である大地を(なぐ)り飛ばした。四条大地が、椅子(いす)ごと崩れ落ちる。そしてそれを醜い笑みで嘲笑う二人。その胸の内には、暗い愉悦(ゆえつ)の感情が。


 そして、必死に立ち上がろうとする大地をカミラは()み付ける。それも、ぐりぐりとその足で執拗にその誇りごと踏みにじる。その口元に、嫌らしい()みを浮かべて。


 外道(げどう)、此処に極まれり・・・


「お前は、自分の手で自分の息子(むすこ)を殺すんだよ。自分の手で、(あい)する家族をだ。嬉しいか?実に楽しいだろうなあそれはっ‼自分の大切なモノを、自分の手で(こわ)すんだよっ‼」


「い・・・やだ・・・・・・(おれ)は・・・俺、は・・・・・・」


 そして、とどめにカミラとアルグルは言った。自身の(ゆが)んだ欲望を。


 自分達の、真の目的(もくてき)を・・・


「そうして、お前が息子を殺して完全に()ちた時。その時こそ、真に俺達の計画は始動する」


「私達が、純血の悪魔(あくま)へと至る為に。高次の存在へと至る為に・・・・・・」


「その為に、お前達は生贄(いけにえ)になるんだよっ!俺達の崇高(すうこう)な目的の為になあっ‼」


 大地は、その顔にこれでもかと絶望(ぜつぼう)の表情を浮かべた。


 それは、自分の手でただ一人きりの息子の命を(うば)う姿を想像してしまったが故に。それ故、彼はあらん限りの声を張り上げて絶叫した。絶望の、断末魔(だんまつま)とも呼べる声を・・・


「き、貴様等はああああああああああああああああああああああああああっっ‼‼‼」


「ふっ、はは・・・あははははははっ。あーははははははははははははは、はははははははははははははははははははははははははははははははははっっ‼‼‼」


 それは、まるで悪魔の産声(うぶごえ)のような。醜悪(しゅうあく)でどす黒い嘲笑だった。

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