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新星のアイオーン  作者: ネツアッハ=ソフ
対話編
33/52

プロローグ

 第二解放の訓練(くんれん)を開始して、数日が()ぎ去った。それは、実にあっという間の事だった。


 俺は、屋敷の中庭でベンチに(すわ)りながら、独り考え事をしていた。固有宇宙第二解放の訓練を初めてまだ数日が過ぎたばかり。しかし、俺は()ってはいられなかった。


 もう、時間は残されていない。そんな、嫌な予感がしたから。俺は決意を(かた)める。


「そろそろ、行くか・・・」


何処(どこ)に行くの?」


 声がして、振り返る。其処には、ソラ=エルピスの姿があった。その表情は、(けわ)しい。やはり言わずとも俺の考えは理解(りかい)出来るらしい。やはり、ソラには(かな)わないか。


 まあ、理解は出来ても納得は出来ないようだけど。其処までは俺も(もと)めてはいない。故に、ソラに対して俺も即答する事が出来た。やはり、俺も意地(いじ)が悪いのだろうけれど・・・


 或いは、単なる意地っ張りか?まあ、其処はどうでも()い事のように思う。


「父さんに、()おうと思ってるんだ・・・」


「大丈夫なの?今会っても、殺されるかも知れないよ?」


 そうかも知れない。けど、それでも俺は父親(ちちおや)に会わなければいけない。


 そう、思っているから。だから、俺はソラを真っ直ぐに見詰(みつ)めた。


 覚悟はもう決まっている。とは、口が()けても言えないけど。むしろ、まだ父親に会うのは正直な所怖いけれども。それでも、俺はきっと父親に会わなければならないから。


 それだけの理由(りゆう)があるから・・・


 だから・・・


「それでも、俺は行かなければならないんだ。父親との関係を(もと)に戻す為に・・・」


 ———もう一度、父親(おや)を父親と呼べるようになる為に。もう一度、家族(かぞく)を修復する為に。


「その為に、父親と殺し合いになっても()いの?自分が殺されても、良いの?」


 理解(りかい)出来ない、そう言うようにソラは俺を見詰めてきた。無論、俺だって父親とは殺し合いになんてなりたくはない。それに、殺されたくもない。俺だって、(こわ)い物は怖い。


 しかし、俺は静かに首を左右に()りながらそれでも真っ直ぐにソラを見据えた。きっと、俺はもう先に進まなくてはならないから。もう、立ち()まる訳にはいかないから。


 だから、俺は言った。正直に、素直(すなお)な気持ちを打ち明けた。


「俺は、父親と殺し合いに行くんじゃない。只、親と息子として少し(はな)しに行くんだ」


 ———只、一人の息子として。父親と話しに行く。それだけだ。


「そう・・・、どうしても行くのね・・・・・・?」


「ああ、行くよ」


 そう、と。ソラは諦めたような(あき)れたような、そんな曖昧(あいまい)な表情で頷いた。


 そして、僅かに苦笑を浮かべて再び頷いた。


「解った、なら(わたし)も一緒に行くよ」


「・・・・・・え?」


「意外?けど、私にだって一緒に行く理由がある。私にだって、(ゆず)れないものはあるから」


 そう言って、ソラは笑った。それは、何処までも(つよ)い笑みだった。


 ———ああ、やはりソラには(かな)わないな。


 そう、俺は苦笑を()らした。何時まで()っても、ソラには敵う気がしなかった。


 其処は、やはり()れた者の負けなのだろうけれど、な・・・

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