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新星のアイオーン  作者: ネツアッハ=ソフ
輝く星空編
32/52

番外、フロイラインの巫女

 アンナ=シュプレンゲル———彼女は秘密の首領(シークレット・チーフ)と通じる巫女(みこ)である。


 そして、数多くの魔術師達と秘密の首領を(つな)ぐパイプ役だ。


 高次の霊的存在である秘密の首領は彼女を通じる事で、物質界(セカイ)へと干渉する。それは即ち、巫女である彼女の存在がなければ容易(たやす)く物質界に干渉できないという事でもある。


 そして、秘密の首領が物質界とのパイプ役として彼女を重用しているという事実は、即ち彼女がそれ程までに有能である事を意味しているだろう。そして、その有能さはこの状況下でも発揮された。


「はっ・・・はっ・・・ぜぇ・・・・・・」


 アンナ=シュプレンゲルは、()れた息を何とか整える。そして、状況を脳内で整理した。


 現在、アンナは悪魔Ωから必死に()げていた。彼女はフロイラインと()ばれた高位の巫女だ。


 故に、少しの間であれば悪魔の目を(あざむ)き逃れる事も決して不可能ではない。しかし、それはあくまで並の悪魔であればの話だ。今、彼女を()っているのは他でもないΩである。


 そう、彼の大悪魔。Ωである。


 早く、此処から逃げ延びて無銘へと(つた)えなければ。そう思った、直後の事・・・


 ぞくり・・・


 得体の知れぬ怖気(おぞけ)が、背筋を走り抜けた。そして、その直後。


「みぃ~つけたっ・・・」


「っ⁉」


 いつの間にか、すぐ(そば)にΩが立っていた。その顔にはにたにたと(いや)らしい笑みを浮かべて。その笑みはまさに生理的嫌悪感すら抱くだろう。並の女性ならば、卒倒(そっとう)してもおかしくない。


 しかし、それでもアンナは決して(くじ)けなかった。文字通り、強い意思でΩを(にら)み付ける。そんな彼女の姿に大悪魔は素直な賞賛を送る。心底(たの)しそうに、ぱちぱちと手を叩きながら。


 文字通り、愉悦(ゆえつ)に笑みを浮かべながら。


「面白い、その強い意思と勇気はまさしくアーカーシャ様の(この)みだろう」


「っ、お前は・・・一体何を・・・・・・」


「ふふっ、総てはあのお方の御意思(ごいし)のままに・・・だよ」


「ロード・・・アーカーシャ・・・・・・」


「そうだ。それから一つ、あのお方からのメッセージがある。心して聞くと良い」


「?」


 アンナが怪訝な表情をするものの、それを無視してΩは言った。


「私は全てを(ひと)しく愛している。故に、君の事も深く愛しているよ。けど、一つだけ・・・あの子が君をとても必要としている。その事実には素直に私は嫉妬(しっと)しているかもね?」


「・・・っ⁉」


 そう言い、Ωはアンナの頭へと腕を()ばす。彼女を始末すれば、彼を邪魔する者は居ない。


 だからこそ、邪魔者は早々に退場(たいじょう)して貰おう。そういう意思(あくい)を込めて・・・


 深い絶望(ぜつぼう)に染まったアンナの顔を、Ωは握り締め・・・


 瞬間、まるで幻影のようにアンナの姿が()え去った。それは、まさしく最初から其処にアンナなど存在してはいないとばかりの光景だった。そう、最初から其処(そこ)に彼女は居なかったのだ。


「ふっ・・・ふふふっ・・・、なるほど?俺はたばかられたか。それも実に面白(おもしろ)い」


 そう言い、大悪魔は愉悦のままに口の端を(ゆが)めた。それは、まさに恐るべき笑みだった。

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