8、悪魔とアンノウン
とある場所。何処でもあり、何処でもない空間にその存在は居た・・・
それは、まるで夜空の下の巨大な卵のよう。その傍に、悪魔Ωは居た。
其処は常時夜が広がっており、空には星々が瞬いている。いや、星に見えるのは全て多元宇宙。異なる物理法則に支配された異なる次元。固有宇宙とも異なる、別の法則の支配する超多元宇宙群だ。
そして、その超多元宇宙群が天空を星々の如く彩るその空間の中央に、ソレは在った。見た目はまるで幾重にも折り重なる翼によって形成された卵だろうか?
それは、夜空を彩る多元宇宙の星々に照らされて美しく白色に輝いている。そして、その傍にその悪魔は片膝を折り控えていた。まるで、その姿は神に仕える神官のようだ。
この悪魔の正体を知っている者からすれば、その姿は充分驚愕するにふさわしい場面だ。
しかし、この悪魔からすればこの態度はむしろ当然の事だ。そうしない事こそ、無礼に当たる。
何故なら、この翼の卵の内部に封じられた存在こそ、世界の真の造物主だから。そして、悪魔Ωが史上唯一己よりも格上の絶対者と認める存在だからだ。故に、この悪魔は膝を折ったのだ。
「ええ、ええ・・・解っております。状況は好調に進んでおりますとも。万事抜かりありません」
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「それは、わたくしにはもったいない言葉です。全てはわたくしが率先しての事ですから・・・」
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「っ、これは・・・‼ありがたき幸せにございます‼」
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「はい、これからもわたくしの魂は全てあなた様の物」
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「我らが創造主、ロード=アーカーシャ様」
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原初世界、とある場所・・・。其処ではシークレットチーフが天空を睨み付けていた。
「ふむ、動き始めたか・・・アーカーシャ」
シークレットチーフはそれを静かに察知した。運命の輪は静かに、そして確実に回り始めた。




