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新星のアイオーン  作者: ネツアッハ=ソフ
輝く星空編
25/52

6、幹部二人

 その日の夜、街の一角にあるとあるビジネスホテルにて。秘密結社”輝く星空”の幹部(かんぶ)二人は他に誰も居ない部屋の中で話し合っていた。話の内容は、即ち学園(がくえん)での出来事である。


「なあ、やっぱりこれは変じゃねえか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


 フォーマルハウトの言葉に、アルデバランは答えない。何かを思考(しこう)するように、じっと目を瞑り深く考え込んでいるのだ。そんな相棒の様子に、フォーマルハウトは僅かな不安(ふあん)を覚える。


 先程から、アルデバランは黙り込んだまま何も答えないのだ。故に、不安は(つの)るばかり。そろそろそれも限界に到達しそうであった。だから・・・


 思わず声を(ふる)わせ、張り上げる。


「なあ‼」


「ああ、解っているよ。俺だってどうすれば()いのかなんて解らねえよ・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


 相棒の言葉に、フォーマルハウトは(だま)り込む。そんな彼に、アルデバランは続けて言った。


「しかし、解った事もある。ボスは、あの方は奴等(やつら)によって操られているんだ」


「・・・っ‼」


 アルデバランの言葉に、フォーマルハウトは息を()んだ。そして、やがて(くや)しげに歯を食い縛る。


 そう、フォーマルハウトとアルデバランの二人は見ていた。学園での事件を(かげ)からこっそりと。それ故に二人は理解したのだ。この事件は裏で大幹部(だいかんぶ)、カミラとアルグルの二人によって操られていると。


 そう、総帥は既に操り人形と化していた。その事実だけで、はらわたが()えくり返る思いだ。


 しかし、(いか)りだけでどうにかなる程奴等は甘くはない。それ故の大幹部なのだから。カミラとアルグルの二人は、それ程までに強大な力を保有しているのだ。大幹部の肩書きは伊達(だて)ではないのだ。


 特にカミラ。彼の固有宇宙はこの宇宙すらも気まぐれに(ほろ)ぼして余りある。それこそ、一瞬で宇宙を跡形もなく消滅させてしまえる程には危険な能力(ちから)だ。


 だからこそ、どうすれば良いのか。(なや)む所だった。


「・・・・・・いっそ、あの少年達と手を()むか?」


「っ、しかしよアルデバラン?俺達、以前アイツに喧嘩(けんか)を売ってボコボコにしてるんだぜ?今更許して下さいなんて虫が()すぎねえか?それに、あの嬢ちゃんが(ゆる)さねえだろ」


「・・・・・・・・・・・・」


 アルデバランの言う少年とは、つまり四条アマツの事だ。二人は以前、彼を街中で襲撃して殺そうとした事がある。その時、一人の少女によってそれは未遂(みすい)に終わった。


 その少女こそ、ソラ=エルピス。シリウス=エルピスの一人娘だ。


 二人は身を持って知った。ソラの固有宇宙の力を。その出力の程を。彼女(ソラ)一人で、一国すら滅ぼせるだけの力を保有しているという純然たる事実を。身を持って知ったのだ。


 だからこそ、アルデバランもフォーマルハウトも何も出来ずに居たのだ。もし、それを度外視してアマツに近付けば今度こそソラの手によって()き殺されるだろう。それは願い下げだった。


 ・・・


 さて、これからどうするか?真相(しんそう)を知った今、ボスの元に戻るという選択肢は無い。しかし、だから裏切るなどと言う発想が湧く程に忠義が(うす)い訳でもない。つまりは手詰まりだ。


 そんな中、二人の耳に深い溜息の声が()れた。


「はぁ、そんな事だろうと思ったけどな・・・」


「っ、何者(なにもの)だ‼?」


 二人はぎょっとする。全く気付かなかった。どころか、全く違和感すら感じなかった。


 アルデバランは(さけ)び、同時に気付く。先程から、部屋の外から物音が一切しない。どころか、窓の外からも一切物音がしないのだ。二人は訓練を()んだ事で、常人よりもはるかに高い身体能力を持つ。


 文字通り、部屋の外から(かす)かな物音がしても察知可能だ。微かな気配の変化にも気付けるだろう。


 故に、ホテルの外で物音がすればすぐに察知(さっち)出来る筈だった。なのにだ・・・


 先程から、物音が一切しない。それも、不気味な程に。


「僕なら、ずっと此処(ここ)に居るぞ?」


「なに?・・・・・・っ‼?」


 気付けば、すぐ傍に一人の青年が()た。二人はこの青年を知っていた。


 それもその筈。この青年こそ、二人を撤退(てったい)させた少女の父親。無銘ことシリウス=エルピスだ。


 その(あお)い瞳は、神秘的に輝き人外の気配と威圧感を(まと)わせる。


「い、何時の間に・・・」


「ああ、言っておくが今この部屋は(そと)と空間次元的に切り離しているから。()げようとしてもそれは無駄な行為だと思うぞ?抵抗(ていこう)はしても構わないけど、どうする?」


 そう言って笑うシリウスに、二人は不気味な悪寒(おかん)に襲われる。


 まるで、全て手玉に取られているよう。そうアルデバランとフォーマルハウトは感じた。


 決して、この男にだけは(さか)らってはならない。そう心の根源(こんげん)にまで理解させられた。


 この男とは、そもそも立っている次元(じげん)が違いすぎるのだと。理解させられたのだ。


「・・・・・・いや、抵抗はしない。逃げもしない」


「そう、賢明(けんめい)な判断だ・・・」


 そう言うシリウスは、少し残念そうな表情(かお)をしていた。どうやら、抵抗される事を少しばかりは期待していたらしい。二人は口の端を引き()らせた。


 そんな二人に、シリウスは軽く咳払(せきばら)いをして意識を自分に向けた。


「まあ、それはともかくだ。君達は組織の総帥(ボス)を元に戻したいと考えている。しかし、君達二人にはどうする事も出来ないと・・・。(ちが)うかな?」


「・・・・・・いや、違わねえよ」


 ぶっきらぼうに()き捨てるフォーマルハウト。アルデバランは、黙って首を縦に振る。


 二人とも理解してはいるのだ。自分たちは、根本的に力不足だと。二人では、決して総帥を助けることなど不可能だという事を。だからこそ、素直(すなお)に頷いた。


 そして、それを理解しているシリウスだからこそ。二人にある提案(ていあん)を投げ掛けた。


「なら、僕から君達に提案だ。君達二人、僕の元に()ないか?」


「・・・・・・何だって?」


「だから、僕の元に来ないかと言っている。君達には、アマツ君の訓練(くんれん)に付き合って貰いたい。組織の総帥に関しては君達はアマツ君に一任(いちにん)する。どうする?」


 その一言に、二人は黙り込む。黙り込んで、しばらく迷った後アルデバランが問い掛ける。


「あの少年に(まか)せれば、ボスは元通りになるのか?」


「ああ、確約(かくやく)しよう・・・」


 確約する。その言葉を聞き、吟味(ぎんみ)して二人は深く考え込む。どうするべきか?どんな選択が此処では最適なのだろうか?考えて、悩み、迷い・・・


 そんな二人を見て笑うシリウスの()は、青白く光り輝いていた。その輝きは、とても神秘的で。


 二人は()まれるように静かに頷いた。


          ・・・・・・・・・


 後日、アルデバランとフォーマルハウトを前にひと騒動(そうどう)あったのは言うまでもない。

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