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新星のアイオーン  作者: ネツアッハ=ソフ
輝く星空編
24/52

閑話、想いはソラの彼方まで

 事件の終結(しゅうけつ)した後。学園校舎裏———


 ミカちゃんに呼ばれ、現在俺は其処(そこ)に来ていた。学園の生徒達は、ほぼ全員が重度の怪我の為病院に搬送される事になった。まあ、そのほとんどが俺のせいだが。その為、学園は緊急閉鎖になった。


 まあ、それは別にどうでも()い。そう、それ自体は別にどうでも良いのである。問題は今、すぐ目の前に居るミカちゃんの事だ。古城(こじょう)ミカ、古城リュウヤの妹。俺の後輩女子・・・


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


 彼女は只黙り込んだまま、(うつむ)いている。何かを言おうとして、やはり口を()ざす。


 かれこれ半時間。静寂(せいじゃく)が続いている。周囲には、人影は一切()い。


 ソラとリュウヤには、絶対に来るなと(つた)えてある。だからこそ、此処には他に誰も居ない。


 問題は、ミカちゃんの用件だ。


 まあ、ミカちゃんの言おうとしている事は理解出来る。と、言うか予測出来ている。ミカちゃんは俺の事を今でも好きでいてくれているらしい。だから、俺がソラを好きになった事に嫉妬(しっと)している。


 ・・・そして、その感情を自身の中でコントロール出来ていないのだろう。だからこそ、か。


 ミカちゃんは、今でも自分ではなくソラを選んだ俺を(うら)んでいるのだろう。けれど、そんな自分に嫌気が差してもいると、そういう事なのだろう。本当は、自分が(となり)に居たかったんだ。


 けれど・・・


「・・・ミカちゃん」


「・・・・・・っ」


 ミカちゃんはびくっと肩を(ふる)えさせる。それは、俺の言おうとしている事を心の底で理解しているからこその反応だろう。要は、(おび)えているんだ。


 だからこそ、俺は此処で尻込みしている暇は無い。此処(ここ)ではっきりと言うべきだ。伝える事はしっかりと伝えるべきだと俺自身は思うから。それが、たとえどれほど残酷(ざんこく)であろうとも・・・


「ミカちゃんの想い、気持ちは理解している。その気持ちは素直に(うれ)しい・・・」


「・・・・・・うん」


 けれど、それでも俺が(えら)んだのはミカちゃんじゃない。


「けど、俺が好きになったのはソラさんだ。俺が愛しているのはソラさんの方だ。だから」


 ごめん。そう、はっきりと口にした・・・


 ミカちゃんの表情が、くしゃりと(ゆが)む。悲しみに顔が歪み、今にも泣きだしそうだ。しかし、それでも泣きわめくようなみじめな思いだけはしたくないのだろう。必死にこらえている。


 俺も、罪悪感が無いわけじゃない。其処まで俺は(おに)じゃない。罪悪感は何時だって付きまとう。それに何時でも後悔だらけだ。しかし、それでも俺は選んだ。ミカちゃんではなく、ソラを・・・


 そう、俺が選んだのはソラ=エルピスだ。俺が選んだのは、彼女(かのじょ)だから。


「どう、して・・・」


「・・・・・・」


 ミカちゃんの口から、嗚咽(おえつ)のような声が漏れる。泣き出しそうで、それでも必死にそれをこらえるような悲痛で泣きそうな声。俺は、それを(だま)って聞いている。


 今は、黙って聞いているべきだと思ったから・・・


「どうしてあの人なの?どうして彼女なの?私じゃ、いけなかったの?私じゃ、駄目(だめ)だったの?」


 嗚咽と共に()き出されるその言葉は、あまりにも悲痛で、(かな)しい言葉だった。


「こんなにも好きなのに。愛しているのに・・・大好(だいす)きなのにっ・・・・・・」


「ミカちゃん・・・・・・」


 俺は、ミカちゃんを真っ直ぐに見据(みす)えて言った。はっきりと、此処(ここ)でけじめを付けるように言う。


 はっきりと(つた)える。


「それでも、俺が(えら)んだのはソラさんだ。俺は彼女を愛している。きっと、これからも、たとえ無限に生まれ変わり続けても、俺は彼女を大好きだと(さけ)び続けたい。愛してると叫び続けたい」


「・・・どうして?先輩なんて大嫌(だいきら)い。・・・でも」


 既にミカちゃんは涙腺が決壊(けっかい)したらしく、その目から涙が滂沱と溢れ出ている。そんな顔を俺には見られたくないのか、俺の胸元に額を押し付けて(うつむ)いている。俺の服を、ぎゅっと握りしめて。


 嗚咽と共に、滂沱の涙と共に(おも)いを吐き出した。


「そんな、先輩(せんぱい)の事が・・・・・・大好きぃ」


「ありがとう、ごめん・・・・・・」


 俺は、ミカちゃんをそっと抱き寄せ頭を()でた。そんな俺の胸元で、ミカちゃんは泣きじゃくる。


 ミカちゃんが泣き止み、泣き(つか)れるまで。俺は彼女を抱き締めた。胸の奥が、(いた)かった。


 俺は、この胸の痛みを何時までも覚えていようと。胸に(きざ)み込んだ。

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