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弱者に死を  作者: unknown
2/56

失意の中

RANK 1

LEVEL 1

VOCATION /N/A


ABILITY /ささやかな生存本能

SKILL /

PERK /


HP 100

MP 15

VIT 126[+6]

STR 50

MAT 50

DEF 100

DEX 95

AGI 95




俺はステータスプレートに浮かび上がった数字と文字を見る。

これ、強いのか……?

一般人が一桁の能力値を持ってるとかじゃない限り、俺が強いという事にならないような気が……。

VIT……バイタリティは、生命力かな?数字に+6とあるのはアビリティの影響か。残念な事に今の時点で使えるスキルも、『奇跡』の再現であるところ(らしい)パークも無さそうだ。

ステータスプレートを見ながらそんな事を考えていたら、真っ白だった周りが晴れていく。最初の移動は気絶したのに、今回はしないんだな。


俺の異世界におけるリスポーン地点は、高台の上だった。

周りから歓声が上がる。違和感のある服装。こちらの世界の人間なんだろう。当然知らない人達ばっかりだが勇者待遇で喜ばれるのは嬉しいな、ステータス的には大分不安があるが。


「初めまして、勇者様。他の方々は既に移動しています。こちらへどうぞ」


案内人の人が会釈し、馬車に俺を連れて行く。

まあ転移者なんだ、幾ら低くとも常人と同等のステータスって事は無いだろう。

……無い、よな?

俺は用意されていた、なんだか豪華絢爛な装飾の施されている馬車に乗り込んだ。










−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−










広場には多くの日本人がいた。Tシャツや制服、そんな感じ。

知り合いは居ないだろうかと思ったが、悲しいかな、そもそも俺に知り合いなんてものが基本いなかった。この人混みで見つけるのは至難の業である。まあ、同じ学校の制服の人間もいるし少しくらいはいるのだろうが……。


現在、俺たち勇者一行(数千人)は、巨大な広場に集まって次の案内を待っていた。

町の半分位が魔法陣に覆われた訳だから、もっと人数がいるものだと思ったんだが…どうやら魔法陣の中にいた全員がここにいる訳ではないらしい。抽選は魔法陣に乗った人間の中でも行われたのだろうか。

件の完全ランダム仕様で。

話す相手もいない事だしとそんなことを考えていたら、明らかに高そうな服に身を包んだ偉そうな人が馬車に乗って広場に到着、召使っぽい人達を引き連れながら俺たちの視線を集めながら広場の真ん中の少し高くなっている所に立った。


「ようこそ、我らの世界にいらっしゃった、神に選ばれし勇者諸君!!」


お、おおう……神に選ばれた(抽選)だけどな。


「私は、この街で祭司をしております、ナルダンと申します。この辺りで唯一神の声を聞くことが出来、それ故勇者様方のお世話を祭司長から仰せつかっております」

「詳しい話は神々から直接お聞きになっていると存じ上げております。再三お耳にする事でしょうが━━━我らの願いは唯一、人間が安心して暮らせる世界の実現です。その為に、勇者方には協力をお願いしたい!!」

「我々の頼りは最早あなた方だけなのです!!」

「どうか、私達の願いを聞き入れ、悲願の達成を!!」


その後、人族側から見た戦況、歴史、その他諸々、つらつらといまいちよく分からん事を話し続ける。こちらの世界の常識が一切頭に入っていない俺達に言って解ると思っているのだろうかこの人は。

まるで校長先生の様な話の長さである。

最後に再度お礼を言われて、壇上から降りる。ぱちぱちぱちと周りの部下らしき人達が拍手をして、終わった頃には30分程経っていた。

この間俺達は立ちっぱなしである。

これでひとまずこの場でやることは終わりかと思っていたら次に壇上に立ったのはいかにも事務の人っぽい男性。


「皆様お疲れでしょうが、移動の最後にひとつだけ。ステータス確認をさせて頂きます。皆様がお休みになられている間、その情報を元にそれぞれの適正に合った仕事に就いて頂く予定となっております」


その言葉を合図に、俺達を取り囲んでいた、壇上の男と似た服装をした人たちが動き出す。一人一人ステータスプレートを確認していくようだ。


半分ほどの人間の確認が住んだ頃になってくると、自分の頭の中で整理がついたのか、異世界転移という急な話に反発する人間もそこそこ出てきた。だが、大体の人は何がなんやら分からずだったり、状況を飲み込んで寧ろより異世界転移に興奮してたり(主に男子達)で、まるで俺達の意思を無視したような扱いにも感じられる『勇者召喚の儀』は進んでいった。








−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−










RANK 1

LEVEL 1

VOCATION /光剣士


ABILITY /自己防衛、神回避、女神の微笑み、行動加速、破魔の気、精神強化、肉体超越

SKILL /神の一閃、闘気刃、断壁

PERK/外来者の意地、闘争本能、超生命力、協調行動


HP 3900[+360]

MP 5000[+480]

VIT 4050[+700]

STR 6400[+1100]

MAT 4500[+430]

DEF 6200[+350]

DEX 3500[+550]

AGI 4000[+350]



ーーーー


○外来者の意地

[ベリーレア パーク Lv.1]

環境に順応する過程で、潜在能力に目覚める。全ステータスが常時30%上昇する。

・重ねがけ可能

・シークレット


○闘争本能

[レア パーク Lv.1]

大幅な戦意高揚を得る。戦闘中、移動速度と筋力が常時12%上昇する。

・アクティブ

・重ねがけ可能


○超生命力

[レア パーク Lv.1]

生命力が常時10%上昇する

・重ねがけ不可(PEAK)


○協調行動

[レア パーク Lv.1]

仲間は人を強くする。付近に協力関係にある存在がいるとき、このパークの所持者の集中力、生命力、持久力が常時10%上昇し、その存在の能力も常時5%上昇する。

・重ねがけ可能


ーーーー




「これは!?」


俺の後ろの、大学生位の男子のステータスプレートを見て職員が騒ぐ。俺もチラッと見てみた結果見えたのが、このステータス。

なんだこいつヤバイ。数字の桁がオカシくないか?

職員が個別に勇者一行の対応をしている間、自分の順番が来るまで俺は他の転移者のステータスプレートを見て回っていた。


大抵の人間はステータスが1000~2000の間なのにこのステータスである。このステータスを持っている大学生っぽい男は凄いだの流石勇者様だのと言われているようだ。見るからにチート要素っぽいものが並んでいるからな。

ただ、転移された人間全体の傾向として、どうやらこの場にいる人間のステータスはほぼ全員この世界の人間から見れば奇特なレベルの高さらしい。最初からアビリティやスキル、パークを持っているやつも普通はほとんど居ないとか。まあ、持っている天職に関連のあるスキル・アビリティは別で、割とえげつない効果を生まれつき持っている人もいるらしいが。

その天職も、こちらの世界なら表示されているだけで有名人なレベルで所持者が少ないにも関わらず、この場にはごろごろと……盗み見た限りでは、明らかに天職を持たない人間の方が少ないように思えた。


━━━そして、遂に俺の番が来た。

…確認をした職員の人からは、めっちゃ苦笑いをしながら「これは……時々いらっしゃられるんです、勇者一行の中で、極めて平凡なステータスの方が……」と言われた。

いや、分かってた、分かってたよ?それでも、ちょっとは期待してしまっていたから、結構落ち込んでしまった。そんな悲しいものを見るような目で見なくても……。

俺は、ステータスプレートの唯一のアビリティ「ささやかな生存本能」の欄に触れてみる。こうすることで、詳細な情報が表示されるとのこと。ポップアップディスプレイ的な。



−−−−−−−−−

○ささやかな生存本能

[コモン アビリティ Lv.1]

・生命力+2%

−−−−−−−−−



生命力……多分バイタリティのステータス上方。但し、常時発動とはいえ2%か。

ささやかである…。


転移前に、アビリティは基本重複する代わりに効果が低いと非常勤職員の男に教わった。

アビリティ、スキル、パークには、それぞれレアリティがあり、性能はレアリティに比例して強力なものになるらしい。

基本的には能力は取得した後に変化することは無いが、能力の回数使用によるレベルアップも一応存在し、性能が若干強化されるとのこと。

俺のアビリティのレア度は「コモン」。「普通」。なんてステキな響き。

つまるところ、何度確認しても、俺はこの集団の中においてはとても残念なステータスを持つ人間だった。職員はその後も、あってないような俺のステータスプレートの内容を見ながらブツブツ呟いていたが、正直言葉が耳に入らない。


対して俺の後ろのやつは、どうやらこの辺りの集団の中でも特に高いステータス持ちのようだ。


「あーやっぱりこのステータス、かなり高いんですね」


大学生っぽい男が得意気にそう言う。隣にいるのは彼女さんかな?

他にもなんか色々喋ってる。周りの人間からの声掛けは大抵は称賛、衝撃、歓喜の色を帯びている。聞けば聞くほど、虚しくなってくるような気がするのは気のせいだろうか?別に言っているやつは俺を意識していない筈だが。

なんだか俺がここにいるのは場違いな気がして、とりあえず、人の密度が低そうな方へと移動することにした。








−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−









「…こんにちは」


俺達はステータスプレートの確認の後、情報の整理と出立準備を兼ねて数日この近くの宿で泊まるようにと言われた。

正直、このステータスで勇者を名乗るなんて出来ようはずもない俺には、異世界転移で浮ついた奴らの近くにいるのは耐えられないことだったが。まあ、自分のステータスが判るまでは若干俺もあんな感じだったので責めたりはできない。

だから、出来るだけ朝飯は早くに、昼飯は遅くに、晩飯は取らず深夜に夜食を貰いに行くようにしていたのだが……。


「!?こ、こんにちは!!」


食堂の出入り口前。俺は木の扉の横で後をつけてきていた人間を待ち伏せていた。足音から性別なんぞ判らなかったのでガタイのいい大男とかだったらどうしようかと思っていたが、恐らく同年代の女の子だ。

で、目の前のこの子は何をしているんだろう。後をつけられているなんて気のせいかと思っていたのだが、今回明らかに俺が食堂入るのを見計らって食堂に入ってきていた。


「………………こんにちは」


俺は怪訝そうに……まあそんな様子は出来るだけ隠すように、表情を変えないようにと努力をしながら、極めて誠実に対応した。


「こ、こんにちは」


こんにちはの応酬である。完全に動揺していらっしゃる。若干アホっぽいのは有り難いことだ。嘘を見抜きやすい。

女の子は少し目を逸らしたあと、ニコッと笑って話しかけてくる。


「あの、いつも夜食を貰いに来てる人だよね?」


何で知ってる。まさか。


「あんたも夜食よく貰いに来るの?」


「へ!?い、いやいやいや、そういうんじゃないんだけど……」


何故か急にびっくりする誰かさん(女)。

…ああ、あれか?夜食は美容に悪いとかっていうやつを気にしてるのか?


「まあいいや。で、何か用?ついてきてたみたいだけど」


「え、えっと……あれ?何だったっけっな…?」


大丈夫かこいつ。驚いた衝撃で本気で記憶が飛んだのか、言えない理由があるのか、いまいちどっちか判らん。

目をめっちゃ泳がせながら暫くうんうん唸っていたが、何か思い出したようで(或いは即席の話題を見つけたようで)、捲したてるように話し始めた。


「あっ、そうだ!あの、なんか、皆こっちに来て浮かれて、異世界式鍛錬とかしたり異世界観光地巡りみたいな事して楽しそうにしてるのに、一人だけ雰囲気が違うから」


鍛錬の話は知っている。ステータス上位の人間は、将来的に魔族との戦争に駆り出されるため、戦闘訓練を受けているのだ。異世界式というのは少々興味を唆るが、俺は当然その集団には加わろうとは思わない。まあ入れても貰えないだろうけどな。

観光地巡り……そうか、暫く宛てがわれた部屋にこもり切りだったからすっかり忘れていたが、ここは異世界だったか。ハイスペ勇者向けの話ばっかり聞いてて色々辛くて忘れていたが、異世界転移したんだっけか。

俺がそういうここ最近の勇者扱いについての走馬灯的なものを見て感傷に一人で浸っていると(アニメ調に言うなら脱色しているように見えただろう、そのくらい虚しさ満点のここ数日の記憶を漁っていた)、目の前にいる女の子が話しかけて来た。いや、違う、まだ話の途中だった。。


「で、なんでかなーと思って」


「……」


俺は、こういう質問をする奴は大抵2種類に大別出来ると思っている。実際は違うかもしれないが、少なくとも俺はそう思っている。ここ数日の俺への周囲の扱いを元に。興味本位、又は勇者気取りのステータスが恵まれた者が、弱者又は敗者など恵まれなかった者へ行う卑下の意識を持った質問。又は俺と同じ弱者で、傷を舐め合う事ができる相手かどうかの問いかけ。前者は完全スルーの技術を習得する事で、被害を最小限に抑えられる。その後突っかかられるという事はない。結局の所、俺は彼らの眼中には無いから。

後者の場合…まあ、面白いやつも一定数存在する。

一緒にどうでもいい勇者向けスケジュールをボイコットしたりとか。

不真面目な感じはないから後者にしても面白い部類ではねえなと思ったが、俺が答えずにいるとポケットを漁り始め、ステータスプレートを出してきた。見ろということのようだ。

そして、どうやらこの挙動不審な女は後者だったようだ。


「なんだか、雰囲気がちょっと前までの私に似てる気がして……実は私のステータス、他の人達よりも数段劣ってて」


そう言って、







RANK 1

LEVEL 7

VOCATION /高等治癒師


ABILITY /女神の微笑み、慈愛の泉

SKILL /瞬間治療、神力治療、慈愛の光

PERK/外来者の意地、慈愛の女神、超生命力、協調行動


HP 1000[+100]

MP 5000[+1000]

VIT 7500[+500]

STR 850[+70]

MAT 750[+80]

DEF 1000[+85]

DEX 3700[+500]

AGI 1500[+150]



ーーーー


○外来者の意地

[ベリーレア パーク Lv.1]

環境に順応する過程で、潜在能力に目覚める。全ステータスが常時30%上昇する。

・重ねがけ可能

・シークレット


○慈愛の女神

[ベリーレア デンジャーパーク Lv.1]

自他の身体を気遣う。治療速度が常時50%上昇し、遠隔治癒が可能になる。他者の治療に一切の魔力を消費しなくなるが、自身の治療に通常時の3000%の魔力を要するようになる。

特定の相手を指定する事で120秒間、相手への物理攻撃を全て肩代わりする事ができる(攻撃は60%減衰する)

・クールタイムは24時間

・重ねがけ不可(PEAK SKILL)

・シークレット

・デンジャーパーク(RISKY)


○超生命力

[レア パーク Lv.1]

生命力が常時10%上昇する

・重ねがけ不可(PEAK)


○協調行動

[レア パーク Lv.1]

仲間は人を強くする。付近に協力関係にある存在がいるとき、このパークの所持者の集中力、生命力、持久力が常時10%上昇し、その存在の能力も常時5%上昇する。

・重ねがけ可能


ーーーー




そう彼女は、俺と同じ後者の……後者……?


「最初見たときはそんなに悪くないかな、なんて思ってたんだけど」


それから、つらつらと説明を始める。知らないかもしれないから、と。治癒魔法というのは、ポーションで代用できる上、自分は耐久性が無さ過ぎる上に敏捷性も他の殆どの人に劣り、また戦闘系技能もほぼ持ち合わせてない為、他の人や職員から話を聞けば聞くほど、皆の足枷になるだけだと分かっていった、と。


…前言撤回。明らかにステータス自慢の前者であった。


「あっそう、辛かったのか。その後もなんやかんやあって、でも今は幸せ、ってかい。それじゃ」


俺は踵を返した。その後もつらつらと自分の経験を語ろうとしていたが、俺がそれを遮った形だ。というか、もはや話を聞き流す気力すら何処かの高ステータスを示す銀色プレートに吹き飛ばされた。時々いるんだよ、こういう奴が…自分のステータスが特に問題ないのを雰囲気で悟っているのか、周りとの比較をさしてしていない人間。特に初日は多かった。俺が特段お通夜みたいな雰囲気してるからある意味話しかけやすかった可能性もあるが、なんちゃって低ステマウントを取ってくるやつ。こういった場合、話をぶった切ってさっさと忘れるに限るのである。


「えっ!?ち、ちょっと」


大抵のやつはこの塩対応で呆けた顔をして解放してくれるのだが、どうやら今回の相手はもう一段面倒なやつらしい。

話すのも面倒なので、俺は彼女に自分のステータスを見せた。


「!?え、あ……」


見せたのは、ほんの10秒くらいだ。でも十分だった。何故って、俺のステータスプレートにはまるで文章というものが無かったからだ。

…カモの雰囲気を出していたとはいえ、俺のステータスがここまで低いなんて、そりゃあ思わないだろうなあ。


彼女は10秒間で、目の前に突き出されたプレートから、たったひとつのコモンアビリティと、2桁ばかりのステータスをきちんと認識出来たのだろう。もう俺には何も言わなかった。


俺は彼女から解放された。

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