…流石に蹴られて喜ぶのはアウトだったかな…。
「というわけでどうするんだい、明日ちゃん?」
「どうするもなにもまだ話してすらいないだろ!」
さきほどのバトルで興奮気味の狂犬明日ちゃん。ツッコミが乱暴だ。
「ちゃんと首輪をつけておかないとね」
「何の話だよ!脈略無さ過ぎるよ!この空間に人間一人は不安だよ!」
ビクビクしながら叫びに等しい声をあげる明日ちゃん。興奮気味の理由は不安の裏返しらしい。
「でもそれなら、狂犬と、神様と、人間が一人ずつだからみんな不安なんじゃないかな?」
「狂犬と神様は仲良しだからいいんだよ!人間はどっちらかにとって喰われないか心配なんだよ!」
「ん?明日ちゃんっていつ神様と仲良くなったの?」
「え?」
明日ちゃんは可愛く首を傾げた。男の時でもこういう仕草をしている上に、可愛いときている。これは毎年のラブレターの数も頷けるというものだ。
それはさておき、どうやら話が食い違っているらしい。
どうやら明日ちゃんの主観では自分が狂犬ではないらしいのだ。神と犬と人、この部屋には3人、神は決まっているので除外、明日ちゃんは自分が狂犬ではないという。ということは…。
「僕のこと?」
「そうに決まってるだろ?まさか俺が狂犬だとおもってたのか?噛みつくぞ?」
明日ちゃんが怪しく舌なめずりをするとゾクッとした。どうやら対象が明日ちゃんならSでもMでも何でもいいらしい。
「お、おい。そんな期待するような目でこっちを見るなよ。大体にしてお前は心が読めるんだからわかってるんだろ?」
明日ちゃんは少し引きながら質問してきた。
「ん?いやさぁ、面白くないから基本聴かないようにしてるんだよね。最初のうちは全員の心の声がそのまま脳にダイレクトにきこえるから人ごみとか入れなかったんだけど、それだと大変だから神様にミッチリ修行させてもらったんだよ。その結果ある程度能力が制御出来るようになって、やっと普通の生活に戻れたとさ。それで今では聴きたい対象だけを聴けるように出来るんだ、もちろん聴かないのもあり。だから常に人の心は聴かないようにしているね。強い思いは強制的に聴かされちゃうけど」
「ふ~ん・・・て、えっ?!この能力制御できるの?!じゃあ上手く行けば男に戻れるってこと?!」
勢いよく立ち上がり目を輝かせる。心に希望が満ち溢れていくのが、心をよまなくても十分に伝わる。
「だがその希望!打ち砕かせていただこう!制御には術をかけた神の協力が必要なのだ!」
ふっふっふ、どうだ?絶望したか?
が、残念、顔をあげて明日を見るがまだ目が生き生きしていた。
「明日の絶望に歪む顔がみたかったのに!」
「うん!最低だね!そして死ね!」
笑顔で切り返されただけで、蹴りも何もとんでこない。どうやら反射的に突っ込んだらしい。
明日の突っ込み機能に自動式が導入されたのはいい事だが、かなり物足りない。なので四つん這いで明日の足元に近寄っていく。
「ご主人様!ご褒美のキックは!」
「きもい!」
顎を蹴り上げられ流石に意識が飛びかけるが、満足した「うわ、うれしそう・・・」と引かれたが、仕方が無い、嬉しいんだもの。欲に忠実な僕である。
そんな事をしているうちに神様が戻ってきたのか部屋の扉が開いた。
「明日からまた仕事だ…助けてよ神えもん…」
「行きたくないならブッチすればいいじゃない」
「明言風に言ってもダメだからね?!その人処刑されたし!」
「まぁどうにもならないんじゃないですか?お金がないと生きられませんし」
「それはそうだけど急に冷静にならないでよ…。はぁ、仕事行く準備してくるね…」