神様は蛇なのかもしれない。
「と、いう事なんですが神様。どうでしょうか?」
僕達が会話をしている途中、突然、天井から現れた神様。神出鬼没とはまさにこの事である。
未だ部屋を浮遊している神様。対して、お願い事を終えた明日ちゃんは床にきちんと正座して返答を待つ。
神様は欠伸をして、一拍、僕の方に視線をよこした。
当然、それを見ていた明日ちゃんの視線もこちらに向く。
「えっ何?僕が何か?」
「ん~そうですね~。明後日、土曜日で、学校はないですよね?ならその時に犯人探しをしましょう」
え?何?今神様なんて言った?もしかして人のために動くって?明日ちゃんは寝る前に教えてほしいとしか言ってないのに。
神様が自発的に心を読んで他人の為に行動?え?え?怖い!裏がありそうで怖すぎる!
「あら、鏡夜さんがこの現状をどうしても受け入れられないようなので、やめましょうか?」
神様の一言で明日からこれまでにない程の威圧的な視線を受ける。
でも、しかしこれは怪しすぎるよ明日ちゃん。悪いけど迂闊に手を伸ばすわけにはいかない。
「どうゆう魂胆ですか神様?僕を巻き込む分には構いませんが、周りには、特に明日を面倒事に巻き込むことは許しませんよ」
僕は真剣な顔で神様を睨むが、そんなものが脅しにもならない事は自分でも分かっている。
「そんな、人聞きが悪いですよ。私がそんなことするわけないじゃないですか。いつも通り、ただの気まぐれです」
「そうだよ鏡!今は頼んでる立場なんだから!」
…でも怪しい。怪しすぎる。この人は――この神は信用できない。平気で嘘を吐く。しかも後々嘘だと気付けても、どこまでが嘘なのか気づけない程に巧妙に。
あ、少し僕を縛り付けたままだった明日の心がわかったかも。
「もう、疑り深いですね。考えても無駄だということは分っているでしょうに」
それはそうだが、明日が関わってくると無駄だと言われても慎重にならざるを得ない。
しかし、神様の言う通り、それは本当に無駄なことだ。ここは諦めて話に乗って慎重に動こう。
「私の信頼の無さもここまで来ると、よく一緒に暮せているな。と思います」
そりゃ、明日ちゃんの為だからね。神様のきまぐれで後ろから刺されて死ぬぐらいの覚悟はできている。
「そうですか・・・まぁいいです。今回の目標はそんな鏡夜さんの信頼を勝ち取るための作戦ですから」
そんなことして何の得になる?と思わないでもない。が、神様はそもそも損得ではなく、いかに面白く生きるか(まぁ生きるというのも変な話だが、この際放って置こう)が目標なのである。
きっと、それは後々、神様の中での面白い展開に繋がっていくのだろう。
どう足掻いてもメデューサに睨まれた蛙はその時をじっと持つしかないのだ。
「ぎゅるるるぅ」
恥ずかしそうに俯く明日ちゃん。
こんな状況でも明日ちゃんのお腹は平常運転なようで、可愛い音で空腹を知らせてくれた。
確かに時計を見てみればもう三時。お昼を食べてない僕達はお腹が減って仕方のない時間帯だろう。
あぁ、三時って言う事は…そうか、神様はおやつ要求するために起きたのね。
「ビンゴです。おめでとうございます。そんな鏡夜さんには私のおやつを準備できるという、得な役回りを授けます」
「全く得でない上に、明日ちゃんを神様と二人、このまま放置するわけにはいかないでしょう?」
「鏡夜さん。女の子に密談の一つや二つ、させてくれませんか?」
別に頭の中で直接話せる神様に密談なんて場所を設ける意味はないだろうに。と思ったが、まぁ、今更明日ちゃんを取って喰うようなことはしないだろう。
したって、面白いことは僕と血眼の追いかけっこができるぐらいだ。――いや、実は神様それが面白かったりするのかもしれない。
となると、やっぱり目が――いや、離そうと離すまいと神様の前では凡人な僕には何もできないのは一緒か。
神様の機嫌をつくろうためにも、お菓子でも持って来よう。
標的を定めた神様がニコニコしながら、硬直する明日ちゃんに近づいていく。
さよなら明日ちゃん…。
僕は助けを求めるような明日ちゃんの視線を振り切って扉を閉めた。




