…あれ?僕ってこの人たちと同じ人間だよね?
「ええっと、では僕も自己紹介から。3年で生徒会長をやっております晰卉 徹と申します」
あきぐさ・・・?あきぐさ、あきぐさ…どっかで聞いたような…。
「あの。もしかして佳織さんのお兄さんですか?」
先に思い出した明日ちゃんが聞く。ぼ、ぼくだってあと少しで思い出せたもん!
「ああ、はい。あの子は少し生意気ですけど、仲良くしてあげてくださいね」
「はい。もちろんです!」
イケメンと明日ちゃんが微笑みあっている姿は目に毒だ。自分の目とイケメンを潰したくなる。
「で、先の部活と言い張っていた人たちの事ですが、あれはまぁ同好会という事になっています。うちの学校は文化系なら六人からが部活として認められるので、五人しかいない彼女達のサークルは当然正式な部でもなく、部室もありません。なので、あと一人の部員を集めるために躍起になっているわけですね」
なるほど、それでここで待ち構えていたと。
「しかし彼女にしては考えました。部屋を間違えた人を襲うなんて。馬鹿が知恵をつけると困りますね」
神様のように控えめに「ふふふ」と笑う。
「え?部屋が違う?確かにここでいいはずなんですけど・・・」
「ああ、ここ西棟ですよ。スタンプが置いてある方は東棟です」
「なんと!ありがとうございます」
オーバーリアクションを取ってぺこりと虧が頭を下げる。
「まぁあの人達も悪い人たちではないので、気が向いたら明日の部活勧誘会。見に行ってみてあげてください。では私はそれについての打ち合わせがありますのでこれで失礼します。あ、この部屋の鍵はあとでかけに来ますのでそのままで結構ですよ」
そういうと生徒会長は駆けて行ってしまった。きっと本当に忙しいのだろう。
「さて、じゃあ反対側の棟に行きますか」
「だね、いつまでもここにいても仕方ないし」
僕たちは再び反対側の棟に向かって歩き始める。
―あ、そやっぱそう思います?気が合いますね。
―だよね~やっぱりあそこは決めておくべきだった!
どうやら明日と虧は昨日見たドラマの話をしているらしい。そこまでは分るのだが、そこまでしか分らない。
会話について行けない僕。昨日あの後神様と一緒に寝ちゃったからなぁ~。それはもう夜の9時過ぎまでぐっすりだった。
あの寒さがなければそのまま朝になっていたかもしれない。
…と、違う違う!神様があんなところで寝ちゃうからドラマ見損なったじゃないか!おかげで明日ちゃんとの話題について行けない!
『思いついたように責任転嫁しないでください。でもいいじゃないですか、どうせみてもつまらなそうな顔して。その方面の会話をしていても相槌ぐらいしか打てないんですから。寝ているときの顔の方が幸せそうでしたよ』
黙れ神様。僕の言い逃れの道をふさぐな。
『八つ当たりもいいところですね。では、一つアドバイスを。そのポケットに突っ込んだもので会話を発展させてみては?』
神様のアドバイス通り制服のポケットに入れたパンフレットを取り出し、会話が途切れるのを待つ。
―でさぁ、あそこのお店のスイーツが美味しくてさ。
―へ~、今度行ってみようかなぁ。でもバイトやってないしお金がないんだよなぁ~。
―あ、そうそう、虧くんてバイトする気あるの?
…話の途切れる気配がない。と言うか喋れば喋るほど話題が広がっていってる。話題って尽きるものじゃないのか?…。
…僕は思考を放棄し、諦めパンフレットに視線を落とした。
「あぁ、実況者さんの プニキホームランダービーLive見ながら書こうと思ったのに一瞬で終わっちゃったよ…」
「そうですね…。3時間程度はかかると踏んでいたのですが…。予想外でした」
「終わった後もDDLCのLiveもやってるけど…」
「あれを見てしまうと笑ってお話書けないですもんね…」
「書き終わったから見に行けるけど…」
「途中から見るべきか、アーカイブで見るべきか…」
「「悩ましい…」」