これが夫婦漫才って言うやつですかね?
「強引な部活勧誘は規定で許されていません。大体して部活の勧誘は明日からです。やめてください」
投げつけた消しゴムを拾いポケットにしまいながらメガネ少年が言う。
「か弱い乙女に向かって消しゴムを全力投球する生徒会長に言われてくないわ!あ~!暴行だ~!威力業務妨害だ~!出てけクズ!」
「クズは貴方ですよ。そうだ、この消しゴムであなたの存在ごと消してあげましょうか?」
笑顔で、それでいて落ち着いた口調で、落ちた消しゴムを取ると彼女の頬にそれを押し付ける。
あれ?雰囲気、誰かににいているような・・・ああ、家の神様か。
彼女はその消しゴムを払いのけ、ずれた仮面を直すと息を吸い込んだ。
すると生徒会長?が手のひらで耳をふさぐ。どうやら大きな声を出すつもりらしい、それに習って僕も耳をふさいでみる。
「黙れ!お前なんぞその黒い部分を皆にぶちまければ一般生徒以下に落ちるのだぞ!そして我はその画像をしっかりとおさえておる!」
ピンク色のガラケイを突き出しながら誇らしげにしていると、生徒会長?にすぐに奪われた。
「あ~!かえせ~!私の携帯~!個人情報の塊だぞ!プライバシーの侵害だ!警察に訴えてや――あっ!」
携帯を奪おうともがくと机の上から落ちそうになった。が、難なくそれを予想していたかのように生徒会長がそれをキャッチ。靴のそばにおろした。
「ほら、机の上で暴れたら危ないですよ。しっかりと靴を履いて戦いなさい。あと、顔に唾がかかりました」
「おお、すまん・・・・ではいざ尋常に!」
しかし身長差がありすぎて手を高く伸ばした生徒会長から携帯は奪えそうもなかった。
生徒会長は長身のようだ。それに対してあの自称か弱い乙女は明日ちゃんと同等かそれ以下かも…。
「はい、消せましたのでお返しします。あ、僕の携帯、契約会社変えても番号変わったんで入れときました」
「勝手に消すな!勝手に入れるな!勝手なことをするな~!絶対に訴えてやる!うったえてやる~!」
抵抗虚しく帰ってきた携帯を両手で抱きかかえ。生徒会長?を威嚇しながら廊下に走ってでて行ってしまった。
それをあっけにとられて居たように見ていた部員?達もそれを追いかけるように実習室を出ていく。
と、一人が去り際にパンフレットを渡して、お辞儀をしてきた。一応勧誘は忘れていなかったらしい。
取り残された僕らは親しそうだった生徒会長?に説明を求める視線を送った。
「ええっと、彼女の事でしょうか?それとも部活の?」
生徒会長は僕たちの意図を汲み取たようで苦笑交じりに質問を返してくる。
「できればどちらも聞きたいです!あ、俺は古都 虧って言います!新入生なんで他にもいろいろ教えていただきたいです!」
「私は美津愛 明日ともうします。先輩ですよね?よろしくお願いいたします」
「僕は澄河 鏡夜といいます。よろしくお願いいたします」
何故虧といい、明日といい、何故こんなに自然に、初対面の人、しかも年上に対して言葉がでてくるのだろう?…あれ?僕がおかしいのか?いやいや、まさかぁ~…ねぇ?
自分に問うたところで返事が返ってくるわけもなく、神様の笑い声が聞こえるだけだった。
「シュンさん…可哀想に…もう末期だったんですね…。でも大丈夫です!この新しい頭があれば元通り!はい?お値段が気にかかりますか?…そういわれると思っていましたよ。今ならお値段、たったの1980円!」
「もっと人の死を悼めよ!って言うか僕の頭安いなおい!」
「突っ込みで復活するところ、化け物じみていますね~。それと、新しい顔です」
「え?いやいや!もう復活してるからいらないって!」
「そぉーれ!」
「それって投げるものなの?!ぐへっ!」