普通の消しゴムならまだしも堅い角ケシなんかは全力投球したら凶器だと思うんだ…。
「いや、しかし本当に意外だったよ、鏡に友達ができるなんてさ」
僕の肩を叩きながらいつも以上の笑顔を向けてくる。
「ひどいなぁ~明日。僕だって成長するんだよ!・・・まぁ、僕から声をかけたわけじゃなかったんだけどね」
そこは素直に白状しておく。まだ親離れ、もとい、明日離れ出来ないよ、アピールをしておかないと育児放棄される恐れがある。
現在廊下。目標地点をそれほど混んでいないと思われる1Fの実習室に定め、横になって歩いている。ついでに真中は僕だ。
「そうなのか?じゃあそこの虧くんから声をかけてくれたのかな?」
「わ、私めなんぞ、モブの名前を覚えてくださっていたのですか?!ありがたき幸せにございます」
ふざけたような笑みを浮かべて大げさに頭を下げる。
明日ちゃんもそれに乗って「うむ、くるしゅうない」と続けた。
虧は明日ちゃんみたいな“何か”はないけど、近づけば基本誰とでも仲良くなれそうだなぁ~。
・・・チッ、早速明日ちゃんと仲良くなりやがって。まぁ明日ちゃんが楽しそうだから許すけどさ。楽しそうにしてる明日ちゃんは許さない!あとでお仕置きだ!
冗談はさておき、その程度の当り障りの無い会話をしながら階段を降り、実習室(生物系)の教室にたどり着いた。
「あんまり人ともすれ違わなかったし、予想通りあんまり人がいないみたいだね」
「そうだね~上階は混んでたし。まぁあういう風にスタンプの順番を待ちながら会話するのもいいのかもしれないね」
僕としては頭が痛くなるので人ごみが嫌いなので勘弁だが・・・それにしてもそのスタンプが見当たらない。
「あれ?スタンプ見当たらないね。教室の中なのかな?」
「だね、鍵かかってないみたいだし」
明日ちゃんが扉を開けながら言う。生物系とは言え実習室を解放したままなのはどうかと思うが・・・まぁいいんだけどさ。
明日ちゃんは怖がる様子もなくカーテンの閉まった暗い部屋の中に入っていく。僕も虧もその後を追って入った。
すると後ろの扉が『バン!』と音を立て勢い良く閉まる。それとほぼ同時に消えていた電気が点いた。
「ふっふっふ、今年も来たぞ!我が部に人が!」
驚いている僕らを迎えたのは、黒いローブのようなものを羽織り、目のあたりだけが隠れる怪しい仮面をした、あからさまに怪しい人だった。今は正面で実験用の黒い長机の上に仁王立ちしている。
扉の方を振り返ると同じような格好をした人が一人しゃがんでいた。どうやら待ち構えていたようだ。他にも二人同じ格好の、計四人の不審者がいた。
「・・・・・」
皆で目を合わせてみるが誰もこの状況を理解できていないようなので、視線を机の上の人に戻す。
「お前らにはこの状況飲み込めないじゃろうて。説明してやるぞ」
仮面を押さえていた人差し指をこちらに向けて突き出してきた。どうすることもできない僕たちは仕方なく聞くことにした。
「ここは仮面部!そしてここは仮面部の部室じゃ!」
…いや、それぐらいは何となくそれぐらいは分かる。というか仮面部って…そのままだな。
「この部活は世のため人のため、暗躍して依頼をこなしていくという学校公認の正式な部活じゃ!」
暗躍してるのに正式なのか・・・できてないじゃない?暗躍。
「ここに来たからにはお前たちも我が部の一員になってもらうのだ!さぁこの入部用紙に署名するのだ!さぁ!さアタぁ!」
強引な部活勧誘は扉を開けて入ってきたメガネ少年の全力投球消しゴムによって止められた。ちょっと消しゴムっぽくない音がしたのは聞かなかった事にしよう。
「撃ち方構え!」
「お仕事たのちぃいいいいいいいいいい!!!」
「うてぇい!!!」