あ、昨日の痴漢騒動はなかった方針でお願いします。
僕が落ち込んでいる間にも自己紹介は進んでいく。
ついでに次いでなのだが フルミヤ カケルは古都 虧と書くらしい
名前を呼ぶときはあっても、漢字で書くことはそうそうないだろうから、別段覚えなくても良いのだろうけれど。
何故か僕は呼び方を憶えていなくて、漢字だけお覚えていることがしばしばある。不思議だ。
いや!決して名前を呼ばないからとかいう、コミュニケーション不足を示唆されるようなことが原因ではないと思うよ!うんうん!
自分の思考に追い詰められ、言い訳をする僕は決して、決っして末期などではない事をここに宣言しよう!
思考の中で一人相撲をとっていると、いつのまにやら全員自己紹介は終わったようで、再び先生は教卓の前に立っていた。
「ではみなさん。これからは各自校内を回ってもらいたいと思います。各棟や教室にスタンプが置いてありますので全て集めてきてください。このBOXに提出し次第各自解散とします」
ということで明日ちゃんに特攻!が、悲しいかな、明日ちゃんの溢れる魅力にひかれて先に人の壁ができてしまった。
残念ながらその中に突っ込んでいくほど肉体的VITを僕は持ち合わせていない。
仕方なく視線を先ほどの男子がいた席に向けてみた・・・あれ?いない。もう先に。
「よ!」
驚いて後ろを向くとそこには…ええっと、そう!虧!…なんて読むんだっけ?…あれ?…あ、そうそうカケルだ。
「ん?どうしたんだ固まって?」
「あ、いや、もう行ったのかとばかり思っていたから驚いてたんだ」
嘘ではない、嘘ではない。
「のわりには反応薄いな。まぁいいや、回る相手がいないなら一緒に回ろうや」
「うん、いいよ、どこから回る?」
始業式前に配布されたパンフレットを開き、スタンプの置いてある位置を確認する。
「お、なになに?鏡のくせにもう友達できたの?」
これまたいつのまにやら明日ちゃんが僕の横に立っていた。
なんという事だ!不覚にも明日ちゃんを、一瞬とは言え視界の外に置いてしまった!これでは『自称』彼氏失格だ!
…あれ?なんか今神様の声で補正が入った気がしたけど…気のせいだよね?
ここは嫉妬深い明日ちゃんに謝っておきたいところだが、これではいつものやり取りに戻ってしまう。ここはあえて引いてみて新しい反応を見てみよう。
「ふふふ、そうだよ。僕は明日ちゃんなしでも生きていけることを証明して見せる!」
「鏡・・・・おまえ・・・」
両手で口元を押さえ、信じられないものを見たような顔をする。
驚いてる、驚いてる。さぁ!僕に嫉妬するのだ。
「・・・え?何で涙ぐむの?」
僕の頭の中を疑問符が埋めていく。
「いや、やっと鏡が一人で・・・グスン」
「やめて!嘘だから!冗談だから!」
久しぶりに取り乱した今日この頃である。