人間として生きるって…難しいよね。
「どう?お前何組?」
「僕?僕は3組だけど。明日は?」
「3。同じだな」
現在、組の公表板前。無事二人とも同じクラスになれた。まぁ、必然なんだけどね。
「ん?どうしたニヤニヤして。まさか神様の力借りたんじゃないだろうな?」
「え?!ま、まさかぁ~?…」
明日にため息を吐かれた。どうやらバレてしまったようだ。
まぁ、わざとばれるような反応をしたのだけど。
…しかし驚いた、いつもと変わらないような表情をしているつもりだったのにそれを見分けるとは…明日も僕のことを多少わかるらしい。
「どうしんたんだよ、そんな嬉しそうな顔をして。気持ち悪い」
シッシと手を振ってくる明日ちゃんの手をつかみ指定の教室に向かって走り出す。
明日ちゃんは咄嗟の出来事にたどたどしい足取りになってしまっているが僕は気にしない。なんせ僕は照れ隠しが下手なのだ。
…多分、本当に。ね。
四階の西棟から左に三番目の教室…。
「一年三組、ここだよね」
半ば引きずって連れてきた明日に賛同を求めると睨まれた。が、まったく怖くない。
それどころか見上げる目線が可愛い。威嚇で癒すとはなかなかだ。野生動物なら今頃死んでいる。
「よしよし明日ちゃん。教室入ろうね」
パシッ、明日は背中に回そうとした手を高速で叩き落として、一人先に教室の中に入って行ってしまった。
完全に不機嫌になっちゃったみたい。仕方なく自分の席を探すことにした。
席は黒板に書かれていて皆それを見て席についていく。残念無念。席は明日とかなり離れていた。
明日は廊下側の前、僕は窓側の後ろだ。結構離れてしまったが、これなら授業をしながら明日ちゃんがしっかり視界に入る。
寝ていてもばれないし、ボッーと空も見れるだろう。悪くはないポジションだ。
え?勉強だって?学校は寝るところだろう?
明日と離れてしまって暇なので席順に規則性はないか探してみる。
名前順じゃあないな。成績順なら明日とこんなに離れるわけないし、身長でも、生年月日順でもない…。
ダメだ、さっぱりわからない。きっとランダムだろう。
自分で探し始めたのに諦めの早いやつだと自分でも思う。
視線を黒板から座っている明日に戻すと人が群がっていた。
なんだろう?このカリスマ性。僕の周りとは大違いだ。
寂しいアピールで見つめてみるが視線がまったく合わない。
あれだけの人にたかられてるんだから当たり前と言えば当たり前なのだが、時に嫉妬は人を盲目にさせるのだ。
と、言うことで明日ちゃんにダイレクトアタッーク!――しようとしたら人ごみの中から睨まれた。
どうやら視界内には入って無視していたらしい。お兄さん悲しいなぁ~。
視線は怖くないが明日の交友のひと時を邪魔すると本気で嫌われかねないので遠目から観察することにした。
愛想を振り撒く明日ちゃん。これはこれで見ていて楽しい。
「おいお前、なぁ~にみてんの?」
気を使いながら会話する明日ちゃん。愛想笑いも可愛いなぁ~。
「聞こえてないのか?お~い」
ん?どうやらこの声は僕に向かって投げかけられていたものらしい。
人間として生きる以上コミュニケーションは大切だ。泣く泣く明日から目を離して声が聞こえた後ろの方向を向く事にした。