二週目金曜日(完結)
?「あっさ、素敵なあっさ、はいあっさ♪」
・・A GIRL?
?「私の名前、言ってなかったわね。ミルクよ。」
あ、僕は緑平です。
?「仮眠とか言ってたけど、もう朝よ?」
え?
?「人類最後の時間を楽しみなさい。」
僕はそこで目を覚ました。
・・
・・・・
金曜日。
LAST DAY
僕は飛び起きて時計を確認した。
うわーんいつもより遅い時間に起きてるー!
疲れてるのかな・・うぅ・・
僕は急いで支度して、学校へ向かった・・んだけど。
”チャット申請があります”
途中で携帯が変な通知を出してきた。
チャットするようなアプリ入れてたっけ?
アプリ”13”
ああ、ヴァーチャル空間へ行けるやつか。
へー、チャット機能もあったのか。
・・誰から?
チャットするなら基本同じアプリを使っているよね?ということは・・
僕は少し震えながら、通知をタップした。
アプリが起動して、チャット画面が表示される。
すぐ相手のメッセージが表示された。
「あなたとこうして話すのは初めてですね。TWELFTHです。」
TWELFTH?
「私は今日、学校を休んで侵略者を倒す装置を完成させます。」
「あなたは目標を達成できないまま・・人類は滅亡するのです。」
キミが僕の知っている人なの?
「ずっと・・あなたのそばにいました。」
「ですがお別れです。さようなら・・」
待って!
キミは・・キミは誰!?
”TWELFTHが退出しました”
わけがわから・・学校を休むって言ってたな。
・・僕は、紀一に電話をした。
紀一「相棒寝坊か?それともお前も学校休み?」
緑平「お前”も”って、他にも休んでいる人がいるの!?」
紀一「そんなに驚くことか?巴が今日休みだ。」
巴・・?
緑平「じゃ、じゃあさ、紬と天音はもう来てる?」
紀一「ああ来てるぞ。紬は喜び勇んでジェミニ先生のところへ行ってるけど、天音になら電話変われるぞ。」
緑平「いや大丈夫・・ありがと・・」
紀一「元気なさそうだな・・放課後見舞い行ってやんよ!大勢でな!」
緑平「あーそれには及ばないから。ちょっと急ぐんでじゃあな。」
紀一「ああ・・がんばれよ相棒。」
紀一との電話を終え、僕は確信した。
TWELFTHは巴だ!
でも・・なんで?
そりゃあ最初僕の残機を減らしたのはTWELFTHだけど、そんくらいだよなぁ。
裏切りとか、そんな感じには見えなかった。
12人の中に知り合いがいるかもって言ったときも、僕を陥れるようなことは言わなかった。
僕を裏切るようなそぶりはなかったよ。
わからない。わからない・・なら・・
聞きに行くしかない!
・・
・・・・
巴の家の前まで来た!
入口には大人の男の人がいる・・いつもいないのに。
緑平「あ、すみません。僕は巴さんのクラスメイトなんですが、巴さんいますか?」
男「いない。帰れ。」
なんてわかりやすい返事だ。
巴は中にいる!部屋に籠って侵入者を倒す装置を作っているんだ!
っと、電話だ。
紀一「なぁ相棒、新枦先生が休みの連絡受けてないって言ってるけど。」
・・うん、してないから!
緑平「そうだ!紀一の部屋から巴の部屋に行けるって前に言ってたよな?」
紀一「あ、ああ。」
緑平「ちょっとお前の部屋に入れてくれ!」
紀一「いいけど、荒らすなよ。」
それはフリだな!フリだよな・・なんていつもなら言うが、そんな暇はない。
電話を終え、すぐに隣の紀一の家へ。
紀一の母「あら緑平くんおはよう。」
緑平「おはようございます!えーと・・」
すぐ来過ぎた。説明しないとな。
紀一の母「紀一から聞いていますよ。どうぞ。」
・・え?
紀一との電話終えたばかりなんだけど。
ま、いっか。助かる。
お邪魔しますと言って、紀一の部屋へ行く。
窓を開け、屋根伝いに巴の部屋へ。
・・超怖い。
落ちたら良くて怪我、下手すりゃ死ぬぞこれ。
アニメとかだと楽々行き来してたのに!
渡り廊下が必要だと思います!
瓦が外れて落ちませんよーに!と願いながら、なんとか巴の部屋の前まで辿り着いた。
巴の部屋の窓は・・鍵がかかっていなかった。
・・
・・・・
巴は部屋にいた。
僕が窓をノックすると、巴は驚く素振りもなくこちらを見た。
窓を開ける。
緑平「巴が学校サボるなんて珍しいね。」
巴「優先順位の問題じゃ。学校より優先することがあった。それだけのこと・・」
お互いわかっているのにわかっていないかのような会話。
現実を壊さないようにと臆病になってしまう。
でも、それではいけない。先延ばししていい話じゃない!
緑平「巴がTWELFTHなの?」
巴「ああ。わらわが・・裏切り者じゃ。」
巴「ユダは13番目の使徒と呼ばれることもあるが、実際は12番目に使徒となった。」
巴「気付かなかったか?わらわがTWELFTH(12番目)なのはその意味が込められておる。」
全然わからなかった。
宗教とか詳しくないし。
緑平「なんでこんな・・」
巴「わらわは、この世界が嫌いじゃ。だから滅びればよいと考えておる。」
緑平「僕とかみんなになにか不満があった?実はお小遣いが少ないとか?」
巴「みんなと一緒にいるときは本当に楽しかった。あの時が永遠であればよいと思うほど・・」
緑平「じゃあ・・楽しめばいいじゃん。それじゃダメなの?」
巴「楽しいときはやがて終わりと遂げる。わらわが卒業したらどうなるか聞いておるか?」
あ・・確か紀一が言ってた・・
―――――ここから回想
紀一「ま、あいつは家のことがあるからな。あまり自由がないんだ。」
緑平「今日も忙しそうだったなぁ。」
紀一「部活も家の用事があれば休まないといけなかったりするそうだ・・それでも今はマシな方かもしれないが・・」
緑平「進路は親の決めたところしかいけないとか?」
紀一「生まれた時には婚約者が決まっていた。大学へは行かず結婚して家に入るそうだ。」
緑平「え?」
紀一「オレも幼い頃から両親に言われてたよ。もし間違いがあったら、死んでもお詫びしきれないって。」
間違い・・まぁ男女だからな。
紀一「巴はオレのこと弟のように思っているし、オレも姉のように思ってる。」
紀一「うちの親が巴の家で働いているのもあってか、オレは一応信用してもらえてるんだよな。」
紀一「実はオレの部屋から巴の部屋まで屋根伝いに行けるんだぜ。」
紀一「でも・・巴が卒業して結婚したら今みたいに会うことは許されなくなる。」
緑平「じゃ、じゃあさ、恋愛とかもやっぱダメなのか?」
紀一「当然だ。もし巴が誰かと付き合ったら、どんな手を使っても別れさせられる。死人が出ても、だ。」
・・なら、巴が今日言っていたことって・・
紀一「巴もそれがわかっているからな。それこそ終末でも来なきゃあいつは好きな人に告白されても断るだろうさ。」
紀一「もし世界の終わる日が来たとしたら、その日だけ素直になるかもな。」
―――――回想ここまで
緑平「紀一から聞いてるよ。卒業したら・・結婚して相手の家に入るって。」
巴「そうじゃ。そうなったら二度とお主たちにも会えぬ。」
巴「思い出を胸に生きていくくらいなら、いっそすべて終わってしまう方がよい。」
巴「A GIRLはこう言っておった。お主が12人を倒せなければ、人類は滅ぶと。」
巴「だからわらわは誘いに乗った。世界を救うことで人類が滅びるなら、それでもよいと。」
巴「ふふ、わらわは良いことをしながら人類の滅びを願う。仮面をつけた優等生にはお似合いじゃろう?」
緑平「ならなんで・・あんなにも僕に協力してくれたの?」
巴「・・楽しかった。お主と一緒にひとつの目的に向かっていることが。」
巴「ずっと、あの時間が続けばよかったのに・・」
そう言って、巴は一筋の涙を流した。
巴は・・ずっと苦しんでいたんだ。それなのに、僕はなにも気付かずにいた。
僕になにができるだろうか?ちっぽけな僕なんかに・・
巴「なぜお主が12人を倒せなかったら人類が滅ぶのかは謎じゃが、そんなのどうでもよい。」
巴「みなに平等な死が与えられる。誰もひいきされず、誰も冷遇されない真の平等じゃ。」
緑平「そんな、なんとかならないの?他人に人生を左右されるなんてあってはいけないよ!」
緑平「それが親であっても!」
巴「ないわけではない。なぜ強制的な結婚を強いられるかわかるか?」
緑平「・・政略結婚。より大きなお金や権力、地位を得るため。」
巴「それは目的ではないのう。すべては家のためじゃ。」
巴「家のためにお金が必要、家のために権力が必要、家のために地位が必要、家のために名声が・・すべては家のため。」
巴「今の婚約者より、この家に利を与える者がいれば・・そちらとの縁組も可能じゃ。」
巴「もしその者が人格者で、わらわを束縛しないのなら・・大学へ行ったり、働くことも可能であろう。」
そんな人・・いるの?
巴「だが到底無理な話じゃ・・わらわのためにそこまでしてくれる者などおらぬ。」
巴「政略結婚であれば、わらわは人形であることを求められる。」
巴「誰にでも笑顔をふりまき、礼儀正しく、浮気をされても気付かぬフリをし、子供を産み育てるだけ・・文句を言わぬ人形のようにな・・」
緑平「そんなの間違っている!僕じゃ・・なにもできない僕だけど・・僕にできることはないの?」
緑平「巴を・・救いたいよ。」
巴「なにもできなければ、わらわが英才教育する。結果さえ出し続ければ父様も母様も文句は言うまい。」
巴「・・それは緑平にとって辛く苦しいだけじゃ。」
巴「今までのように遊ぶ暇はなくなる。昼夜を問わず研鑽を積み、結果を出し続け、若くして成功者にならなければならぬ。」
巴「重圧を跳ね除け、いけ好かぬ者とも交流し、足を引っ張る亡者のような輩をかわし続けなければ無理じゃろう。」
巴「お主の人生をすべて捧げてもらうこととなる。じゃが・・それでなにが得られる?」
巴「わらわがあげられるのは、わらわの人生のみ。そんなもののために、お主の自由が無くなるのじゃ。」
緑平「それでも、僕は巴を助けたい。」
緑平「僕の人生でも自由でも、すべて捧げるよ。だから、そんな悲しい顔しないで。」
巴「緑平・・本当によいのか?」
緑平「僕が一生巴を守るよ。」
巴「・・緑平!」
巴が僕の胸に飛び込んできた。
巴「ならば・・誓っておくれ。永遠の愛を・・」
僕は巴と、キスをした。
それは永遠の誓い。
・・おや?
巴の母「・・あ、気にしないでください。覗いているだけですから。」
いやそんな、ふすまを開けて堂々と覗かれても・・
巴「母様!」
巴の母「きゃー巴ちゃんが怒ったぁ♪」
・・あれ?
今までの話の流れからすると、巴のお母さんはここで怒ると思うんだけど。
(婚約者のいる)うちの娘になにしてるの!みたいな感じで。
・・僕がおかしいのかな?
緑平「あとは世界を救う12人と、人類を救う僕の件かな。これ二者択一だと困るよね。」
世界と人類どっちをとる?と聞かれても、片方捨てなきゃいけないなら、結局人類滅びちゃうよ。
世界がないと人類生きていけないし。
巴「それなら・・なっ?」
巴が携帯を見て驚いている。
そこにはFIRSTが映っていた。
みんなに向けてスピーチするところみたい。
FIRST「侵略者を倒す装置が完成した。」
巴「まずい!」
なにが?
FIRST「だが、使うのはちょっと待ってほしい。」
FIRST「まずは私の話を聞いてくれ。」
巴「・・」
FIRST「我ら12人が世界を救う役割で、THIRTEENTHが人類を救う役割だと昨日みんなも聞いての通りだ。」
FIRST「我らは迫る危機を解決し、THIRTEENTHは我ら12人を倒すことが条件だと言った。」
FIRST「だとすると、片方しか達成できないことになる。」
FIRST「ならば結論はこうなる”人類は必ず滅びる”だ。」
FIRST「世界が滅びれば人類も共に滅び、人類が滅びれば・・これはそのままか。」
そうだ。僕もこの結論になった。
A GIRLは初めから救うつもりなんか・・
FIRST「しかしそれではおかしい。A GIRLが人類を滅ぼそうとしていると言っても過言ではなくなってしまう。」
FIRST「人間を右往左往させ、希望を持たせて、そして絶望させる・・これは天使のやり口か?いや違う!」
FIRST「なにかが間違っている。どこかに認識の違いがある。正しい道へ進んでいない!!!」
FIRST「なにが正しくて、なにが間違っているか。私は答えを出した。」
FIRST「間違いは・・この、ラストミッションだ。」
FIRST「”その者たちはアフリカに現れ地球を支配する”」
FIRST「いつ現れるか不明で、その姿を確認できずにいた。」
FIRST「今までとは違う。地震ですらプレートからその危険性を確認できた。」
FIRST「これはなぜか?もしかしたら、今までと違う意味を持つのではないか?と私は考えた。」
FIRST「アフリカに現れ地球を支配する・・かつて、この条件を満たした生き物がいた。」
FIRST「人類だ。」
FIRST「A GIRLは未来を知り我らに干渉を求めた。ならば過去も同じではないか?」
FIRST「ラストミッションを達成したときいなくなるのは・・我ら人類だ。」
人類?
え?え?
FIRST「なぜそのようなことをA GIRLはしたのか。」
FIRST「A GIRLの元、我らは世界の危機を救ってきた。みな・・万能感を持ってしまっていないか?」
FIRST「人間の力は素晴らしい。力を合わせればなんだってできる。」
FIRST「A GIRLはだからこそ我らに伝えようとしたのだ。」
FIRST「その素晴らしい力が人間に向かったときどうなるかを・・」
FIRST「強き力ほど使い方を誤ってはならないと!」
FIRST「我ら12人には、最後に試練が待っていたのだ。」
FIRST「THIRTEENTHの役割は、最後の試練・・ラストミッションを止めること。」
FIRST「すべて正しかった。我らは世界を救い、THIRTEENTHは人類を救う。」
FIRST「昨日THIRTEENTHと話をして、ずっと抱いていたモヤモヤが晴れた。」
FIRST「さぁ審判の時だ!」
FIRST「我らはその力を誤ったりはしない。その力を人に向けたりはしない。」
FIRST「正しく力を使う。ラストミッションはその意思に従い、行わない!」
・・数秒、静寂が場を支配した。
”ラストミッション終了”
”人類は危機を乗り越えました”
メッセージが表示された。
FIRSTは正しかった。
正しい答えを導き出したのだ。
「いやったああああああああ\(^ー^)/」
「人類バンザイ!選ばれし12人バンザイ!」
「FIRSTさんありがとうございます!」
「やはりA GIRLは神の御使いだったのですね。ありがたやありがたや。」
「オレは全部知ってたけどな。」
「世界は救われた!A GIRLに選ばれた13人のみなさんありがとうございました。」
「世界が滅びる方に賭けてたのに・・」
「↑それ勝っても配当受け取れなくね?」
「10代女学生のTWELFTHちゃんの情報はよ!」
緑平「巴のこと知りたがってる人いるよ。」
巴「わらわには緑平しか見えぬ。」
僕だけこんな幸せでいいのかな?
巴「さて、では始めるかのう。」
始める?
ま、まさか・・両想いになったばかりでいいの?
心の準備が・・
巴が教科書とノートを持ってきた。
緑平「?」
巴「緑平がこの家にふさわしい人になるための勉強じゃ。昼までみっちりやるぞ♪」
緑平「えーと。」
巴「人生のすべてを懸けてもらうぞ。そう言ったじゃろう?」
僕はもしかして・・とんでもないことを言ったのかも。
まいっか。巴と一緒に勉強だ♪
なお学校の授業はとても優しいってことがわかった。
・・
・・・・
後日。
紬「あーあ、あっという間の出来事だったなー。」
天音「世界が救われた実感薄いやね。」
三太「んなことより、いつからお前ら付き合ってたんだよ!」
ん?ああ、僕と巴のことか。
巴「生まれた時からじゃ。」
三太「そんなバカな!?」
巴「生まれた時から運命で決まっておった。だから合っておる。」
三太「おい緑平いいのか?こんな電波女やめとけ。」
巴「無理じゃ。二度と手放す気はないぞ。」
三太「お前に聞いてねーよ!」
僕はというと、巴に出された課題を解いている。
今は昼休みだけど、僕にはのんびりしている暇なんてない。
三太「紀一も言ってやれ!お前の相棒が奴隷みたいになってるぞ。」
紀一「・・相棒・・すまん・・」
なぜ謝るのか僕にはわからない。
むしろ僕の方が謝る側だと思うんだけど。
・・一緒に遊ぶ時間減っちゃったから。
紬「巴ちゃんはかわいいしお金持ちだしわかるけどさ、巴ちゃんは緑平くんのどこが良かったの?」
巴「顔」
紬「・・その選び方でいいの・・性格とか、頭の良さとかは?」
巴「性格が気に入らなければ矯正する。頭が悪ければ教育する。運動も同じじゃ。」
巴「そしてそれは子供にも影響する。」
巴「しかし、顔だけは元の素材が重要じゃ。こればかりはありのまま子供に伝わる。」
巴「よって異性の選択基準は顔、というか外見のみじゃ。」
紬「・・すごい理論だ・・」
天音「ここまで堂々と言われると、正しいと思ってしまうやん。」
巴「わらわの一族はずっとこの理論でやっておる。間違いなどないぞ。」
紬「・・私も顔で選んでみようかな・・」
天音「それでお金持ちになれるならうちも・・」
三太「おい待て!それが正しいかなんて・・いやだって・・」
三太は巴の姿を見て否定しづらそうだ。
そりゃそうだ。巴は・・外見も中身も完璧と言っていいほどだ。
ただ性格がねー。気が強く理論的で、男は言い負けるんだよね。
巴「正しい選択をした者が正しい答えを得られる。それだけじゃ。」
それを実践できる人は中々いないと思う。
だって未来はわからないから。
でも僕の未来はわかる。
巴と結婚して、幸せな家庭を築くと思うよ!
・・
・・・・
?「ご苦労様。お姉様も喜んでたわ・・いい演劇だったって。」
紀一「演劇?」
?「私たち天使は未来がわかるの。だから現実も既にわかっている事象が行われているだけ・・演劇のようなものなの。」
?「ただし、天使同士が絡み合うと予想外の方向へ行くけどね。」
巴「・・ジェミニ先生ですか?」
?「やっぱりあなたは優秀。お姉様のこと言わなくてもわかってくれる。」
紀一「え?どういうことだ?」
巴「最初にA GIRL・・ミルク殿が話を持ち掛けて来たとき、こう言ったじゃろう?」
巴「お姉様が緑平を構ってて気に入らないから、緑平が無能だってお姉様に知らしめたい・・と。」
巴「緑平の周りでミルク殿が慕いそうな人はジェミニ先生くらいじゃ。」
紀一「じゃあ、ジェミニ先生も天使!?」
?「そうよ。強く、気高く、美しい戦いの天使。」
紀一「マジか!?」
?「あの人間が目的も達成できない無能だってお姉様にお伝えしたのに、どうしてまだ構い続けるのかしらね。」
紀一「・・相棒がうらやましい・・」
巴「ジェミニ先生は、優秀かどうかで人間を選んでいないだけだと思いますよ。」
巴「むしろ、ダメな人が好きなのかも。」
?「なら徹底的に有能な子にしちゃって・・そのつもりでしょうけど。」
巴「はい。緑平の子は一族の血族になりますから、緑平には”ふさわしい人”になってもらわないと。」
紀一「・・相棒すまんオレにはどうすることも・・」
紀一「全部巴の計画だったんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
巴「紀一もよくやったのう・・上手に緑平を騙せてたぞ♪」
紀一「すまないオレんちは親が巴の家で働いているから・・」
巴「お主もいずれ正式にうちで働いてもらう予定じゃ。なに、贅沢ができるくらいの報酬と十分な休みを約束しよう。」
巴「紀一は若いのに気が利く・・緑平を囲うのに役立ちそうじゃ。」
紀一「お前マジ怖い・・あんな計画立てて、その通りの結果を出しちまうんだから。」
巴「計画はわらわが立てたが、予定外のことも多かったぞ・・お主もな、ネタバレしてたじゃろう?」
紀一「いやさすがに相棒は気付かないと思ってだな。実際気付かなかったし。」
巴「ミルクさんもネタバレしてたみたいですね。」
?「暇だったから。というか、あの人間構うの楽しい♪」
巴「わかります。」
紀一「(ジェミニ先生も同じだったりして)」
巴「それと・・FIRSTが予定外じゃった。予定では緑平が自爆した時点でわらわ以外は退場してもらう予定であったのに。」
?「ああそれ?どうやら紛れ込んでいたみたい。」
巴「意図された介入ですか?」
?「ええ。さすがはお姉様・・みんなわかっておられた。そのせいでお姉様のコピーを壊されたけど(´・ω・`)がっくし」
・・
・・・・
ジェミニ「ご苦労様。老体には辛かったでしょう。」
FIRST「あなた様のお役に立てたと思えば喜びでいっぱいです。これでようやくひとつご恩返しができました。」
ジェミニ「返す必要のないことよ。」
FIRST「いえ・・ああ、あなた様に出会ってからもうすぐ90年になるのですね。」
FIRST「幼い私の前に現れてから、ずっと私はあなた様に救われて来ました。」
FIRST「恩返しがしたいとずっと思っていたのです。しかし、あなた様は完璧すぎた・・此度の機会を与えて下さり恐悦至極に存じます。」
ジェミニ「ならいいけど。あの子のわがままのせいだけどね。」
FIRST「ミルク様は勘違いなさっておられる。あなた様が人を選ぶのに基準などない・・」
FIRST「常に平等」
ジェミニ「どうかしらね。もしかしたらなにかあるかも・・クスッ。」
FIRST「人には計り知れぬことです・・もしよろしければ、お聞きしたいことがあるのですが。」
ジェミニ「どうぞ。」
FIRST「あなた様は以前言いました。破壊神の命で世界を滅ぼしに来たと。」
FIRST「なら、人類が滅亡してもよかったのではないですか?私を遣わす必要などなかったはずです。」
ジェミニ「神様は誰よりも高い精度で未来を見ることができる。天使に命じた成否も・・」
ジェミニ「その神様が世界を滅ぼせと言ったのに、私もあの子も失敗したわ。どういう意味かわかる?」
FIRST「神は、失敗することがわかってて天使様を遣わしたことになります。」
ジェミニ「・・天使は、神様の望むことを殆ど叶えられる。でも・・己の力を超えることには手が出せない。」
FIRST「では、あなた様が下界に来られたのは・・」
ジェミニ「天使の力でも解決できない”神の領域”に神様の悩みがあるから。」
ジェミニ「神様主導で計画が行われている。私やあの子はただの駒なだけ。」
ジェミニ「世界を滅ぼせなかったのも、神様の計画の一部。それだけよ。」
FIRST「神の計画・・それは一体、なんなのでしょうか?なにか恐ろしいことが起きているのですか?」
ジェミニ「いえ。知らなくても問題ないことよ。」
ジェミニ「もし知った人間がいたら・・ちょっと悲しむかもしれないけど。」
FIRST「悲しむ?」
ジェミニ「ええ。人間にとっては殆ど影響ないことよ。でも天使にとっては、とても悲しいこと。」
ジェミニ「それは、終わりの物語・・」
・・
・・・・
緑平「あの、質問いいですか?」
巴の母「はい、どうぞ。」
緑平「巴って婚約者がいるんですよね?」
巴の母「・・ああ、生まれたばかりの時ね。同じ時期に友人も出産したからそういう話があったわ。」
緑平「なら、僕はいちゃいけないのでは・・?」
巴と、その、付き合ってるわけで。
巴の母「そんな昔の話、お互い本気にしていませんよ。」
緑平「え?」
巴の母「向こうも彼女さん作って楽しくしていると思いますよ。」
え?え?
なんか話が違うような。
緑平「えーと、家のために政略結婚とかしないんですか?」
巴の母「時代が違いすぎですよ。家のことは親がなんとかします。娘は・・幸せならそれでいいです。」
あれ?
巴の母「娘を、よろしくお願いしますね。」
緑平「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
巴のお母さんとの話を終え、僕は考えた。
これはつまりあれか。
・・巴や紀一は勘違いしてたんだな。
まったくあいつらときたら。僕がしっかりしないといけないな。
?「・・」
緑平「あれ?A GIRL・・ミルクさんでしたっけ。」
?「あなたを見てると無性に構いたくなるわ。」
え?
僕はミルクさんに往復ビンタをもらった。
?「この無能この無能この無能この無能この無能この無能この無能」
ぺちぺちとロリ天使に往復ビンタをもらいながら僕は思った。
これはもう人類の手に負えないな、と。
END.