二週目木曜日
女の子がいる。
金髪ウェーブのロリっ娘。
?「最近私に対して敬意が無いんじゃない?」
なら敬意を持ってもらえるようなことしてくださいよ。
?「世界が滅ぶのを止める手段を人間に提供したわ。」
?「あのヴァーチャル空間が無ければ隕石で終わってたけど?」
?「世界を救うお手伝いをしてあげたのに、人間はまだ私になにか求めるの?」
・・・・ですね。
?「ご・う・よ・く♪」
いえその、ごめんなさい。
僕は人間の代表じゃないけど、人間として感謝します。
?「いいのよ。私にとってあなたは無能のカテゴリに入っているんですもの。」
?「無能がどれだけクズでも気にならないわ・・死んでも気にならないくらいね。」
そこは気にしてほしいなぁ。
まぁ一応世界を救ってくれたんだし・・
?「なんでこんなクズをお姉様は構うのかしらね。」
?「でも・・今回のことが終わればわかるわ。あなたに価値なんてないことが。」
?「そうすればきっとお姉様はあなたなんか捨てて、私を愛してくださるわ。」
僕を捨てたとしても、あなたを愛するとは限らないんじゃない?
?「・・これなにかわかる?」
平手。
?「正解♪」
パチン!
パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!
往復ビンタ痛い。
?「なんてむかつく人間なのかしら。」
?「お姉様がこんなのに気をかけてるなんて許せないわ。」
誰かわかりませんが、あなたのお姉さんはあなたのすることを喜んでいるんですか?
相手の望まないことをやっても愛されませんよ。
?「だからあなたを殺さないんだけど。」
・・衝撃の事実。てか僕は結構危機だったんだ。
あなたは僕になにをさせようとしているんですか?
あなたの言うお姉様が僕をその、気に入ってる?からだけなんですか?
?「以前言ったわよね?12人の中に別の目的も持っている人がいて、狙いがあなただって。」
はい。
?「その子からの希望もあるわ。今回の計画もその子によるものよ。私は別に、あなたが無能であることをお姉様に見せられればそれでいいし。」
?「あなたは絶対その子に勝てないわ。精霊に選んでもらった子だもの。」
・・精霊?
?「天使は神様の命があったときだけ動くの。だから人間のことなんて詳しくないわ。」
?「でも精霊は天地開闢の頃からずっとこの世界を見てきた。人間にも詳しいの。」
?「そして精霊は優秀な人間が好きで目をつけているのよ。いつか目を付けた人間が勇者になるとね・・」
?「精霊は自分が勇者に力を貸し、勇者は英雄となり、吟遊詩人に自分の活躍を語ってもらいたい・・ってね。」
吟遊詩人なんて今いませんよ?
?「昔の名残よ。人間の間で”精霊の加護を受けた勇者が魔王を倒した”って話をしてもらいたくてしょうがないの。」
?「それで選んでもらったのよ。現代の勇者をね・・その子があなたの知り合いだっただけ。そこは偶然よ。」
?「残りの11人は私が選んだわ。」
・・僕の知り合い・・?
ああ、でなければ僕を狙うという発想にはならないか。
知り合い?誰!?
?「一番怪しいのは誰かな~?」
・・勇者と呼ばれるほどの才能の持ち主・・
僕は、巴が思い浮かんだ。
僕たちの中で最も優秀。才能も、美貌も、家柄も、誰よりも優れている。
?「じゃあその子なんじゃない?」
にやにやとA GIRLは楽しそうだ。
・・罠?まさか自分でネタばらしはしないよね?
そんなことして何の意味がある?
いや、フェイクか!?
ジェミニ先生も、底知れない何かがある気がする。
そうだよ、巴は僕に色々協力してくれているじゃないか。
もし12人の中にいるのならおかしいことになる。
ジェミニ先生は、アドバイスとかくれたけど、直接協力してくれているわけじゃない。
怪しい!
?「どうかなぁ~、間違っている可能性もあるんじゃない?」
少なくとも、僕に協力してくれている紀一と巴は違うはずだ!
?「獅子身中の虫とも言うよね♪」
ふたりとも僕に協力することはあっても、邪魔することはない!
?「葦って知ってる?」
あし?
?「数年、時には数十年ずっと敵に仕え信用を得るの。」
?「そして・・ここぞという時に裏切る。」
?「裏切るまでは、信用できる仲間なの。ふふふ。」
ここぞという時に裏切る・・
そんなはずない!あいつらは悪いやつじゃないし、裏切ったりなんかしない!
?「だからこそ葦は重要なのよ。」
?「裏切るまでは徹底的に信用を得ようとするわ。」
?「そんなことまで?と思うくらい・・ね。」
じゃあ・・こんなにも僕に協力してくれるのは・・
?「最後の最後であなたを裏切るつもりなんじゃない?」
?「その時はどんな気分か教えてね♪」
う、嘘だ!
?「あなたが信じたいことと現実は違う。それすらわからないからあなたはクズなのよ。」
そこで僕は目を覚ました。
・・
・・・・
木曜日。
汗をびっしょりかいていた。
A GIRLはなにをしたいのだろうか。
というか、どう見ても僕を嫌っているようにしか見えないんだけど。
人間のためとは微妙に思えないまま学校へ向かった。
紀一「来たか相棒。」
緑平「なにかあった?」
紀一「昨日なにがあったかはわかるだろう?というか相棒の仕業だろ?」
あー、ヴァーチャル空間をめっちゃくちゃにしたあれか。
紀一「見ろ。」
携帯?
ああ、ヴァーチャル空間の様子か。
ええ!?
緑平「町が元通りになってる!」
紀一「いやそれはA GIRLが夢で言ってたろ。」
緑平「・・言ってない・・」
紀一「今朝の夢だぞ?」
緑平「違う話だったよ。えっと、往復ビンタされたり、12人の中に僕の知り合いがいるって話とか聞かされたり。」
紀一「・・へ、へぇ・・A GIRLがそう言ったのか?」
緑平「そうだよ。」
紀一「ダレナンダロウナァ」
ほんと、誰なのかまったくわからないや。
巴「興味深い話じゃな・・緑平、今まで誰かに現実で邪魔されたことはあったか?」
緑平「無いよ。でもA GIRLが言うには、葦じゃないかって。」
巴「なるほど、相手に大ダメージを与えるため、裏切るタイミングを計っている・・ということじゃな。」
説明不要で理解された・・葦って一般的な用語だっけ?
緑平「でもそんなこと言ったら、誰も信じられなくなるんだけど。」
巴「気になるならしばらくひとりで進めてみるというのは?わらわたちとて信用できるか怪しいはずじゃ。」
緑平「巴や紀一はそんなことないと思ってるよ!でもA GIRLが疑えー疑えーって。」
紀一「昨日で残り4人まで減ったから、あとは緑平だけでも大丈夫とは思うが・・んー。」
緑平「どうしたの?」
紀一「これを。」
紀一は携帯を見せた。
緑平「FIRSTの映像?それにこの機械は?」
紀一「昨日話があっただろ?30年後の超巨大地震・・その地震を抑える機械だ。」
紀一「今日・・日本時間で午前12時半に使うそうだ。それで世界は救われる。」
緑平「・・・・え?でもその話があったのって昨日じゃ・・」
ペース早すぎません?
巴「どうやらヴァーチャル空間のやり方もわかって来たとのことじゃ。効率重視で進めておる。」
巴「それにA GIRLが夢の中で言った通り、今週中にヴァーチャル空間は閉じられるらしいしのう。」
緑平「・・それも僕聞いてないや・・って、僕が12人を倒せなかったら人類滅亡なんだけど!」
巴「それが正しければ、今週中に決着をつけねばならぬな。」
・・ちょっとさ、ヴァーチャルに行ったりするのも楽しいかなって思ったりしてたけど。
終わりが来るのか・・って今日は木曜であって、今週もうすぐ終わるし。
巴「どうするかは緑平、お主が決めよ。」
緑平「どうするって?」
巴「A GIRLが言う通り、ギリギリで裏切るのだとしたら、最後は緑平ひとりでやるという選択がある。」
紀一「なるほど、それなら裏切りは防げるな。」
緑平「・・ちなみにお勧めは?」
巴「緑平がひとりでやることじゃ。己の役割を考えれば、万が一が許されぬことくらいお主もわかるであろう?」
僕が失敗したら、人類滅亡・・うん。
紀一「緑平ならひとりでもできると思うぞ。オレは相棒を信じる。」
緑平「紀一・・でもさ、A GIRLは僕のことクズ扱いしてるんだよね。」
紀一「なにそれ超うらやましいんだけど。今からでも変わってほしいぜ!オレもA GIRLからクズ扱いされたい!」
僕も変われるなら変わってほしい。
てか、このふたりが裏切るとかどう考えてもおかしいだろう?
完全に僕のこと応援してるじゃん。全然間違ったこと言ってないし。
紬「新情報キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
緑平「新情報?」
はっ、もしかして罠かも。
言葉で僕を間違った方へ誘導する可能性もある!
紬「SECONDの国民栄誉賞が決まりました!」
・・あ、そっち?
紀一「それはめでたいな。残念なのは、オレもA GIRLに選ばれたかったなぁ・・」
紬「あはは、そしたら国民栄誉賞もらえてたね。」
あれ?
SECONDは日本人だよね?
僕の知り合いがいるってことは、もうひとり日本人がいるんじゃないか?
いや、SECONDが知り合いだったという可能性もあるか?
残っているのは4人。
FIRST・・謎の多い人だ。国籍不明、90代。リーダー的存在。
FOURTH・・アメリカ人。生放送に出てたからその人で間違いないはず。
NINTH・・情報なし。
TWELFTH・・僕は一度この人にやられた。10代女性。学生。
・・僕の知り合いなら、学生の可能性が高い?
10代女性で学生・・TWELFTH・・偶然か?それとも・・
紬「ふふふ、そしてここからが極秘情報。」
紬「なーんと!A GIRLに選ばれた13人の出身地が判明!」
紀一「おおお!知りたい!」
天音「あ、それうちも興味ある。」
紬「まぁまぁみなさん落ち着いて。こほん、では発表します!」
紬が、メモした紙を見て発表する。
紬「北アメリカが3人、ヨーロッパが2人、北アジアが1人、東アジアが4人、南アジアが1人、アラブ(西アジア)が2人。」
紬「以上、計13人でした!」
紀一「・・国じゃないんだ。」
僕もそう思った。
三太「お前ら集まって無意味な話してんじゃねーよ!」
紬「意味あるもん!」
新枦先生「なんだなんだ?喧嘩は先生が責任とらなくていい学校外でやりなさい。」
おい!
三太「紬がA GIRLに選ばれた13人の出身とか言って、出身地域の情報を持ってきやがったんだよ。」
新枦先生「その情報じゃコメントしづらいなあ。」
巴「・・とはいえ未発表情報じゃな。情報元はどこかのう?」
うん、13人だから僕の情報も入っているってことだよね?東アジアに。
・・東アジア・・4人?多いなぁ。
SECONDさんと、僕(THIRTEENTH)が入る。
あと2人のうち、片方は僕の知り合い・・意外と合ってそう。
紬「ジェミニ先生情報だもん!」
新枦先生「なんて尊い情報だ。よし、教室の壁に貼ろう!」
巴「待つのじゃ。なぜジェミニ先生がそのような情報を知っておるのじゃ?」
紬「間違ってるの?」
巴「・・・・否定する材料はない。」
新枦先生「おい!人を疑うなど最低の行為だぞ!お前らにはジェミニ先生の優しさがわからないのか?」
三太「・・お前は生徒を信じろよ・・」
天音「だよねぇ。」
新枦先生は、紬からジェミニ先生のメモを受け取り、拝んだ後、前の黒板に貼った。
満足そうだ。
緑平「ねぇ巴、ジェミニ先生の情報って信用できそう?」
巴「裏情報がソースでよければ、合ってる。」
マジ?
緑平「でも僕の情報ってどこにも公開してないっていうか、知りようがないんじゃない?」
言って気付いた。
A GIRLが言っていたこと。
巴「お主が言ってた通りかもな。近くに裏切り者がいるやもしれぬ。」
紀一「でもさ、ジェミニ先生が知ってたってことは・・」
2パターンあると思う。
・ジェミニ先生が裏切り者。
・ジェミニ先生は裏切り者を通じて僕のことを聞いた。
どちらにしろ、裏切り者と関わりがありそう。
・・直接聞いてみないといけないかな。
・・
・・・・
緑平「ジェミニ先生。」
ホームルームの後、僕は思い切って声をかけてみた。
次の授業まで時間がないから、逆切れとかされて監禁とかの恐れは少ないはず!
ジェミニ先生「あなたたちの言ってるA GIRLと知り合いだから♪」
緑平「・・えーと。」
ジェミニ先生「どうしてあなたのことを知っていたか聞きに来たのでしょ?」
緑平「ええ、まぁ。」
ジェミニ先生「あの子が言ってたでしょ?お姉様って。それが私♪」
緑平「・・・・え!?」
僕がA GIRLに嫌われる原因だったお姉様って・・
ジェミニ先生だったの!?
ジェミニ先生「あの子が暴走してごめんなさいね。でも、気に入った子は苦労させたいの♪」
緑平「まぁ、はい。」
もうなにがなんだかわからずにいた。
頭がついていけません。
ジェミニ先生「ふふ、あなたのやりたいようにやっていいから。大丈夫、保険はかけてるわ。」
緑平「保険?」
ジェミニ先生「そう、保険。」
僕は意味がわからなかった。
えーとつまり・・ジェミニ先生は裏切り者じゃなかったってこと?
・・
・・・・
授業があるので教室に戻った。
紀一「どうだった?」
緑平「あー、違った。別ルートで情報を仕入れてたみたい。」
巴「別ルート?」
緑平「うまく説明できないけど、とりあえずジェミニ先生は裏切り者じゃないっぽい。」
巴「そうか・・」
紀一「振り出しに戻った感じか。」
A GIRLになにか目的があって今回のことを始めて・・
選ばれた12人が世界を救おうとしてて・・
12人の中のひとりに別の目的があって・・
ジェミニ先生が暗躍してて・・
そこに僕が参加させられてて・・
みんなの思惑がバラバラだから、全体像が見えないのかな。
こんな状態で、まともな終わりになるの?
・・
・・・・
昼休み。
紀一「今朝言った通り、今日の12時半、30年後に発生する超巨大地震を止める作業が行われる。」
紀一「ヴァーチャル空間の作業なんだが、どうやら現実でもちょこっと揺れるそうだ。」
緑平「地震を止めるためなのに地震が起きるの?」
紀一「要は、地震が起きる原因にアクセスするから、ちょっと影響あるってことらしい。」
巴「というのは建前じゃ。」
え?
紀一「でもそう報道されてるぞ。」
巴「ステルス隕石と違って、対処したことがわかりにくいのが今回じゃ。」
緑平「それってまさか、わざと地震起こして対処したことをアピールするの?」
巴「そういうことじゃ。無論、そんな話は報道されぬがのう。」
こんな短期間に色々考えてやってるんだなぁ。
紀一「それと、ヴァーチャル空間の表示が変わってたぞ。ほらこれ。」
紀一の携帯を見ると・・世界が滅ぶまでのカウントダウンが出ていた。
紀一「今はまぁ大体30年くらいだな。超巨大地震で世界が滅びることになっている。」
紀一「もし、A GIRLに選ばれた12人による対処が成功したら・・」
緑平「世界が滅びるまでの時間が延びるわけか。」
紀一「カウンターの表示が99年までだから、表示上はそこまでしか見れないみたいだが。」
緑平「12時半か・・今回はリアルタイムで報道するの?」
巴「しようがしまいが、ヴァーチャル空間で12人の様子は見れるのだから全世界へ中継しているも同然じゃ。」
それもそうだ。
緑平「そういやさ、昨日僕が壊した町が復旧している話だけど、僕その話聞いていないんだよね。」
緑平「A GIRLは夢の中でなんて言ってたの?」
紀一「よし、じゃあオレが実演してやろう!」
・・普通でいいんだけど。
うん、紀一のA GIRL好きは十分伝わってるから。
紀一「最初オレは夢だとは気付かなかった。」
紀一「オレの目の前に金色の髪をした美しい少女が現れた瞬間、すべての思考がストップしたね。」
紀一「この日が来るのをずっと待っていた。気が付けば、涙を流していたよ。」
紀一「A GIRLは優しく微笑んでくれた。」
紀一「そして優しくオレの涙を拭き取ってくれたんだ。」
紀一「”あなたは笑った方が素敵よ”そう言ってくれた。」
紀一「胸が締め付けられた。オレは今日、この日のために生まれてきたんだって悟ったんだ。」
紀一「自然と膝をついていたよ。ああ、これが天使様の御威光なんだなって。」
紀一「オレの人生はその時から始まったんだ。今までは準備期間だったんだと気付いた。」
紀一「生涯忠誠を誓おう。A GIRLのために生き、A GIRLのために死のう。」
紀一「そんなオレにA GIRLは言ったんだ。」
紀一「”あなたが幸せならそれで十分よ”と。」
紀一「涙で前が見えなくなったよ。オレはA GIRLのために何ができるのか?本気でそう思った。」
紀一「信仰とは、見返りを求めるものでも感謝することでもなく、ただ尽くすものだと思った。」
紀一「オレはA GIRLに尽くす。それがオレにできることだ。」
緑平「いつ町が復旧するの?」
巴「あまり長いと聞き飽きるのじゃが。」
紀一「10分もあれば終わるって。町の復旧話はその後な。」
長いよ!
巴「わらわが代わりに話そう。」
巴「今朝の夢でA GIRLが”ヴァーチャル空間の町は直しておいたよ”と言ったのじゃ。」
緑平「・・それだけ?」
巴「単なる報告じゃろう。A GIRLの用意した町じゃからな。A GIRLが直してもおかしなわけではない。」
まぁそうだけど。
紀一はこれだけのために、長い前振りしてたの?
紀一「続きはまた今度な!」
続き・・?
巴「紀一が時間を潰してくれたから、そろそろ12時半じゃ。」
紀一「有効な時間の使い方だった。」
要審議。
僕たちは12人、というか4人まで減ったけど・・様子をアプリで見ることに。
ログインしているのは3人か。
FIRST、FOURTH、NINTH
いないのは・・TWELFTH
FIRST「これより、30年後に起こるとされる超巨大地震を止める。」
FIRST「準備はいいか?」
FOURTH「もちろん!」
NINTH「はい。」
あ、NINTHが喋るのは初めてだ。
FIRST「アプリから見ている人は今朝から表示が増えたことに気付いたはずだ。」
FIRST「世界が滅ぶまでの残り時間が表示されるようになった。」
FIRST「今は・・当然30年だ。今回の試みが成功すれば、より長く伸びるであろう。」
FIRST「さて、TWELFTHには次の・・最後の危機に動いてもらっている。」
FIRST「みなも知っている通り、我々には時間がない。」
FIRST「ここのヴァーチャル空間が仕えるのは今週までだ。」
FIRST「それまでに、1秒でも早く人々が安心して生きられるようにしなければならないのだ。」
FOURTH「おじいちゃんそろそろ時間だよ。」
FIRST「っと失礼。ではこれより開始する!」
FIRST「現実でも少し揺れるところもあるが、世界が滅びるよりはマシな程度だ!」
FIRST「NINTH!」
NINTH「はい。」
名前を呼ばれたNINTHが、機械を作動させる。
ピーと音が鳴った後、静寂が場を支配する。
グラ・・
ちょっと揺れたのがわかった。震度1か2くらい?
紀一「おお!」
なにかあった?
携帯の画面を見て僕も気付いた。
世界が滅ぶまでの残り時間が増えていたのだ。
”世界が滅ぶまで、あと99年”
紬「99年カウンターストップキタ!」
いつの間にか、紬が僕の携帯を横から覗いていた。
紬「で、カウンターストップってなに?」
紀一「そこまでしか表示できませんってこと。表示上の限界。」
紬「じゃあ世界は99年後に滅ぶの?」
紀一「あくまでも表示だけだから。最低99年はA GIRLが保障したよってこと。それ以上はわからない。」
紬「なんで99年なんだろうね。1億年くらい保障してくれればいいのに。」
紀一「はは、そうだな。」
三太「んなことしたら、人間が無茶苦茶するんだろ。天使の保障があるからなにやってもいいんですって感じで。」
三太「バカが大金持ったらバカな使い方するのと同じで、天使の保障があるからって地球を荒らすやつが出るんだよ。」
三太「期間限定にすんの当然だ。99年でもなげーよ!」
紬「それありそう~」
天音「なあなあ、ラストミッションが出たで。」
ラストミッション?
携帯を見ると、メッセージが表示されていた。
”ラストミッション”
”その者たちはアフリカに現れ地球を支配する”
三太「侵略者か?」
紬「それって宇宙人?それとも海底人とか?」
天音「新人類かもしれんよ。キリンの進化のような。」
紬「昔のキリンは首が短かったってやつ?」
天音「突然変異で首の長いキリンが生まれたために、生存競争で首の短いキリンはいなくなったんや。」
天音「人類も、いわゆる新人類がアフリカから生まれるかもしれんやん。」
紬「ありそう!巴ちゃんはどう思う?」
巴「これだけではまだわからぬ。だがA GIRLに選ばれた12人ならピンとくるかもな。」
紬「そっかぁ。」
隕石、地震、そして侵略者で最後か。
なんか規模が下がっている気がする。
隕石は地球の危機。
地震は地球上の生命の危機。
侵略者は・・人類の危機だよね?
人類の危機?
僕が12人を倒さないと人類が滅ぶんだよね?
なにか関係があるのだろうか?
三太「でもさあ。もう99年は大丈夫なんだろ?新人類が生まれるのもそれくらい先ってこった。」
三太「もう放っておいてもいいんじゃねーの?どうせオレら生きてないじゃん。」
天音「ダメやで!うちらが死んでも子供や孫、ひ孫がおるやん。危機がわかってんならなんとかせなあかんよ!」
三太「そんな先まで面倒みないといけないのかよ。マジ勘弁してくれ。」
紬「もう三太くんったら!巴ちゃんもなにか言ってやって!」
巴「三太の言うことも一理ある。」
紬「えー!?」
三太「だよなだよな!ふふん、お前もわかってんじゃん。」
巴「詳細のわからぬはるか未来の話じゃからのう。それよりも現実に苦しむ者を救う方が優先すべき課題という考えもできる。」
巴「せっかく未知の環境で作業できるのじゃ。未来の苦しみより今の苦しみを取り除くことに使ってもバチは当たらぬと思うぞ。」
紬「ホームレスさんとか?」
三太「オレとか。」
天音「場末のアイドルさんとか。」
紀一「オレを救えるのはA GIRLだけ。あ、ちょっと会えればいいんで。」
みんな好き勝手言ってるなぁ。
今の苦しみかぁ・・確か日本の刑法犯罪は認知件数が100万件くらいだっけ。
だけど検挙率は3割くらい。
泣き寝入りする人、被害を受け苦しむ人、生活を壊された人・・
もし今の法律で犯罪が0になったら、どれだけの人が救われるだろうか?
巴「人類が滅びれば、苦しむ人はいなくなる。」
それはちょっと極端じゃない?
・・
・・・・
FOURTH「(・・FIRSTはああ言ってたが・・THIRTEENTHは本当に我々と同じ世界を救う側なのか?)」
FOURTH「(そして、私たち12人の中に異なる目的を持った者がいる・・?)」
その時FOURTHの回線に、NINTHからチャット申請が来た。
個別の会話をする時に使われるものだ。
他の人に知られず会話ができる。
NINTH「どうしたの?終わりが近くなってアンニュイなのかしら?」
FOURTH「そんなことないさ。ただ・・いいようもない不安を感じるだけさ。」
NINTH「いいようもない不安?」
FOURTH「このまま進んではいけないような、そんな不安さ。」
NINTH「私もよ。全然ピースのハマっていないパズルを完成品と言ってるような感じ。」
NINTH「FIRSTは事を急ぎ過ぎるわ。それとTHIRTEENTHに対して甘すぎる!」
FOURTH「やっぱりキミもなにかおかしいと思うかい?」
NINTH「ええ。TWELFTHはなに?世界を救うより優先することがあるっていうの?」
FOURTH「地震を止めた時のことかい?彼女が参加を断ったのはきっと外せない用事があったんだよ。家族のこととか。」
NINTH「能力的にはみんな優秀よ。それは私だって認めるわ。でも心がひとつになってない!」
FOURTH「それでもここまで進んでいるんだもんな。みんなの能力も、ここの設備も素晴らしいよ。」
NINTH「・・ねぇ、最後どうなると思う?」
FOURTH「天使様の計画だ。おかしなものにはならないさ。」
NINTH「本当に・・天使なのかしら?」
FOURTH「え・・?」
・・
・・・・
放課後になった。
紀一「さて相棒、どうする?」
緑平「どうって・・?」
紀一「12人を全員倒すまで相棒の戦いは終わらないだろ?」
紀一「でもさ、お前の周りに・・裏切り者がいるなら・・」
そうだ。
もし最後の最後で裏切られたら・・
でもひとりでやるということは、これまで手伝って来てくれた人たちを僕が裏切るという意味でもあると思う。
巴「緑平、変な感情などいらぬぞ。味方のフリをした敵というものは、そういった気持ちを利用してくるものじゃからな。」
巴「人類のため、絶対にお主は12人を倒さねばならん。感情的にならず、信念に基づき行動するのじゃ。」
巴・・そうだ、僕が失敗したら、人類が滅ぶ・・
緑平「わかった、ここからは僕ひとりでやるよ。」
紀一「大丈夫か?」
緑平「ワープ武器があればなんとかなるよ。」
爆弾を100個でも1000個でも1万個でも送り付ける!
巴「この世には正義も悪もない。結果を出すのじゃ。」
緑平「ああ!任せといて!」
僕はカバンを持って、家へ帰った。
徹夜してでも倒す!
紀一「・・さてと、オレたちも始めるとするか。」
巴「うむ。緑平はどう出ると思う?」
紀一「諦めると命を懸けるが半々ってとこかな。相棒は一線を超えたら死を恐れなくなるが、そこに辿り着くまでが長いから。」
巴「同感じゃ。」
紀一「あんま追い詰めんなよ。お前と違って普通の学生なんだから。」
巴「それは断る。もし乗り越えて来なければ・・その様な者はいらぬ。」
紀一「いらぬって、じゃあなんのためにこんな・・」
巴「愛する人には、最高の男であって欲しいのじゃ。なに、うまくいかぬ時は片想いのままでよい。」
紀一「・・相棒、諦めた方が楽かもな・・」
・・
・・・・
家に帰って早速アプリ起動!
この、”好きな場所に物を作れる機械”があれば怖いものなんてない!
お小遣い値下げ以外!
僕は早速12人のいるビルへ爆弾をワープさせ・・失敗した。
あれ、何度やってもうまくいかない。
なんで?
”警告:あなたの拠点が攻撃目標にされています”
緑平「え!?」
警告メッセージ?そんなのあるの?
しかもここが攻撃されてる?
まさか・・ワープしようとしているのがバレてた?
に、逃げなきゃ!
拠点のマンションから飛び出した。
その瞬間、背後が爆発して僕は空を舞った。
地面に激突したお尻をさすりながら振り返ると、拠点だったマンションは跡形もなくなっていた。
えーと、A GIRLが用意した武器とか作る設備が使えなくなったんですが。
残っているのは、僕の手に残った”好きな場所に物を作れる機械”だけ。
これを対策された今、どうしようもない!
・・手詰まりだ・・ひとりでやろうなんて間違いだったんだ・・みんなごめん・・
ジェミニ先生「泣いているの?」
緑平「え!?ジェミニ先生!?い、いやこれは・・いやーこのアバター本当に人間っぽく作られてますよね!」
ジェミニ先生「ふふ、そうね。」
緑平「・・あ、もしかしてチュートリアルしてくれたのも・・?」
ジェミニ先生「あれは私のコピーよ。昔作ったのだけど、あの子が勝手に持ち出していたみたいね。」
ジェミニ先生「あんなの壊しておいたから。」
コピー?
ってーと、クローンみたいなもの?
いや、クローンは赤ちゃんから育てなきゃいけないから、同じ歳のクローンはありえないはずだ。
じゃあ別の方法・・現代技術じゃないよな。
だとするともしかしたら、ジェミニ先生も人間ではなく・・そして天使がお姉様と呼ぶくらいだから・・
ジェミニ先生「諦める?」
緑平「え?」
ジェミニ先生「辛かったら諦めてもいいわ。ここまでよくがんばったわね。」
緑平「でも、僕が12人を倒さないと人類が滅ぶって・・」
ジェミニ先生「それはこっちで防いであげる。したくないことを無理にする必要なんてないわ。」
やめていいの?
もう終わりにしていいの?
僕は、肩の荷が下りた気がした。
静かに溜息をつき、体の力を抜く。
緑平「あの、結局なんだったんですか今回の件は?」
ジェミニ先生「世界が滅びようとしたのは本当よ。」
ジェミニ先生「あの子はあなたの無能さを私に教えるついでに、世界も救おうとしただけ。」
あの子っていうのはA GIRLのことかな。
僕の方がメインだったのか。
緑平「12人の中に別の目的を持った人がいて、僕が狙いとか聞いたんですがそれは・・」
ジェミニ先生「それは教えられないわ。あなたはそこまで辿り着いていないんですもの。」
緑平「ダメですか。」
ジェミニ先生「その子は本気であなたとぶつかろうとしている。逃げるのなら、あなたにその資格はないわ。」
逃げるのなら・・
緑平「じゃあ、僕がそこに辿り着いたら教えてくれますか?」
ジェミニ先生「言わなくてもわかるわ。その子が誰なのか。なぜあなたなのか。」
緑平「ならまだ諦めません!・・あ、失敗したら、その時は人類をよろしくお願いします。」
ジェミニ先生「ええ、いいわ。」
・・と言ったものの、どうすればいいかわからない!
緑平「あの、アドバイスなんかあったら・・」
ジェミニ先生「あなたの優位性と、向こうの優位性を考えなさい。自分の得意なフィールドで勝負すれば有利になるわ。」
僕の優位性・・向こうの優位性・・僕の得意なフィールドで戦う・・
ジェミニ先生「じゃ私は行くわ。女の子を悲しませないでね。」
緑平「はい!」
行くぞ!最後の勝負だ!
僕の優位性は、残機があること。あと一回死ねる!死にたくないけどね!
向こうは一度やられればGAMEOVERだ。
そして向こうに僕の情報を知られていないこと・・まぁ1人知ってる人がいるだろうけどさ。
リアルタイムではわからないはずだ。
対して僕は、向こうの様子がわかる。
僕の武器は・・”好きな場所に物を作れる機械”と、この体・・
・・ひとつ案が思いついた。でも・・こんなやり方が可能なのか?
好きな場所に物を作れる機械「出来ますよ。」
緑平「・・喋れるのお前?」
好きな場所に物を作れる機械「喋れないように作ってないのなら、喋れて当然ですよ。」
いや待って、その理論はおかしくない?
緑平「じゃあ・・・・・・は、できる?」
好きな場所に物を作れる機械「もちろん。山も家も武器も人体も同じです。最小の存在にまで落とし込めばみな同じ。」
緑平「空も同じ!」
好きな場所に物を作れる機械「空は空間なので別です。」
そうなんだ(´・ω・`)空間?
好きな場所に物を作れる機械「山を構成しているのは地面です。地面がえぐられれば山ではなくなります。」
好きな場所に物を作れる機械「海を構成しているのは海水です。海水がなくなれば海ではなくなります。」
好きな場所に物を作れる機械「空を構成しているのは空そのものです。空には空気がありますが、空気がなくても空は空のままです。」
好きな場所に物を作れる機械「これは、空が物質ではなく空間によって成り立っているからなのです。」
日本語でお願いします。
難しい話を聞いてちょっと落ち着いた。
よーし、後は覚悟だけだ!
・・まだ覚悟できていません!
・・
・・・・
トイレ行って覚悟してきた。
あと親のパソコンも借りた!
準備して・・僕は4人のいるビルへ向かった。
緑平「こーんにーちはー。話し合いに来ましたー!」
ドキドキ、ドキドキ。
がちゃ。
誰か出てきた。
FOURTH「話し合いと言ったな?」
FOURTHさん!アメリカのテレビに生放送で出たアメリカ人。
緑平「はい。今週でこの空間も無くなります。」
緑平「しかし、未だ謎だらけのままだと思いませんか?」
FOURTH「お前はすべての謎を埋めてくれるのか?」
緑平「わかりません。お互い持っている情報を交換しましょう。」
緑平「すべての真実が明るみになったとき、僕たちはすべて納得いくと思うんです。」
FOURTHさんは目を閉じて少し悩んでいた。
・・リアルで考えればいいのに、わざわざアバターの目を閉じさせるとは・・
FOURTH「わかった。入れ。」
緑平「ありがとうございます。失礼します。」
FOURTH「ただし、武器がないかチェックさせてもらう。」
武器チェックを受けて・・入場許可が出た。
第一関門を突破した。
FOURTHさんに案内されビルの奥へ向かう。
FOURTH「・・質問はみんなのいるところで行うつもりだ。」
FOURTH「だが・・お前の攻撃は慎重だったりおざなりだったり幼稚だ。」
はうっ。
その通りです!
FOURTH「呼びかけも子供っぽい。」
まぁ、友達を誘う感じだからね。
FOURTH「しかしこうして少し話をしただけでわかる。」
FOURTH「お前は礼儀正しい子供だ。冷静で言葉に説得力がある。」
FOURTH「子供にも犯罪者はいる。だがどこか社会の不満や欲望、狂気が見え隠れしているものだ。」
FOURTH「お前からはそれがない。いいところで育った真っ当な人間に見える。」
緑平「いいところってほどではありませんが、普通の家庭で普通に育ちました。」
FOURTH「だとすると私がプロファイルした結果・・お前は悪人ではないことになる。」
FOURTH「みんなの元へ行ったら、その辺も聞かせてもらおう。」
す、すごい。
こんな短時間で色々わかっちゃうものなんだ。
・・いきなり不安になってきた。
ボク コンナノ アイテニ シナイト イケナイノ?
・・
・・・・
案内された部屋には他の3人が待っていた。
この中に・・僕の知り合いもいるのだろうか?
FIRST「よく来てくれたTHIRTEENTH。歓迎しよう。」
NINTH「歓迎?どれだけの仲間がこいつにやられたと思うの!?」
FOURTH「落ち着くんだNINTH。まず話を聞いてみよう。キミも・・疑問に思うことはあるだろう?」
NINTH「・・そうね。」
NINTHさんは女性なのかな?
FIRSTさんはおじいちゃんって以前言われてたし男性・・だよね?
FOURTHさんは男性で、TWELFTHさんは女性。
年齢も性別もバラバラなんだな・・
FIRST「すまぬな。」
緑平「いえ・・僕がみなさんを攻撃していたのは本当ですから。」
緑平「恨まれてもおかしくないと思っています。」
NINTH「意外!もっと気が狂った殺人鬼みたいだと思っていたわ。」
NINTH「普通の人に見えるわ。」
FOURTH「歳は聞いていないが、子供だと思う。」
NINTHさんが僕を見た。そうなの?と聞いているような気がした。
緑平「えーと、10代です。」
NINTH「若いわね。SEVENTHやTWELFTHと同年代じゃない。」
そういや、FOURTHさんの生放送で王族の人が10代とか言ってたっけ。
それがSEVENTHさんか。
ちょっと現時点でみなさんの情報をまとめてみよう。
1.FIRST
90代の男性。リーダー的存在。僕に好意的?
2.SECOND
日本人。地雷で最初の犠牲者になった人。
3.THIRD
超地中貫通爆弾で犠牲になった人。
4.FOURTH
アメリカ人。テレビの生放送に出た。男性。
5.FIFTH
喫煙者。爆弾で犠牲になった人。
6.SIXTH
超地中貫通爆弾で犠牲になった人。
7.SEVENTH
アラブの王族。10代で大学を卒業済み。
超地中貫通爆弾で犠牲になった人。
8.EIGHTH
AI付ライフルで犠牲になった人。
9.NINTH
女の人。
10.TENTH
超地中貫通爆弾で犠牲になった人。
11.ELEVENTH
喫煙者。爆弾で犠牲になった人。
12.TWELFTH
10代の女学生。僕は一度この人にやられた。
13.THIRTEENTH
イケメンで超強くてかっこいい。みんなのヒーロー。
・・だったらいいなぁ。僕です。HOMOではありません。
殆どわからないってことがわかった。
大半がただの犠牲者って・・僕の仕業だけど。
FIRST「では端的に聞こう。キミはなぜ私たちを攻撃してたのかね?」
緑平「ある日、僕の携帯にアプリが入っていました。」
緑平「天使のアイコン。そして13というアプリ名。」
FOURTH「へぇ、じゃあTWELFTHが名付けたTHIRTEENTHは当たってたんだ。」
それは僕も驚いた。
緑平「はい。そのアプリを起動した時に注意事項がいくつか出てきました。」
緑平「その中のひとつに・・僕が12人を倒さないと・・人類が滅ぶ・・と。」
NINTH「そんな嘘よ!だとしたらおかしいわ。A GIRLは私たちとあなたを共に任命しておきながら、その実争わせてたなんて!」
FOURTH「というか、その条件で人類が滅ぶっていうのが謎だ。」
緑平「僕もそう思います。でもA GIRLからも直接そう言われたんです。」
緑平「12人を・・みなさんを倒さないと人類が滅ぶって・・」
NINTH「・・」
FOURTH「お互い人類を守るために動いていたってわけか。」
FOURTH「お前もA GIRLに選ばれたひとりってことで・・じゃあこっち側にひとり裏切り者がいるわけか?」
それは僕しか聞いていないのか。
緑平「違うみたいです。A GIRLは言ったんです。」
緑平「みなさんは世界を救うために選ばれた人たちで、僕は人類を救うために選ばれたって。」
FOURTH「裏切り者はいない・・のか?」
FIRST「それには私も同意する。これまでみんな世界のために活動してきた。」
FIRST「手を抜いたり、陥れたりした者はいない。みんな仲間だった。」
NINTH「・・そうね。」
FOURTH「まぁな。」
FIRST「以前、私が無責任に煽ってしまったせいだ。本当にすまない。」
NINTH「別にいいわよ。でも・・世界を救うのと、人類を救うのは別なの?」
その違いを具体的に教えてもらえなかったんだよね。
違うことだよーってことしか教えてくれなかった。
FOURST「こちらを攻撃する理由はわかったし、裏切り者もいなくてよかったよかった・・だが、謎が深まったな。」
NINTH「そうね。場合によっては、私たちが成功したら人類滅亡、失敗したら世界滅亡という可能性があるわ。」
NINTH「ちょっとTWELFTH、あなたもなにか話しなさいよ。席を外しているの?」
TWELFTH「いえ。言葉の真偽をはかっていました。」
FOURTH「嘘の可能性か。こちらを惑わすための・・」
え?
あ、いやまぁそう疑われるのもおかしくないか。
僕は今まで攻撃しまくってたからなぁ。
絶対殺すマンになってたし。
TWELFTH「嘘の可能性は低いと思います。嘘をつくなら、私たちの中に裏切り者がいるという方向で話をする方が普通です。」
NINTH「・・なるほどね。ただの降伏という可能性は?うまく仲間になろうと近づいているんじゃない?」
TWELFTH「その場合、新たな謎を作る必要はありません。THIRTEENTHも世界を救うために選ばれたでいいと思います。」
TWELFTH「敵を作ることで私たちの動きを活性化させようとした、裏切り者がいると思いそいつを倒そうとしたなど、言い訳はいくらでもできます。」
NINTH「なるほどねぇ。」
FOURTH「FIRST、どうする?」
FIRST「そうだな・・」
あ、もう結論?
緑平「あの、僕の方からも質問してよろしいでしょうか?」
FIRST「もちろんだ。お互い意見を交わすことで新たな真実が見えてくるだろう。」
FIRST「一方的な話し合いは真実を隠す。都合のいい真実を求めるのと同じだ。」
緑平「では・・A GIRLから聞いたのですが、12人の中に僕の知り合いがいるみたいです。」
FOURTH「!?」
NINTH「へぇ・・」
緑平「それが誰か知りたいのですが、えっと・・SECONDさんのことを教えてもらえると助かります。」
FOURTH「・・お前は日本人か!?」
NINTH「SECONDが日本人だから・・」
緑平「はい。少なくとも、見た目が外国人の知り合いはいませんから。」
A GIRL以外。
FOURTH「FIRSTのプロファイル通り、UTC+9の国だな・・」
FOURTH「なるほど、礼儀正しいわけだ。」
FIRST「彼は三重県というところに在住している。キミは?」
緑平「長野県です。三重は隣県ではないですし、知り合いに三重の方はいません。」
緑平「たぶん違うかと・・」
NINTH「SECONDが嘘をついている可能性は?」
FIRST「IPから調べた情報だ。偽装していなければまず正しいだろう。」
緑平「IPってIPアドレスですか?そんなことまでわかるんですね。」
TWELFTH「市町村までならわかる。」
へぇ・・IPから住所を調べるって、合法・・だよね?
(※合法です。ただし市町村までしかわかりません。精度も100%ではありません。個人を特定するほどの情報は得られません)
(容疑者の特定や民事裁判に必要など、特別な場合は警察または弁護士などを通じて個人情報の取得を申請できます)
FOURTH「国籍を公開していない人は4人いる。ここにいるメンバーでは、私以外の3人がそうだな。」
FOURTHさんはアメリカ人。
他の、FIRSTさん、NINTHさん、TWELFTHさんは国籍非公開か・・
NINTH「私は日本人じゃないわよ。」
FIRST「私も違う。」
TWELFTH「・・私も違う。」
緑平「そうですか・・」
FOURTH「SIXTHに聞いてみたが、日本人ではないそうだ。」
誰?と思ったけど、国籍非公開は4人いたんだっけ。
本当に違うのか、誰かが嘘をついているのか・・
確認しようがないなぁ。
FIRST「お役に立てないようですまない。」
緑平「いえいいんですよ。相手はそのことを隠しているようですし・・なぜかは分かりませんが。」
NINTH「謎が増えていくわね・・もしかしてそれが狙い?時間稼ぎとか・・」
緑平「い、いえ違いますよ。全部本当の話です。」
FOURTH「敵っぽくないけど、味方と言い切るのもどうかと思う。」
FOURTH「FIRST、判断は任せる。」
FIRST「私にもわからぬ。どうだろう、ここを見ている人々のコメントで判断するというのは。」
NINTH「FIRSTにしては意外な選択方法ね。構わないけど。」
FOURTH「異存はない。」
TWELFTH「私も同じ。」
FIRST「では世界中のみんな頼むぞ。THIRTEENTHが信用できるか、どうしたらいいか書いてくれ。」
「信用できない。」
「迷う・・が、どちらかというと信用できない。」
「THIRTEENTHなど殺せ!そして世界を救ってくれ!」
「まあ様子見で。」
「とりあえず拘束しておく。」
「A GIRLがこんな矛盾したことをするはずがない!THIRTEENTHは嘘をついている!」
「これも策略なんじゃね?とりあえず信用できない。」
「悪いな。おいしい話とTHIRTEENTHは信用するなってばっちゃが言ってた。」
「信用するわけないだろ。」
僕を信用する意見が0件なんですが。
こういうのって、少数でも多少は信用されるものじゃないの?
面白半分にとかさぁ・・いやそんな票でいいかと聞かれたら考えものだけど。
FIRST「圧倒的だな。」
緑平「信用されないのはわかっていました。今までの実績を考えたらまぁ・・」
FOURTH「とりあえず拘束しとくか。ログアウトされたら意味ないけど。」
緑平「一応、話し合いが決裂したときを想定していましたけどね。」
FOURTH「武器はないはずだ。ログアウトかい?」
・・この余裕っぷり、もしかしてログアウト強制不可とかか?
緑平「武器はありますよ。いえ、具体的にはこれから作るんですけどね。」
NINTH「どうやって?」
緑平「こうやって。」
僕は歯に仕込んでいたスイッチを入れた。
僕の体内で、目的のものが作られる。
武器がダメなら、武器を作る道具があればいい。
”好きな場所に物を作れる機械”を使い、僕の体に・・”スイッチひとつで反陽子爆弾”になるものを埋め込んだ。
反陽子爆弾。
原爆や水爆をも上回る威力を持つ理論上の兵器。
あまりの強力さに地球破壊爆弾と呼ばれることもある。
つまりは、少量で高威力が期待できる。体内に作れるほどの小型サイズでもこの辺一帯を一掃できるくらいはね。
僕の勝利だ。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
携帯の画面が白く黄色く光りに包まれた。
”あなたの命はあと1つ”
ギリギリの戦いだった。
僕の持つ優位性。
残機システムと、情報。
それをうまく使っての勝利だ!
”残り2人・・それで人類は救われる”
え?
待って・・まだ終わってない?
嘘でしょ?
パソコンの画面を見てみた。
”FOURTH GAMEOVER”
”NINTH GAMEOVER”
また倒せなかった・・FIRST。
それに、TWELFTH・・なんで?ここまでやってもダメなの?
FIRST「お主も残ったか。」
TWELFTH「THIRTEENTHは、AI搭載の武器やワープ武器など未来の武器を使っていました。」
TWELFTH「しかしどんなに無限の可能性を秘めていても、人間の想像を超える武器ではありません。」
TWELFTH「なら簡単です。想像の範囲内の武器すべてに対抗できればどんな攻撃も防げます。」
FIRST「よい答えだ。では続きをしよう・・侵略者から人々を救わなければな。」
TWELFTH「THIRTEENTHはどうしますか?」
FIRST「来たら対応すればよい。THIRTEENTHが己の役割を全うするように、我らも役割を全うする。」
TWELFTH「わかりました。」
この人たちに常識は通じないのだろうか?
もう何も思いつかない。
残機もない。命がなくなれば・・それは僕の死だ。
僕だけが持っている有利な情報もない。
強い、強すぎる・・
「やばかったな。でもさすがFIRSTとTWELFTHだぜ!」
「地球の未来をよろしくお願いします!」
「おいおい、残ったのが90代の爺さんと、10代の女学生かよ・・」
「すげえ、年齢も性別も真逆だ。」
「・・優秀な人を突き詰めていくと、こうなるんだな。」
「ふたりの国籍が知りたい!」
「当然アメリカだろ。」
「いやロシアだ!」
「火星」
火星?
とにかくどうしよう。
僕に次の手はない。でも諦めたくない!
・・ダメだ。何も思いつかない。
こういう時は、休もう。少し仮眠をとって頭をスッキリさせれば違う案も出るはずだ。
・・
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