転機
コメントいただけてとても嬉しかったです!!
これからも自分のペースで頑張りたいと思います!!
死んで人ではないものになったこと。同じ人を喰ってしまったこと。ここに来たあとのこと全てを絞り出すように話した俺に、鳥人が放った一言はこれだった。
「寝言は寝て言え」
言うんじゃなかった。
「私は転生だとか生まれ変わりだとか、そんな話が大嫌いなんだ」
「いや…知りませんし」
「適当なことを言ってこの場を逃れたいとか、そんなことを考えてるのではないのか?私の鏡を壊した理由にはなってないと思うが」
「そんなことを言われても、…困ります」
元から化け物であるこいつらに化け物になったことの困惑を話したって通じないだろう。やっぱり言うんじゃなかった。
「そもそもだ。お前はその姿になって絶望したとか言っていたが、それの何が問題なんだ」
「貴方たちにはわからないと思いますよ。得体のしれない者になることの恐怖が」
「そんなものか?だがな、なってしまったものは仕方がないことだろう。前向きに生きろ」
それができれば苦労なんてしない。そもそも前向きと言ってもどのようにこの世界で生きればいいのかもわからないのだ。何がしたいのか、何をするべきなのか。やりたいこともわからないのに前向きもへったくれもあるか。適当なことを言うな。
そんな不満が溜まったせいか、イラつきの溜息が出てきた。すると鳥人の方もムッとした表情になる。
「何だその態度は、ふざけるな」
「仕方ないでしょう。俺は貴方のような考え方はできない。そんな単純にできていないんです」
「はっ。随分と口が回るようになってきたじゃないか。部屋に来た時とは別人のようだぞ」
「…それは」
確かにそうだ。こっちに来てから俺が同じ土俵で話せたのはこの鳥人が初めてだった。
「…多分、あなたのおかげです。ありがとう」
「はっ。よくわからないところで素直だな、お前」
「すみません」
「謝罪がほしいわけじゃない」
「ふっ」と、先ほどまでと異なるように鳥人は笑う。
「もし」
「あ?」
「もし、貴方が俺の立場ならどうしますか。違う生き物になってしまったら」
前向きに生きろ、と鳥人は言った。俺にはその考え方ができない。だから知りたくなった。どういう風に考えればいいのか。
鳥人はふむ、と前肢の翼に顎を乗っけるようにして考え事をする。
「知るか。そう言いたいところだが、そうだな。もし私ならどちらかに徹底して生きる」
「どちらかに徹底してって?」
「お前で言うところの人間か、化け物か、そのどちらかとして生きるってことだ。その方が楽だろう。中途半端な立ち位置で生きるよりも」
その考え方は、ここに来てからの俺の悩みを吹き飛ばすような光のように思えた。
悩む必要なんて、最初からなかったんだ。
「じゃあ、俺は」
前みたいに、今までそうしていたように。
「人として、人間として生きたい」
「そしていつか、貴方達と闘います」