見慣れぬ姿
書き始めてから一ヶ月が経ちました!
これからもゆったり続けていきたいと思います!
「お目覚めですか」
部屋の入口の方から声が聞こえる。そこには今まで何度も見た顔がそこにあった。中年だ。
「あまり手こずらせないでください。あの場の処理、ここまであなたを運ぶこと、全部押し付けられたのは私です」
「処理…」
そこまで言われて自分がどうしていたのかを思い出す。ひたすらに嘔吐して気を失い、謎の幻覚を見ていたことを。
そして再び吐き気が俺を襲った。思わず手で口をふさいだが、流石にもう何も残っていないのか、体からは何も出なかった。
「その様子では再び歓迎会に参加するのは不可能ですね」
「当たり前だ!…俺は人間なんです。あんなものを見せられて飯なんて食べられませんよ」
「人間?」
不思議そうに顔を傾ける中年。どういうことなのか、最初はそう思った。だが、少し考えればわかることだった。
ここは魔界で、純粋な人間なんて家畜と呼ばれていたあの人たちだけだ。俺とすれ違う化け物たちはみんな子供を愛でるような優しい雰囲気を出していた。そして、俺はここで生まれた。
---つまり、俺も。
鏡を探した。部屋には見つからなかったので、また部屋を飛び出し、目についた部屋全てに飛び込んだ。中にいる化け物たちには目もくれず、漁るように鏡を探した。
しばらくして、小さな手鏡を見つけた。食い入るようにその鏡を覗いた。
そこには緑色の鱗が見えた。ぎょろりとした黄色い目もあった。裂いたような大きな口も見えた。頭の方を映してみると、できものだと思っていたものが見えた。小さな角だった。
---俺も、化け物の姿をしていた。
思わず持っていた手鏡を落としてしまった。破片が飛び散り、それを踏んでしまった。全く痛くなかった。血が出たかと思ったら、よくわからない苔のような色の液体だった。
「あ…ぁ…」
悪い夢だ。これは悪い夢なんだ。人が、俺が、こんな化け物になるはずがない。
こんな非現実なことがあるわけがないんだ。でも、だとしたら、どこから夢なんだ。
再び目覚めた時から?肉を食った時から?最初に目覚めた時から?それとも死んだ時から?
「おい」
そこまで考えて、また頭がパンクしそうになった。ここに来てから考えることが多すぎる。
俺を呼び止めたのはこの部屋の女性だった。顔から胸にかけては人と同じような姿をしているが、翼が生えており、胸から下は鳥のようだった。
「勝手に私の部屋に入って、私の物を壊して。いったい何のつもりだ」
「…すみません」
「謝罪が聞きたいんじゃない。理由を説明しろ」
「…」
話したところで、この悪夢からは抜け出せない。そう思い、黙って部屋を出ようとすると。鳥の足で腕を掴まれた。
「いててててて!!」
「ふざけた奴だな。良い度胸だ。全て話すまで離さないぞ」
そう言った鳥人はそのまま俺を引きずり込み、話し始めるまでずっと爪が腕に食い込んだままだった。