ここはどこ?
「おう、見えてるな?」
目を開けたらそこには白い肌の金髪ロングの男が俺に向かって手を振っていた。
「…ここは」
「おう、もう意思疎通までできるのか。結構結構。こいつは早速使えそうだ」
男は立ち上がり、後ろにいた黒ずくめで小太りの中年男性に何かを呟くと部屋を出て行った。
「あの」
「はい」
未だ部屋に残っている中年に対して質問をする。ここはどこなのか、何故自分はここにいるのか、腹部の傷は誰が治してくれたのかと。
しかし、中年は不思議そうな顔をしたあとに「おめでとうございます」と言って部屋を出て行った。
どういうことなんだ。そう思って頭をかくと、頭に硬いデキモノができていることに気づいた。
「何だこれ」
部屋を見渡して見るが鏡がないため確認することができない。
それにしてもださい部屋だ。黒い壁に黒い床、おまけに今自分が座っているベッドも黒い。家具は置いてないうえに窓もない。唯一黒くないのは部屋の真ん中で燃えている大きめのキャンドルだけだ。ずっとここにいると頭がおかしくなりそうだと思い、部屋を出た。
「うわっ」
「あっ、すみません!」
すると、部屋の前に立っていた誰かにぶつかった。俺は無事だったが、相手は倒れてしまった。
「大丈夫ですか?怪我とか、血とか出て……」
そこまで言ってハッとした。目の前にいるのは人間ではなかった。確かに人と同じ形をしているが、顔が崩れている。まるで映画で見たゾンビだ。そんなことを気にしていると、ゾンビの目から何かがぼろっと落ちた。目玉だ。
「あらあら、すみません。本当は付けなくてもいいものなんですがね。戦利品みたいなものなんでもらってみたんですよ。…どうしたんです?」
そう言われて気がついた。俺は腰が抜けて全く動けなくなっており、手も足も動かせず、口がパクパクと間抜けに動いているだけだった。
「あぁ、驚いているのですか?なるほどなるほど、納得です。まるで人間みたいですね」
感心するようにゾンビはポンと手を叩いた後、俺に手を差し伸べた。
「さぁ、行きましょう。パーティが始まりますよ」
何だパーティって。喰われるのか。ここはもしかして地獄なのか。
色々聞きたいことがあった。喋っているつもりだった。しかし、口からは何もでなかった。つい先ほどの死の直前の時のようだった。俺は全く抵抗できず、ゾンビに引っ張られて奥の部屋に連れられた。
「私は呼ばれていませんので。入ることはできません。ではごゆっくり」
ゾンビはお辞儀をすると来た道を静かに歩いて行った。一人取り残された俺は、目の前の大きな扉を開いた。
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