エスケープ・パニック
海の日ですね!私はもっぱらニコニコ動画でRTA動画を見てました。至福の三連休でした。
こちらに向かってくる多くの魔族。
あるものは顔がなく、あるものは頭がなく、あるものは体がなく…、とにかく色々な魔族がこちらに向かっている。
しかし、目のないものたちはどうしてこの書庫の階に来ているのだろうか。本なんて読めるのだろうか。
…いや、今そんなことはどうでもいい。
とにかく今、俺たちはピンチに陥っている。
「お、おい。竜、どうする?」
「竜じゃ…、何でもないです。今考えてますから…」
全く解決策が思いつかないのが問題ではあるが。
今ここでさっさと階を上がった方が良いのだろうか。いや、それはあまりよくないはずだ。
仮にここで脱走がばれて追いかけられることになったら不利だ。この至近距離であの数、俺だけならまだしも何の武装もしていないディスプさんが無事に逃げ切れるとは思えない。
何とかして脱走したと思わせないで切り抜けるしかない。そのためにはどうすべきだ…?
「おい、そこのお前」
タイムリミットが来た。
俺たちの目の前には全身包帯でぐるぐる巻きになっている男が立っている。マミーだ。
その後ろでは、未だ何体もの魔族がこっちに視線を向けている。
「そこの人間と何をしている。それは先ほど受け入れた人間のはずだ。食肉にするにはまだ早いはずだが?」
「それは」
「…お前、もしや例の人間ごっこの竜人か。人間を助け出そうとでもしているのか?」
これほど普段の行いを反省したことはない。
この魔族が住む城の中で俺は有名となりつつある。常日頃「人間だ」と叫び続けているためだ。そのせいで俺は変な奴としてほとんどの魔族に認知されている。
「どうなんだ。答えてみろ」
どうする。
ここを切り抜けるためにはどうすればいい。
沈黙が数時間流れたように感じた。そしてその沈黙を破ったのは俺の出まかせだった。
「違います。これは助けているのではありません」
「ほう、では何をしている?」
「それは、彼の、手を見てください。怪我をしているでしょう。その手を治療しに行くのです。悪化して死なせてしまっては問題があると思いまして」
「治療か。ならば人間の治療を行う魔族に知らせればいいのではないのか」
「仰る通りです。それで、それを伝えてしまったんです。患者として人間を連れていくことになりました」
「人間を?何故だ」
「忙しいそうなので」
「他に治療を行う人間はいるのか?」
「い、え。いないです」
「ならば何が忙しいのだ」
「家族…サービスがあるらしいです」
「家族サービスか。…なるほど、あの方ならあるかもな。だが、それはそうとして何故手錠も足枷を着けていない?逃げられる可能性を考えなかったのか」
「足枷は、ですね。階段を上らせるのに不便であると思いまして。それで手錠は、この、手では抵抗も意味がないだろうと思ったので。そして、万が一逃げられた時、先ほど受け入れられた、この人では魔族からは逃げられないだろうと思ったためです」
「ほう」
マミーは口を閉じて思考を巡らせた。話の結果を出そうとしている。
「まぁ、いいだろう。怪しげな行動は控えろよ」
そう言うとマミーは俺たちに背を向けた。その後ろにいる魔族たちもまた、俺たちから距離を離していく。
何とかなった。なってしまった。なるとは思わなかった。
まさかこんな穴だらけな回答でしのげるとは思わなかった。全体的に言葉に詰まっていたし、ところどころ文になっていなかった。何より質問と答えがあっていないような気がする。
治療をするというなら結局人間を助けているということになるし、逃げられないだろうと思っていても反抗を阻止するために普通は拘束具を付けるだろう。改めてなぜこんな答えで切り抜けられたのかがわからない。だいぶ前に鳥人が言っていたように、魔族の平和ボケのせいなのだろうか。
「おい、竜。何とかなったんだろ。行こうぜ」
「え、あぁ。そうですね!」
そうだ。こんなところに長くいることはない。
急いで階段を上がり、もう一つの書庫の階を静かに駆け抜け、武具庫の階へたどり着く。
音は聞こえない。今のところ誰もこの階には来ていないようだ。
数ある武具が閉まっている部屋の中から緑色の扉の前に立り、その扉を開ける。そこには人型の魔族用の鎧が数多く飾ってあった。




