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昏き剣の物語  作者: 緋龍
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第1部 第1章 第2話 旅立ち

このペースを持続したい今日この頃です。

第1部 第1章 第2話 旅立ち


 翌日、日が昇ると同時に目を覚ます。ここ数年続けてきた生活だ、たとえ眠る時間が遅くとも体が勝手に目を覚ますようになっている。身支度を整えて、階下へと降りる。食事の仕込みをして、裏庭に行き素振りを始める。しばらくするとレオンが声をかけてきて朝食をとることになる。


「お前、今年で年はいくつになる?」


突然、レオンが問いかけてきた。そういえば年の話はここにきてから一度もしたことがなかったか。ここに来た時が12で3年はここにいるから、


「今年で15だな。突然どうした?」


 俺の答えを聞いて、レオンは少し考え込むような素振りを見せたあと、


「お前、軍人になるつもりはないか?」

「軍人?どういうことだ。それと俺の年がどう関係する」

「軍人の養成学校の入学年齢が15なんだよ。あと、この話をしたのはお前にこれ以上俺から教えられることがないってことと、誰か推薦してくれって頼まれたからだ」

「これ以上教えることがないって、俺は一度もレオンに勝ってないぞ。それに軍人になるためにここに来たわけじゃない」

「お前が強さを求める理由がそこで見つかるかもしれんぞ?俺にはそういった心の問題は解決してやれん。できるのは戦いの中で考えることをやめない力だけだ。その点で言えば、もはや俺がお前に教えることなんてないんだよ。俺に勝てないのなんて当たり前の話だしな」

「もし、その学校に行っても理由が見つけられないと思った時には、すぐに出て行ってもいいのなら行こう。だが、俺がレオンに勝てないのが当たり前というのはどういうことだ?」


 レオンはそれを聞いて、ひとしきり笑ったあと真剣な顔で語りだした。


「俺の強さっていうのは、戦いの経験の中で積み上げてきたもんだ。たかだか十何年生きてきただけのやつに追いつかれることなんぞないし、やっと体の使い方を覚えてきたような奴に負ける道理もない。別にお前は天性の才能を持っているわけでもないだろう?俺に勝ちたければ、俺が年食って動きが鈍るのを待つんだな」


そう言ってから、思い出したようにこう付け加えた。


「あぁ、学園の入学者選抜試験は明後日だ。飯食ったら支度して出発しろ。場所はこの紙に書いておいた。俺の名前を出せば相手には伝わるはずだ。試験が免除されるかどうかは知らん。がんばれよ」


そう言い残して、自分の部屋へと帰っていった。言いたいことは山ほどあるが行くといった手前、遅れるわけには行かない。文句は帰ってきたときに言えばいいだろう。支度して出発するか。この学園行きが俺の人生の転換点になるとはこの時の俺はまだ気づいてなかった。


 準備が整い出発したのはいいものの、レオンが書いた地図は大雑把すぎて大体の方角がわかるだろう程度のものだったうえに、どう見ても町を2つは越える距離であったため普通に歩いて向かったのでは間に合いそうもなかった。そのため道のりのほとんどを走り抜け途中の町で少し休憩をとる程度だった。学園があるという町の1つ手前の町で詳細な位置を聞き、最後の休息をときには出発から1日半が経過していた。


 試験開始2時間前にレイは学園がある町――ウェルター――に到着した。試験の有無がわからない以上、試験が始まるよりも前に学園に向かうべきだろう。だが、学園の場所を知らないということに思い至り、最も近くにいた目深にフードを被った男に声をかけた。


「すまない、軍人の養成学校というのはどこにあるか教えてもらえないか?」

「あぁ、受験するのかな。いいよ。ウェルター軍事学園は町の中央に建っているあの大きくて広いところさ。ここからも見えるあの時計塔を目指して進むといいよ。この町の大通りに沿って行けば迷うことなくたどり着けるはずさ。」


 確かに男の言う通り、ここから大きな時計塔が目に入る。おそらく大通りというのも今いる、この通路のことだろう。とりあえずここを真っすぐ進んでみるか。そこまで考えたところで、まだ男に礼を言っていないことに気づき振り向くとすでに男はそこにはおらず、見渡しても見つけることはできなかった。


「礼ぐらい言わせろよ」


そう独り言ちて、これ以上気にしても仕方ないとばかりに歩みを進めた。10分ほど歩くと、目の前に学園の門らしきものを見つけた。とりあえず、門の近くにいた人物に声をかけてみることにした。


「すまない、ウェルター軍事学園というのはここでいいのか?」

「確かに学園はここで会っているが要件はなんだ?まだ試験には早い時間だぞ」

「レオンという男の紹介で来たんだが。本人は言えばわかるとだけ言っていたんだが何か聞いていないか?」

「推薦枠か?少し待っていろ。確認をとる」


 そう言って、男はその場を離れた。それからしばらくして、先ほどの男とともに見るからに軍人然とした男が現れた。


「貴様がレオンの紹介で来たという男か?」

「あぁ、そうだ」


 開口一番に確認とはなんとも堅苦しそうな男だな。だが、話が早そうで助かる。


「レオンから何か預かってはいないか?」

「何も預かってないな。レオンが書いた地図ならあるが」

「それでいい。少し借りるぞ」


 俺が渡した地図を見て男は顔をしかめたが、納得したようにうなずいて地図を返してきた。


「これは確かにレオンが書いたものだな。しかし、よくこれでここにたどり着けたな」

「確かにひどい地図だが方角は分かったからな時間はかかったがなんとかたどり着けたぞ」

「レオンの推薦なら試験は免除してもいいんだが、能力がわからないことには扱いに困るのでな試験は受けてもらうことになるがいいか?あまりにもひどい結果を出さなければ失格にすることはないが全力を尽くすことをおすすめする」

「試験を受けることには異論はないが、含みのある言い方だな」

「試験が始まればわかるさ。それと、私は入学後には君の上官になる。自己紹介は入学後に改めてするが、その後はそれにふさわしい言葉遣いに直すようにしたまえ」

「その時になれば言葉遣いは直すさ、試験で何があるか楽しみにさせてもらおう」


 入学者を選抜する試験で何をやろうというのか、元々期待なんかしてはいなかったがなかなか楽しめそうじゃないか。試験が始まるまでまだ時間があるな。全力を尽くすよう言われたことだし、武器の手入れでもしておくか。整備が終わったら装備もしておくか、移動中は邪魔になるから外していたが、完全装備で試験に向かったほうがいいだろう。そう考え、直剣と短剣3本、針を5本、鎖を1つ装備した。軍人というよりは暗殺者という装備だが、戦闘スタイルがそうであるのだから仕方がない。もっともこれはあくまでどのような状況にも対応できるようにバランスよく装備した結果であり、状況に応じて装備は変わってくる。これが3年間レオンのもとで鍛えられ、思考によって戦う能力を身に着けた1つの成果だった。


「準備もできたし、そろそろ行くか。何が起こるのか楽しみだな」


 これから起こることに期待を膨らませ、レイは学園生活への一歩を踏み出した。


感想やダメ出し等鋭意募集中でございます。

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