芽生え
すがすがしい朝、小鳥たちがちゅんちゅんと鳴き配達のバイクの音がかすかに聞こえる。リビングからは香ばしいトーストの香りとジャムの甘い香りが漂ってくる。昨日、夜ご飯を抜いたからかいつもはまだ寝ていたいという欲が勝つのに今日は朝ごはんに完敗した。布団から出ると少し肌寒くまだまだ春には程遠くカーテンを開けると日差しが僕の目を覚まさせてくれているかのように部屋の中に差し込んできた。窓を開け新鮮な空気をいっぱいに吸い大きく深呼吸をすると冷たい空気が僕の肺をこれでもかというほどに冷やし全身に鳥肌が立ち身震いをした。部屋を出てリビングに行くと先に父さんが朝食を食べていた。あまり父さんとしゃべらない僕は他人行儀に軽く頭を下げて挨拶をし自分のイスに座り大きなあくびをしトーストにかじりつく。しばらくすると父さんは席を立ち仕事へと向かいやっと気を抜いて食事ができると僕は肩の力を抜いた。すると母さんも家事が終わったらしくコーヒーを片手に僕の隣に座り2,3回息で冷ました後それでも熱そうにすすった。
「母さん、ちょっと気になったんだけどさ。父さんの設定寿命って残りいくつなの?」
何気なく聞いた。
「あと167日だよ」
母さんはそういった。それはどこか悲しげで、でも覚悟を決めた心の準備ができているそんな目をしていた。