園崎宇宙5
学校は私にとって真っ黒だ。
私のことを嗤うやつらの集まりだ。
友達は少ないけどいる。
でも私を守ってくれるわけではない。
私が何を言われていても知らんぷりだ。
むしろ私のいない所では平気で私の悪口を言っている。
私は学校が大嫌いだ。
登校するなり、私のことをにらむ目。
私の陰口を言う人。
影で嗤う意気地なし。
私の味方はここには一人もいない。
教師も保健室の先生もカウンセラーも嘘つきばかりだ。
そんな中私の唯一の居場所が図書室だ。
誰も来ない場所。
寂しい場所。
そして優しい司書さん。
この人だけは信頼できる。
最初は会話をしなかった。
でもあるとき好きな作家が一緒だという事を知って、意気投合し、それからは私の話し相手をしてくれる。
「やあ、宇宙ちゃん。今日は何借りる?」
「うーん…なんか楽しい話。ラノベじゃない奴」
「じゃあこれとかどうかな?」
こうやって、よく私の知らない作家の本を紹介してくれて、だいたいはずれがない。
たまに微妙なのもあるけど。
「じゃあそれ借りる」
「了解。あ、この前夕霧さんの新刊出てたね」
「あ、それ買いました。今読んでます」
「そうなんだ!どういう話?」
「世界が滅んで、唯一生き残った青年と彼が作ったアンドロイドたちの話です。面白いですよ」
「へえー最近読む時間があんまりなくてさ。買ったんだけど未読なんだよね」
夕霧夏奈斗さんは私と司書さんの共通して好きな作家の一人だ。
いつも世界が滅んだり、誰かが死んだりする小説を書く。
「また暇があれば読めばいいよ」
「その暇を作るのが大変なんだってー」
「あはは」
「あ、そろそろ昼休み終わるよ」
「分かった。行ってくる」
「行ってらっしゃい」
手を振ってくれる彼女に手を振りかえして私は図書室を後にした。